上 下
30 / 53

さんじゅう。

しおりを挟む
セシル王子から魔石を貰ってから3週間が過ぎた。

今、第1騎士団のみんなは西の方に遠征に行っている。

セシル王子が来た翌日にゼノさんが来て、そう言っていた。

一回遠征に行けば2週間から3週間は当たり前らしい。

そんな私は、メリル様の指導のもと、みんなにプレゼントするアクセサリーを作成中である。

アクセサリーと言っても、ブレスレットとか、髪飾りとか色々あるが、一番邪魔にならなそうなネックレスにした。

ここなら取れる心配もなさそうだし…。という私に、そうだね。と同意してくれたのは、我らが天使、メリル様であられる。

その天使メリル様は、私がここ3週間で頑張って魔力をこめた魔法石を物色中である。

ちなみに、最初に調子に乗り過ぎて、魔力不足を身をもって体験したのは懐かしい記憶である。

あれは、気持ち悪かった。車酔いをずっとしているみたいだった。

青のポーションをメリル様がくれなかったら今私がこの世にいたか…。

3日はグラグラしていた。

そのくらい気持ち悪かったのである。

なんでも、まだこの世界に来て浅い為、魔力が安定していないらしい。

後ひと月は安定しない日が続くかもとのことだ。

それからは、魔法石は一日2個までということになった。

あの魔石は小さい見た目の割に相当な魔力を持っていくようだ。おそロシア。…あ、間違った。恐ろしや。



そんなことを考えながら、ネックレスを作ること十数分。

「できたー!」

メリル様!見てください!

そう言って、初めて出来たばかりのネックレスをメリル様に見せると、うん。デザインはアレだけど、良いんじゃない。と言った。

褒められてウキウキな私は、出来たばかりのネックレスを眺める。

土台に魔法石をはめ込み、チェーンを通しただけの簡素なものだが、初めてにしては上出来だろう。

魔石は1cm前後のを選んで作ったから、首にかけてもそんなに邪魔にならないだろう。

「メリル様。」

「何?」

「魔法石ってどのくらいの間使えるんですか?」

「…そうだね…。君のこれなら、魔法を使う頻度にもよるけど、半年から1年くらいじゃない?」

そうなのか…。それが、良いのか悪いのかは分からないが、初めての物にしては良いはずだ。多分。

そんな風にネックレスを見て考えていれば、あぁ、そうだ。。とメリル様が呟く。

「どうしました?」

「言うの忘れてたよ。…君が作る魔法石、僕が作るのより少しだけ魔力量高いよ。効果は変わんないけど。」

「…へ?」

どう言うことだ…?

それは、この王国一の魔術師様より私の魔法石の方が上、と言うことだろうか?

そう思って、ニヤついていたら、コツン、と頭を叩かれた。

「なんかムカつく。」

「うへっ。」

……あれ?しかし待てよ。

メリル様より上ってことは、神か?…いや、たまにメリル様は神にも進化するから……なんだ、私は無か。神の上など、何もないだろう。

あれ、じゃあ無ってなんだ?

そんな無限ループに陥りそうになっていると、メリル様に、作らないの?なら薬草する潰してよ。と薬草を置かれた。

それに元気よく返事をすると、メリル様が笑った気がした。






それから1週間が過ぎた頃。

「お、わったぁぁぁあ!」

「うるさいよ。」

ついに、出来上がったのである。

それを持って、メリル様の元に行けば、第1騎士団のところに行きたいの?と言われる。

それにブンブンと首を縦に振ると、ちょっと待ってて。と研究室を出て行った。



十数分して戻ってきたメリル様は、みんな昨日戻ってきているみたい。早く準備して。と言った。

どこで確認したかは不明だが、わかりました!と言って最後のネックレスを袋に入れ、メリル様の元に行く。

じゃあ行こうか。とフードを被せられれば、先を歩くメリル様の後を追った。

久し振りに馬車に乗り、第1騎士団の敷地に向かう。

馬車で20分ほどで着く。

その間、私は向かいに座るメリル様を眺める。

うわぁぁぁぁあ!今日も変わらず輝いてますね!と思っていると、バチっとメリル様と目が合う。

ヘラッと笑って見れば、呆れたような視線を向けられた。

「リウ。」

「なんでしょう?」

「そんなに僕の顔が好き?」

「はい!…あ、勿論、顔だけじゃないですよ?」

全部合わせて好きですよ!と言えば、モノ好きだね。と笑っていた。

それをまた綺麗だな、と眺めていると、馬車の揺れが止まった。

まだ慣れぬ馬車の揺れに、お尻が痛いと呻きながら降りれば、およそ1ヶ月ぶりの見慣れた建物が目に入る。

はやる気持ちを抑えきれず、メリル様早く!と急かせると、はいはい。と言って歩いてくる。

全然急いでないけど、歩く姿も美しいから問題ない。だってメリル様だもの。


そうして、私は久しぶりの土地へ足を踏み入れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

病弱聖女は生を勝ち取る

代永 並木
ファンタジー
聖女は特殊な聖女の魔法と呼ばれる魔法を使える者が呼ばれる称号 アナスタシア・ティロスは不治の病を患っていた その上、聖女でありながら魔力量は少なく魔法を一度使えば疲れてしまう そんなアナスタシアを邪魔に思った両親は森に捨てる事を決め睡眠薬を入れた食べ物を食べさせ寝ている間に馬車に乗せて運んだ 捨てられる前に起きたアナスタシアは必死に抵抗するが抵抗虚しく腹に剣を突き刺されてしまう 傷を負ったまま森の中に捨てられてたアナスタシアは必死に生きようと足掻く そんな中不幸は続き魔物に襲われてしまうが死の淵で絶望の底で歯車が噛み合い力が覚醒する それでもまだ不幸は続く、アナスタシアは己のやれる事を全力で成す

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

処理中です...