13 / 72
第13話 君はどっちを選ぶの?
しおりを挟む
俺は彼女たちの話を聞き終え、大方、入れ替わってしまった経緯を知る。
ダウジングをしたら入れ替わっていましたなんて常識外な話だけれど――。
そんな嘘のような過去の出来事を、わざわざ家に押しかけてきてまで語ってくれた二人を俺は信じる。
そして真宮さんの話に出て来た男の子はおそらく、いや、間違いなくこの俺だ……。
だけど今の俺にとって入れ替わったきっかけ自体はどうでもいい。
もっと大きな問題がある。
それは――。
入れ替わりの事実を受け入れた今だからこそある目の前の現実。俺が想い続けてきた仲里エリカは、真宮葵だったということだ。
でも、そうなると俺は屋上で彼女にフラれてはいないことになる。
それどころか好きな人から彼女になってあげるとさえ言われた……つまり俺たちは……。
――春時。
「春時!」
「えっ? あ、あぁっと、な、なに?」
真宮さんの声に反応した俺は彼女と目が合った瞬間、意識してしまい緊張が隠せなかった。
この子が本当の仲里さんだと思ったら、今までと同じ目で見られなくなってしまった自分がいる。
「ねぇ、話は理解できた?」
真宮さんの言葉に、お、おう、と答えると彼女は話を続けた。
「それならもう気がついてるよね?」
多分、彼女はあのことを言っているんだろう……すぐに分かったさ、そして同時に俺との出会いをちゃんと覚えていてくれたことが嬉しい。
あれから暫くして、彼女と会えなくなってしまったから、てっきり忘れられてしまったのかと思っていたんだ。
教室でも基本、話しかけられることは無かったしな。
「……すぐに分かったよ。その話の男の子って、俺のことだよな」
「うん、そうだよ。だから春時、あなたの告白した相手はあたし、そして、あたしはあなたの告白を受け入れているわ」
「じゃ、じゃあ俺たちは……」
「ちょっとまってくださいっ! 早見くんと過去に出会っていたのは真宮さんだけじゃないです!」
俺が言いかけると仲里さんは話を遮り、気になることを口にした。
「仲里さん、それって……どういうこと?」
「それは……早見くんはあのとき、一週間後に彼女と会う約束をしていましたよね?」
「うん」
「そのとき会った彼女の中身……私だったんです」
「!?」
そ、そうか! 俺と別れたあとに二人は入れ替わっている――ということは、そのときから中身は真宮さんだったことになるんだ。
仲里エリカ。
仲里エリカの中にいた真宮葵。
俺が好きになった女の子は、どっちなんだ……。
「早見くん。あのね、聞いて欲しいです……屋上で告白してくれたとき、私が謝ったのは決して嫌いとかじゃなくて、本当の私は仲里エリカじゃないから……真宮葵だから……だからっ! 受け入れるわけにはいかなかったの! 私は真宮葵として、あなたに告白して欲しかったから!」
「仲……真宮さん……」
俺はそのとき、目の前の仲里さんの姿をした彼女を真宮さんと呼んだ。この瞬間だけは、そう言わないと失礼な気がしたからだ。
だってこれってもはや、告白……。
「春時……」
「早見くん……」
俺の名前を呼ぶ二人の視線に目を逸らしてしまいそうだ。
「ねぇ、春時……君はどっちを選ぶの?」
どっちって……真宮さんは突然なにを言い出すんだ。
中学――俺が困っていたとき助けてくれた仲里さん……その後、約束して再び会った中身が真宮葵の仲里さん……二人とも俺の好きな仲里エリカだった。
急に言われても、選ぶことなんて出来ない……。
「悪い……今の俺には答えられないよ」
「そう……わかった。春時、それなら良いアドバイスがあるよ!」
真宮さんの手にはペンデュラムが握られている。まさか……。
「これで決めればいいわ!」
やっぱり……。
「ちょっとまって! そんなの私は許さない」
仲里さんは言うと唇を震わせていた。まぁ、俺もこの話をダウジングで片付けるのは違うと思う。
「俺も仲里さんの意見に賛成だな。このことに関しては、ペンデュラム? で決めるようなことじゃない」
「春時もエリカも、そんなに怖い目で見ないでよ。冗談だってば」
「屋上の件があるから冗談に聞こえないんだよ」
「失礼しちゃうな。あれは本気だよ? まぁ、いいわ。あたしに良い提案があるから二人とも聞いて」
「おう……」
俺の返事に続いて仲里さんもコクンと頷く。
「いい? 春時……この夏休みの間、あたしたち二人を彼女にしてみない?」
「は?」
――ふ、二人を彼女にだってぇえええ⁉︎
ダウジングをしたら入れ替わっていましたなんて常識外な話だけれど――。
そんな嘘のような過去の出来事を、わざわざ家に押しかけてきてまで語ってくれた二人を俺は信じる。
そして真宮さんの話に出て来た男の子はおそらく、いや、間違いなくこの俺だ……。
だけど今の俺にとって入れ替わったきっかけ自体はどうでもいい。
もっと大きな問題がある。
それは――。
入れ替わりの事実を受け入れた今だからこそある目の前の現実。俺が想い続けてきた仲里エリカは、真宮葵だったということだ。
でも、そうなると俺は屋上で彼女にフラれてはいないことになる。
それどころか好きな人から彼女になってあげるとさえ言われた……つまり俺たちは……。
――春時。
「春時!」
「えっ? あ、あぁっと、な、なに?」
真宮さんの声に反応した俺は彼女と目が合った瞬間、意識してしまい緊張が隠せなかった。
この子が本当の仲里さんだと思ったら、今までと同じ目で見られなくなってしまった自分がいる。
「ねぇ、話は理解できた?」
真宮さんの言葉に、お、おう、と答えると彼女は話を続けた。
「それならもう気がついてるよね?」
多分、彼女はあのことを言っているんだろう……すぐに分かったさ、そして同時に俺との出会いをちゃんと覚えていてくれたことが嬉しい。
あれから暫くして、彼女と会えなくなってしまったから、てっきり忘れられてしまったのかと思っていたんだ。
教室でも基本、話しかけられることは無かったしな。
「……すぐに分かったよ。その話の男の子って、俺のことだよな」
「うん、そうだよ。だから春時、あなたの告白した相手はあたし、そして、あたしはあなたの告白を受け入れているわ」
「じゃ、じゃあ俺たちは……」
「ちょっとまってくださいっ! 早見くんと過去に出会っていたのは真宮さんだけじゃないです!」
俺が言いかけると仲里さんは話を遮り、気になることを口にした。
「仲里さん、それって……どういうこと?」
「それは……早見くんはあのとき、一週間後に彼女と会う約束をしていましたよね?」
「うん」
「そのとき会った彼女の中身……私だったんです」
「!?」
そ、そうか! 俺と別れたあとに二人は入れ替わっている――ということは、そのときから中身は真宮さんだったことになるんだ。
仲里エリカ。
仲里エリカの中にいた真宮葵。
俺が好きになった女の子は、どっちなんだ……。
「早見くん。あのね、聞いて欲しいです……屋上で告白してくれたとき、私が謝ったのは決して嫌いとかじゃなくて、本当の私は仲里エリカじゃないから……真宮葵だから……だからっ! 受け入れるわけにはいかなかったの! 私は真宮葵として、あなたに告白して欲しかったから!」
「仲……真宮さん……」
俺はそのとき、目の前の仲里さんの姿をした彼女を真宮さんと呼んだ。この瞬間だけは、そう言わないと失礼な気がしたからだ。
だってこれってもはや、告白……。
「春時……」
「早見くん……」
俺の名前を呼ぶ二人の視線に目を逸らしてしまいそうだ。
「ねぇ、春時……君はどっちを選ぶの?」
どっちって……真宮さんは突然なにを言い出すんだ。
中学――俺が困っていたとき助けてくれた仲里さん……その後、約束して再び会った中身が真宮葵の仲里さん……二人とも俺の好きな仲里エリカだった。
急に言われても、選ぶことなんて出来ない……。
「悪い……今の俺には答えられないよ」
「そう……わかった。春時、それなら良いアドバイスがあるよ!」
真宮さんの手にはペンデュラムが握られている。まさか……。
「これで決めればいいわ!」
やっぱり……。
「ちょっとまって! そんなの私は許さない」
仲里さんは言うと唇を震わせていた。まぁ、俺もこの話をダウジングで片付けるのは違うと思う。
「俺も仲里さんの意見に賛成だな。このことに関しては、ペンデュラム? で決めるようなことじゃない」
「春時もエリカも、そんなに怖い目で見ないでよ。冗談だってば」
「屋上の件があるから冗談に聞こえないんだよ」
「失礼しちゃうな。あれは本気だよ? まぁ、いいわ。あたしに良い提案があるから二人とも聞いて」
「おう……」
俺の返事に続いて仲里さんもコクンと頷く。
「いい? 春時……この夏休みの間、あたしたち二人を彼女にしてみない?」
「は?」
――ふ、二人を彼女にだってぇえええ⁉︎
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。

コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜
青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。
彼には美少女の幼馴染がいる。
それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。
学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。
これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。
毎日更新します。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

幼馴染に毎日召喚されてます
涼月
青春
高校二年生の森川真礼(もりかわまひろ)は、幼馴染の南雲日奈子(なぐもひなこ)にじゃんけんで勝った事が無い。
それをいい事に、日奈子は理不尽(真礼的には)な提案をしてきた。
じゃんけんで負けたら、召喚獣のように従順に、勝った方の願いを聞くこと。
真礼の受難!? の日々が始まった。
全12話

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる