美少女にフラれたらなぜかダウジング伊達メガネ女子が彼女になりました!?〜冴えない俺と彼女と俺をフった美少女の謎の三角な関係〜

かねさわ巧

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第5話 二〇三号室

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 ――ムニュ。
 
 ――ムニュ。

 仲里なかさとさんをおぶる背中に、彼女の胸の膨らみがつたわって気持ちい……もとい気まずい。

 あのとき車のブレーキが間に合っていなかったら、横断歩道を走り抜けようとした仲里さんは、今ごろ無事では済まなかっただろう……足を捻る程度で済んだのは運が良かった。

 本当は病院で診て貰いたかったけれどスマホで調べてみた感じ、歩いていける距離の病院は休診日だったし、とにかく今は彼女を家まで送り届けなくちゃ。

 ふぅ……ちょっと暑いな。

 どれくらい歩いただろう……あの横断歩道から体感的には二十分ってところか? 

 ――ムニュ。

 そ、それにしても……さっきからずっと胸の感触に意識がいってしまい緊張が半端ない。

 そういえば真宮まみやさんのバッグハグもこんな……。

 いやいや、俺はなにを考えて……仲里さんにたいして失礼だろ。

 だいたい無言のままっていうのが問題なんだよな。

 そんなだから背中にばかり意識がいってしまうんだ。な、なにか話題を……。

「えーと、仲里さん。足、痛む?」

「え……は、はい」

「良かった……」

「……」

 あぁああっ! 俺はなにを言っちゃってるんだ! ちっとも良くねーし! 緊張しすぎて間違えてしまった。

 やばい……なんだか更に気まずい空気になっている。

 彼女ずっと黙ったままだし、もしかして背負われるのが嫌だったのかな。

 公衆の面前でおぶられるなんて恥ずかしいもんなぁ……実際、俺も恥ずかしくないかと言ったら嘘になる。

 とはいえタクシーを呼ぶにも俺の財布の中身はパンとジュースを買えるくらいしか入っていないし、砂川すなかわに連絡して自転車でも持ってこさせ……いや、このあいだ盗まれたとか話していた気がするな。

 ハァ……結構、汗もかいてきたし、誰だよ、今年は冷夏とか言ってたの。

 フラれたうえにこの醜態……最悪だ。

 ――早見くん。

「早見くん?」

 うぉ! 仲里さんが話しかけてきた!

「あ、うん。な、なに? 仲里さん」

「あの……迷惑かけてしまってごめんなさい。その……重くはないですか?」

「だ、大丈夫。迷惑だなんて思ってないし、重いとかないよ。ハハハ」

「……」

 あれ? また沈黙……なんか変なこと言っちゃったのかな……と、とりあえず会話は止めない方がいいよな。

「「あのっ!」」

 やば! タイミングが被って!

「ごめん!」

「いえっ、ごめんなさい。早見くんからどうぞ」

「え? あ、あぁ、うん。ありがとう」

 彼女がなにを言おうとしていたのかは気になるけれど、ここは素直に譲られて俺から……。

 あのとき家を訪ねて来た理由……それを彼女の口から聞きたくて、追いかけてきたんだし。

「あのさ……」

「はい……」

「どうして突然、家を訪ねてきたのかなって。その……俺、フラれたわけだし……」

「そ、それは……その、ごめんなさい。今は上手く言えなくて……」

 うっ……まさかのノーコメント。

 ま、まあ、仕方がない……追求はキモイし、無理に話させるってのも良くないよな。

 入れ替わった発言も気になってはいるけど、また後日に――って、後日なんて来るのか?

「そ、そうだよね、気にしないで。えーっと、この先Y字路になってるけど、どっちに行けばいい?」

「あ、はい。右でお願いします。少し先に青い屋根の建物が見えるので、そこの二階です」

「わかった」

 言われた通りに進むと、そこには三角屋根に可愛い出窓のついたアパートがあった。

 仲里さんってアパート暮らしだったのか……しかも同じ地区に住んでいたなんて。

 てっきり電車で通学しているものだとばかり思っていた。

「えーと、仲里さんの部屋って……」

「二〇三号室です。ここの階段は少し急ですから気をつけてください」

「う、うん」

 ――ぎゅっ。

 うん? 気のせいか一瞬、つよくしがみつかれたような……。

「大丈夫? 落ちそうになった?」

「い、いえ、大丈夫です」

「そっか、二〇三だったよね」

「は、はい」

 ドアの周辺にはとくに名前の書かれた表札はなかったけれど、この奥が仲里さんの部屋らしい……ってまてよ? 自宅ということは家族がいるのでは?

「えーと、家の人いるのかな? チャイム鳴らす?」

「いえ、多分まだ帰っていないと思うので……それで、その……降ろしてもらってもいいですか」

「あっ! ごめん」

 おりやすい高さに腰を落とす――と、背中にのっていた彼女の重みと体温が離れた……なんだか名残惜しい。

「じゃ、じゃあ俺はここで……」

「は、はい。あの、ありがとうございました」

 彼女は軽く頭を下げると、そのまま室内へと入っていってしまった……。

 ふぅ、ひとまずこれで安心だ。

 ――ぐぅ~。

「むむ……」

 彼女を無事に送ることが出来てほっとしたせいなのか、急に腹が空いてきた。

 そういえば昼飯まだだったよな。腹がなっても仕方がないか……コンビニでも寄って帰ろう。

「あ……」

 アパートの階段をおりようとしたそのとき、思わず声が漏れてしまった。

 ――なぜなら階段の下には真宮葵まみやあおいがいたからだ。
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