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第19話 右回り? 左回り?
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俺に向けられた真宮さんのペンデュラムは、先端についた水晶が左右に揺れるたび、店内の照明が反射してキラキラと輝いている。
「いい? 春時。あたしとエリカに納得のいく説明ができるのならイベントにいかないことを認めるわ。でも……ダメだったらペンデュラムの結果に従ってもらうから」
「そんな勝手にっ!」
「説明が無理なら、早速ダウジングはじめるけど?」
説明って――あの出来事を話すことすら抵抗があるっていうのに……。
それに話したところで真宮さんたちが納得しなければ、結局はダウジングで決められてしまうということだよな?
だったら最初からダウジングで運を天に任せた方がマシな気はする。
「わかった。ダウジングで決めてくれ」
「それじゃあ始めるから、少しまってね」
言うと真宮さんは残り少ないパフェを急いで口に運び、それをテーブルの端においやった。
唇の端にクリームがついてしまっているが、今はそっとしておこう。
彼女は親指と人差し指でチェーンをつまむようにしてもつと、水晶をじっと見つめる。
「もう始まってる?」
俺はペンデュラムに集中している真宮さんを横目に、彼女の隣に座る仲里さんへ声をかけた。
「まだです。ダウジングを始めるには最初に簡単な問いをだして、答えになるハイとイイエを水晶の回る方向で決めないとダメなんです」
仲里さんは、集中している真宮さんに気をつかっているのか、小声で返してきた。
俺も同じように声音を抑えて話を続けることにした。こういった気配りができる仲里さんは素敵だなと思う。
「へぇ……仲里さん詳しいんだね?」
「いえ。その……以前、真宮さんに教えていただいたことがあって」
あぁ……そうか。恐らく最初の出会いのとき……入れ替わりが起きた直前にでも説明をされたのだろうか。
「準備できたよ。それじゃあ始めるね」
仲里さんと話していると真宮さんから声がかかったので彼女のもつペンデュラムに視線を向けた。
水晶は制止したまま動いていない。
「いくわね……春時はイベントに行った方がいい?」
真宮さんがペンデュラムに向かって問う――と、水晶はゆっくりと左右へと揺れ出した。
彼女の問いの内容だと、イイエが出れば俺は行かなくても済むということだよな。
「真宮さん。どっち回りがイイエになるんだ?」
「左回りなら、ハイ。逆なら、イイエ。集中が途切れるから話しかけないで!」
「お、おう……」
次第にペンデュラムの水晶は小さく右回りに小さく数回だけ動いた。
「これって右だよな?」
「早見くん、まだです。このくらいの動きだと判断できないんです」
「そ、そうなんだ……」
少し安堵した気持ちが仲里さんの言葉で、一瞬に消えた。まぁ、彼女がいうのならそうなのだろう。
「早見くん、見て。回転が……」
「あ!」
仲里さんと話していると、真宮さんのもつペンデュラムが再び左右に揺れ出し、今度は左回りにゆっくりと動き出した。
その回転は徐々に勢いがついていき、大きく円を描き始める。
まるで意図的に回しているのではないかと思ってしまうほどだ……けれど、もちろん真宮さんは手を動かしてはいない。
「いつも思うのですけど、ペンデュラムって不思議ですよね」
仲里さんがぽつりと呟くので俺は、うん、と返事をした。
ペンデュラムはしっかりと左に回っている。
こんなにも激しく回転していたら、今から右に回ることは奇跡でも起きない限りありえないだろう……。
「決まりだね、春時」
真宮さんは回転するペンデュラムをあいた方の手で止めると、制服の胸ポケットへしまった。
それにしても――なぜ彼女は俺をあの場所へ連れて行こうとするんだろう……。
「いい? 春時。あたしとエリカに納得のいく説明ができるのならイベントにいかないことを認めるわ。でも……ダメだったらペンデュラムの結果に従ってもらうから」
「そんな勝手にっ!」
「説明が無理なら、早速ダウジングはじめるけど?」
説明って――あの出来事を話すことすら抵抗があるっていうのに……。
それに話したところで真宮さんたちが納得しなければ、結局はダウジングで決められてしまうということだよな?
だったら最初からダウジングで運を天に任せた方がマシな気はする。
「わかった。ダウジングで決めてくれ」
「それじゃあ始めるから、少しまってね」
言うと真宮さんは残り少ないパフェを急いで口に運び、それをテーブルの端においやった。
唇の端にクリームがついてしまっているが、今はそっとしておこう。
彼女は親指と人差し指でチェーンをつまむようにしてもつと、水晶をじっと見つめる。
「もう始まってる?」
俺はペンデュラムに集中している真宮さんを横目に、彼女の隣に座る仲里さんへ声をかけた。
「まだです。ダウジングを始めるには最初に簡単な問いをだして、答えになるハイとイイエを水晶の回る方向で決めないとダメなんです」
仲里さんは、集中している真宮さんに気をつかっているのか、小声で返してきた。
俺も同じように声音を抑えて話を続けることにした。こういった気配りができる仲里さんは素敵だなと思う。
「へぇ……仲里さん詳しいんだね?」
「いえ。その……以前、真宮さんに教えていただいたことがあって」
あぁ……そうか。恐らく最初の出会いのとき……入れ替わりが起きた直前にでも説明をされたのだろうか。
「準備できたよ。それじゃあ始めるね」
仲里さんと話していると真宮さんから声がかかったので彼女のもつペンデュラムに視線を向けた。
水晶は制止したまま動いていない。
「いくわね……春時はイベントに行った方がいい?」
真宮さんがペンデュラムに向かって問う――と、水晶はゆっくりと左右へと揺れ出した。
彼女の問いの内容だと、イイエが出れば俺は行かなくても済むということだよな。
「真宮さん。どっち回りがイイエになるんだ?」
「左回りなら、ハイ。逆なら、イイエ。集中が途切れるから話しかけないで!」
「お、おう……」
次第にペンデュラムの水晶は小さく右回りに小さく数回だけ動いた。
「これって右だよな?」
「早見くん、まだです。このくらいの動きだと判断できないんです」
「そ、そうなんだ……」
少し安堵した気持ちが仲里さんの言葉で、一瞬に消えた。まぁ、彼女がいうのならそうなのだろう。
「早見くん、見て。回転が……」
「あ!」
仲里さんと話していると、真宮さんのもつペンデュラムが再び左右に揺れ出し、今度は左回りにゆっくりと動き出した。
その回転は徐々に勢いがついていき、大きく円を描き始める。
まるで意図的に回しているのではないかと思ってしまうほどだ……けれど、もちろん真宮さんは手を動かしてはいない。
「いつも思うのですけど、ペンデュラムって不思議ですよね」
仲里さんがぽつりと呟くので俺は、うん、と返事をした。
ペンデュラムはしっかりと左に回っている。
こんなにも激しく回転していたら、今から右に回ることは奇跡でも起きない限りありえないだろう……。
「決まりだね、春時」
真宮さんは回転するペンデュラムをあいた方の手で止めると、制服の胸ポケットへしまった。
それにしても――なぜ彼女は俺をあの場所へ連れて行こうとするんだろう……。
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