美少女にフラれたらなぜかダウジング伊達メガネ女子が彼女になりました!?〜冴えない俺と彼女と俺をフった美少女の謎の三角な関係〜

かねさわ巧

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第42話 お兄ちゃん!

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「お帰りなさい、お母さん!」

 果奈かなは母親のもとへ駆け寄ると、嬉しそうな表情で腕にしがみついた。

 それにしても、なんの連絡もよこさないで帰ってくるなんて、びっくりするから勘弁してほしい。

 しかも真宮まみやさんがいる、このタイミング……照れくさいというか、気まずい。

「果奈、ちゃんと良い子にしてる?」

「うん! ちゃんとお兄ちゃんの面倒もみてるよ!」

 なっ⁉︎

「果奈っ! 今、お兄ちゃんって言ったのかっ!」

「え? お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ? どうしたの?」

「でもほら! 沖縄弁はどうしたんだよ!」

「お母さんに方言を使うわけないじゃない。困らせちゃうでしょ」

 俺も困らせないでくれよ……。

 せめて、お兄ちゃん呼びは変えないでほしいが、そんな恥ずかしいことを妹には言えない。

 うーん。貴重なお兄ちゃん呼びだった……次はいつになるのだろう。

 ――春時。

「春時?」

「ん? あぁ、なに母さん」

 母さんは俺の隣にいる真宮さんへと視線を一瞬だけ向けた。

「相変わらず、ぼーっとする癖、治らないわねぇ。隣にいる子が果奈の話していた女の子よね?」

「え? あぁ、うん」

「はじめまして、春時くんのお母さん。あたし、真宮葵まみやあおいっていいます。あの……お泊まりを許可していただいてありがとうございました」

 真宮さんは俺の返事に続いて、挨拶をはじめた。気のせいかいつもより言葉遣いが丁寧でお辞儀までしている。

「あら、丁寧ないい子。可愛らしいし、春時もすみにおけないわねぇ。そういえば、果奈から二人って聞いていたけど、もう一人の子はどこにいるの?」

「あ、母さん、もう一人は仲里なかさとさんっていうんだけど、明日くることになっているんだよ」

「仲里……」

「お母さん、どうかしたの?」

 母親が声を漏らすと果奈が問いかける。

 一瞬だったけれど、母さんの反応は俺も気になった。どうしたんだろう? もしかして仲里さんのことを知っているとか? って、さすがにそれはないか……。

「……なんでもないわ。でも、残念ね。仕事に使う資料を取りに戻っただけで、帰らないといけないのよ」

「そうなんだ。それなら言ってくれたら送るか、もっていくかしたのに」

「ありがとう。でも、あの部屋から見つけ出すのは、お母さんじゃないと無理だと思うのよね」

 たしかに、母さんの部屋はものがあふれていて、足の踏み場もないくらいだ。

 折角、部屋がたくさんあるんだから、無理に押し込めなくてもいいと思うのだけど、本人に言わせると手が届く範囲にものがあるほうが便利らしい。

 自宅へはほとんど戻らない癖に、なにを言っているのかと思ってはいたけれど、今日のように探し物をするとなったら部屋を移動するのは、確かに面倒なんだろうとは思う。

「ねぇねぇ、お母さん。これから、みんなでピザを食べるところなの! 一緒に食べようよ!」

「良い匂いの正体はそれだったのね。お腹も空いてきたし一緒にいただこうかしら」

「やったー!」

 果奈は母さんとの食事に大喜びだ。

 まあ、母親と一緒に食事をとること自体が珍しいから、妹がはしゃぐのも無理はない。

「春時。果奈ちゃん、凄く嬉しそうだね」

 耳元で真宮さんがささやくように話しかけてきたので、俺は果奈と母さんの姿を見つめたまま頷いた。

「なんだか、ちょっと羨ましいかも」

 そうか……たしか真宮さんは両親がいないって話していたよな。

 果奈たちの姿を見てなにか思い出しているのかも……あ……。

「そういえばさ、母さんがリビングに入ってきたとき、なにか話そうとしてなかった?」

「え? うん……でも、今はやめとく」

「そうなの?」

「うん」

「お兄ちゃん! 真宮さんも! 早く食べようよ!」

 ピザカッターを握りしめた果奈がカットを始めて、ピザに一本の線が入る。

「あー! 果奈ちゃん! カットはあたしにやらせてー!」

 真宮さんが、なにを話そうとしていたのかは気になるけれど、今は、みんなと食事を楽しもう……。
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