29 / 53
にじゅうきゅう。
しおりを挟む
最後に寮を出る時に、おばちゃんに、いつでも帰ってくるんだよ。と言われてまた涙した私は、迎えに来たメリル様と一緒に魔術協会に来た。
やはり、誰にも会うことなく研究室の前に着けば、こっち。と手を引かれる。
メリル様⁉︎手が!手が!と叫ぶ私に、うるさい。と一言言うメリル様。
そんな私は、クールなメリル様素敵!そこに痺れる!憧れるー!状態だった。
研究室から三つ離れた扉の前で立ち止まると、ここが君の部屋だよ。と扉を開ける。
騎士団の寮は木を使っていて、落ち着く雰囲気だったが、ここは白を基調としていて、汚してはいけない気がするほど綺麗な場所だった。
部屋の広さは、騎士団の寮と比べると狭いが、それでも結構な広さがある。
部屋の中に一つある扉を開ければ、そこはトイレやシャワー室、洗面台があった。
一通り部屋を見渡した私は、後でまた来る。と言って出て行ったメリル様を待っている間、持ってきた荷物を片付ける。
10分ほどで終わり、暇だなーと思って窓の外を見れば、あれ…?、と違和感を覚える。
「リウ、研究室に……どうしたの?」
「め、メリル様!あの木!木が!」
そう言って部屋に入ってきたメリル様を窓の方に連れてこれば、あぁ。と頷く。
「なんで消えたはずの木があんなに大きく生えているんですか⁉︎前より小さい気がしなくもないですけど!」
「なんでって…地属性の魔術師の人にしてもらったから。」
何言ってるの?と言うメリル様。
当然と言うような態度のメリル様に私は、この間無くなったはずの場所にある、新しい木を見る。
そうか、ここは異世界だった。と納得するしかなかった。
「じゃあ、まずはこの薬草を粉になるまですり潰して。」
魔術師の見習い服を着て過ごしている私は、メリル様に言われるがまま乾燥した薬草をすり鉢にいれ、すりこぎで潰していく。
ここに来て4日。
まだここでの生活は慣れないが、メリル様以外には誰にも会うことなく、こうしてポーション作りのお手伝いをしている。
ポーションは、魔術で浄化した水を使い、薬草やハーブなどを鍋に入れ作る。
ただ、火加減や薬草などの量は難しく、今はまだメリル様が作るのを見ているだけだ。
薬草をすり潰しながらメリル様の横に立つと、ちょうど、鍋の中のものが青色に変わっていく所だった。
「いつ見てもやっぱり不思議です。」
「そう?もう見慣れすぎてよくわかんないや。」
「だって、水とすり潰した枯れ草を入れて十数分かき混ぜるだけで一瞬にしてこんな鮮やかな色になるんですよ?」
「それがむずかしいんだよ。」
そう言って、出来上がったばかりのポーションを容器に入れていく。
鍋一杯に作ったはずのポーションは、出来上がる頃には半分もない。
煮詰め過ぎているわけでもないのに、不思議だなーと思う。
それを眺めていると、次はこの薬草ね。と3種類の薬草が置かれる。
はい。と返事をした私は、頑張ってすりこぎを動かした。
「頑張っているね。」
もう少しで擦り終わるという頃に、私とメリル様以外の声がした。
びくりと体を揺らし、声の主を確認すると、セシル王子だった。
「あ…こんにちは。」
「こんにちは。…ここでの生活は順調?」
まぁ、僕が聞くのもなんだけど。
そう言って、私の向かいの席に座る。
まぁ、それなりに…。と答えると、あれ、もっとメリルといれて喜んでいるかと思ってた。と笑われた。
そんな私は、薬草を擦りながら、そりゃあ嬉しいですよ!毎日神に感謝しておりますよ⁉︎それが何か⁉︎と王子にキレる。
そんな私に、目を見開き驚く王子に、でも…。と続ける。
「ゼノさん…第1騎士団の人達が元気かなぁって、考えちゃいます。」
貰うだけで、何も返せなかったし…。
と言うと、セシル王子が意味深に笑った。
「じゃあ、返せばいいんじゃない?」
そう言って、私に白い箱を渡す。
なんとなく見覚えのある高級感を前に、これは?と問うと、開けてみて。と言われた。
なんか前も似たようなやりとりしたな…。と思いながら開ければ、そこには沢山の魔石が入っていた。
「こ、んなに…どうしたんですか…?」
「君にお詫びのつもり。」
今までのと、後は、そうだね。…この前は強引に進めた分でどう?というセシル王子に、お詫びされるようなことはない。と箱を返せば、良いから、受け取って。と言われる。
それをどうしようかと悩んでいると、近くに来たメリル様に、貴重なんだから貰っておきなよ。と言われる。
メリル様に言われてしまえば仕方ない。とそれを受け取れば、セシル王子に苦笑いを返された。
改めて箱の中を見ると、何十と入っている大小様々な魔石が入っている。
それを一つ手に取り眺めていれば、それでアクセサリーでも作りなよ。とメリル様が言った。
「アクセサリー、ですか?」
「うん。さっき、第1騎士団のみんなに何か返したいって言ってたじゃん。」
それにリウの魔力を込めれば、戦うことが多い騎士団にはとても良いと思うけど。
そう言うメリル様に私は目を瞬かせ、見開いた。
「メリル様!それ良いですね!すごい!さすがメリル様!」
「……君のそのメリルへの態度はなんなの。」
こうして私は、この日から仕事の合間に魔法石を作り、アクセサリーを作ることになったのである。
やはり、誰にも会うことなく研究室の前に着けば、こっち。と手を引かれる。
メリル様⁉︎手が!手が!と叫ぶ私に、うるさい。と一言言うメリル様。
そんな私は、クールなメリル様素敵!そこに痺れる!憧れるー!状態だった。
研究室から三つ離れた扉の前で立ち止まると、ここが君の部屋だよ。と扉を開ける。
騎士団の寮は木を使っていて、落ち着く雰囲気だったが、ここは白を基調としていて、汚してはいけない気がするほど綺麗な場所だった。
部屋の広さは、騎士団の寮と比べると狭いが、それでも結構な広さがある。
部屋の中に一つある扉を開ければ、そこはトイレやシャワー室、洗面台があった。
一通り部屋を見渡した私は、後でまた来る。と言って出て行ったメリル様を待っている間、持ってきた荷物を片付ける。
10分ほどで終わり、暇だなーと思って窓の外を見れば、あれ…?、と違和感を覚える。
「リウ、研究室に……どうしたの?」
「め、メリル様!あの木!木が!」
そう言って部屋に入ってきたメリル様を窓の方に連れてこれば、あぁ。と頷く。
「なんで消えたはずの木があんなに大きく生えているんですか⁉︎前より小さい気がしなくもないですけど!」
「なんでって…地属性の魔術師の人にしてもらったから。」
何言ってるの?と言うメリル様。
当然と言うような態度のメリル様に私は、この間無くなったはずの場所にある、新しい木を見る。
そうか、ここは異世界だった。と納得するしかなかった。
「じゃあ、まずはこの薬草を粉になるまですり潰して。」
魔術師の見習い服を着て過ごしている私は、メリル様に言われるがまま乾燥した薬草をすり鉢にいれ、すりこぎで潰していく。
ここに来て4日。
まだここでの生活は慣れないが、メリル様以外には誰にも会うことなく、こうしてポーション作りのお手伝いをしている。
ポーションは、魔術で浄化した水を使い、薬草やハーブなどを鍋に入れ作る。
ただ、火加減や薬草などの量は難しく、今はまだメリル様が作るのを見ているだけだ。
薬草をすり潰しながらメリル様の横に立つと、ちょうど、鍋の中のものが青色に変わっていく所だった。
「いつ見てもやっぱり不思議です。」
「そう?もう見慣れすぎてよくわかんないや。」
「だって、水とすり潰した枯れ草を入れて十数分かき混ぜるだけで一瞬にしてこんな鮮やかな色になるんですよ?」
「それがむずかしいんだよ。」
そう言って、出来上がったばかりのポーションを容器に入れていく。
鍋一杯に作ったはずのポーションは、出来上がる頃には半分もない。
煮詰め過ぎているわけでもないのに、不思議だなーと思う。
それを眺めていると、次はこの薬草ね。と3種類の薬草が置かれる。
はい。と返事をした私は、頑張ってすりこぎを動かした。
「頑張っているね。」
もう少しで擦り終わるという頃に、私とメリル様以外の声がした。
びくりと体を揺らし、声の主を確認すると、セシル王子だった。
「あ…こんにちは。」
「こんにちは。…ここでの生活は順調?」
まぁ、僕が聞くのもなんだけど。
そう言って、私の向かいの席に座る。
まぁ、それなりに…。と答えると、あれ、もっとメリルといれて喜んでいるかと思ってた。と笑われた。
そんな私は、薬草を擦りながら、そりゃあ嬉しいですよ!毎日神に感謝しておりますよ⁉︎それが何か⁉︎と王子にキレる。
そんな私に、目を見開き驚く王子に、でも…。と続ける。
「ゼノさん…第1騎士団の人達が元気かなぁって、考えちゃいます。」
貰うだけで、何も返せなかったし…。
と言うと、セシル王子が意味深に笑った。
「じゃあ、返せばいいんじゃない?」
そう言って、私に白い箱を渡す。
なんとなく見覚えのある高級感を前に、これは?と問うと、開けてみて。と言われた。
なんか前も似たようなやりとりしたな…。と思いながら開ければ、そこには沢山の魔石が入っていた。
「こ、んなに…どうしたんですか…?」
「君にお詫びのつもり。」
今までのと、後は、そうだね。…この前は強引に進めた分でどう?というセシル王子に、お詫びされるようなことはない。と箱を返せば、良いから、受け取って。と言われる。
それをどうしようかと悩んでいると、近くに来たメリル様に、貴重なんだから貰っておきなよ。と言われる。
メリル様に言われてしまえば仕方ない。とそれを受け取れば、セシル王子に苦笑いを返された。
改めて箱の中を見ると、何十と入っている大小様々な魔石が入っている。
それを一つ手に取り眺めていれば、それでアクセサリーでも作りなよ。とメリル様が言った。
「アクセサリー、ですか?」
「うん。さっき、第1騎士団のみんなに何か返したいって言ってたじゃん。」
それにリウの魔力を込めれば、戦うことが多い騎士団にはとても良いと思うけど。
そう言うメリル様に私は目を瞬かせ、見開いた。
「メリル様!それ良いですね!すごい!さすがメリル様!」
「……君のそのメリルへの態度はなんなの。」
こうして私は、この日から仕事の合間に魔法石を作り、アクセサリーを作ることになったのである。
0
お気に入りに追加
1,831
あなたにおすすめの小説
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
エンジェリカの王女
四季
ファンタジー
天界の王国・エンジェリカ。その王女であるアンナは王宮の外の世界に憧れていた。
ある日、護衛隊長エリアスに無理を言い街へ連れていってもらうが、それをきっかけに彼女の人生は動き出すのだった。
天使が暮らす天界、人間の暮らす地上界、悪魔の暮らす魔界ーー三つの世界を舞台に繰り広げられる物語。
著作者:四季 無断転載は固く禁じます。
※この作品は、2017年7月~10月に執筆したものを投稿しているものです。
※この作品は「小説カキコ」にも掲載しています。
※この作品は「小説になろう」にも掲載しています。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。
黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。
実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。
父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。
まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。
そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。
しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。
いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。
騙されていたって構わない。
もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。
タニヤは商人の元へ転職することを決意する。
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる