25 / 53
にじゅうご。
しおりを挟む
「私の腹黒さが滲み出ているのでしょうか……。」
「なに?そんなに汚いの?君のお腹?」
そう言って汚いものを見るような視線を向けてくるメリル様に、違う!と弁解しようとすれば、冗談。と言われる。
私のガラスのハートはひび割れた…。と床に手をつくと、元気だしなよ。と頭をポンポンされた。
花宮 凛羽 21歳、復活の時である。
ほら、遊んでないで座って。とメリル様に言われ、素早く着席する。
机に置いていた、先ほどの魔法石をメリル様が手に取った。
「凄いね。オニキスみたいに綺麗だ。」
そう言って、魔法石を眺める。
そう。
オニキスみたいと言う表現で分かったと思うが、私が作り出した魔法石は、メリル様が私の魔力検査をした時に言った、魔力の色を表しているかのような黒さだったのである。
「こんな魔法石初めてみたよ。」
クルクルと、綺麗な指先で転がしながらメリル様は言う。
「…失敗、じゃないんですか…?」
ちゃんとできているか不安な私がそう聞くと、わからないね。と言われる。
わからない…?と首をかしげる私に、メリル様は言った。
「属性もわからないし、ちょっと、試してみようか。」
「…え?」
そして、部屋の窓に向かうメリル様を眺めていれば、おいで。と手招きされる。
飼い主に尻尾を振るように近付くと、良い子。と頭を撫でられた。
へへ……へへへ……。
そうだらしなく笑っていると、そんな私を無視して、窓を開ける。
念のためとフードを被れば、人はいないよ。と言われた。
それじゃあ…。と脱ぐと、窓の外に広がる木々を見る。
その中の、一本の大きな木をメリル様が指差し、あれを見ててね。と言った。
何が始まるのだろうかと思いながらも、はい。と返事をして言われた通りに見ていれば、
ボッ
「ハッ⁉︎」
そんな音がして、緑の木は、赤の炎に包まれた。
「……へぇ。なるほどね。」
「め、メリル様⁉︎火事です!木が!木が!」
「うん、ちょっと静かにしててくれる?」
轟々と燃え盛る炎を纏った木を指差し、メリル様に言うと、彼はこちらを見ることなく、無表情でそう言った。
そして、木に向かって手をかざしたと思ったら、
ピキリ
先ほど燃えていた木の方から、そんな音がした。
恐る恐る見れば、
「…えぇぇぇえ⁉︎」
燃えていたはずの木が、氷漬けにされていた。
「え?え?何?…え?」
困惑する私の元に、冷んやりとした空気が流れてくる。
「これもか……。」
よくわからない言葉を呟き、再度手をかざすメリル様に、次は何が起こるのかと、氷漬けの木を見ていれば、
バッ
強風が吹いた。
ビュンビュンと風を切る音が聞こえる。
思わず目をつぶってしまった私は、風がやんだのを感じると、ソッと目を開けた。
「えぇぇぇぇ……。」
なんかもう、反応するのも疲れてきた。
なんと、先ほどまで氷漬けにされていた木が、無くなっていたのである。
「凄いね。リウ。」
「……そうですね。」
こんな凄い魔法を立て続けに見るなんて……。と言えば、そう言うことじゃないんだけどね。と苦笑いされた。
その後、確認が終わったのか、窓を閉めたメリル様に着いて、ソファーに戻る。
何か考え込んでいるメリル様に話しかけることが出来ず、冷めてしまったハーブティーを飲んだ。
……あ、冷めても美味しい。
そうやって待つこと数十分。
流石にそろそろ何かお話を…!と思った頃、メリル様の口が動いた。
「リウ。」
「はい。」
「まだ、僕が持っている属性しか試していないから、確実なことは言えないけど……、」
そう言って、私の目の前に、あの魔法石を持ってきた。
「リウが作ったこの魔法石は、多分、全属性持ちだ。」
「……へ?」
「ま、またまたご冗談を。」
私はそう簡単に騙されませんよ!
そう言って、ヘラっと笑えば、
「何?僕の言っていることが信じられないの?」
冷たい瞳を向けられた。
シュバっ
「め、滅相もございません…っ!!」
「分かればよろしい。」
メリル様にお許しいただけたようで、ホッと胸をなでおろす。
人生で初めて、スライディング土下座と言うものをしたが、案外できるものだな、と思った。
その後、調べたいことが出来た。と言うメリル様に、寮まで送ってもらった。
先ほどの事を知りたくて、教えて欲しいと聞くと、調べてはっきりしたらね。と言われてしまった。
メリル様にそう言われれば、私なんかが聞けるはずもないじゃないか…!
そうして、送ってくれたメリル様に、ありがとうございました。と言い、その背を見送る。
馬車でここまで来ないのはなぜか分からないが、多分、いつも引きこもっているとメリル様が言っていたから、ちょうど良い運動なのだろう。
メリル様に会えたと、ルンルンで寮に帰ろうと振り返ると、
「随分と、楽しそうだな。リウ。」
「—ヒッ!」
鬼の形相をした、ゼノさんがおりましたとさ。
「なに?そんなに汚いの?君のお腹?」
そう言って汚いものを見るような視線を向けてくるメリル様に、違う!と弁解しようとすれば、冗談。と言われる。
私のガラスのハートはひび割れた…。と床に手をつくと、元気だしなよ。と頭をポンポンされた。
花宮 凛羽 21歳、復活の時である。
ほら、遊んでないで座って。とメリル様に言われ、素早く着席する。
机に置いていた、先ほどの魔法石をメリル様が手に取った。
「凄いね。オニキスみたいに綺麗だ。」
そう言って、魔法石を眺める。
そう。
オニキスみたいと言う表現で分かったと思うが、私が作り出した魔法石は、メリル様が私の魔力検査をした時に言った、魔力の色を表しているかのような黒さだったのである。
「こんな魔法石初めてみたよ。」
クルクルと、綺麗な指先で転がしながらメリル様は言う。
「…失敗、じゃないんですか…?」
ちゃんとできているか不安な私がそう聞くと、わからないね。と言われる。
わからない…?と首をかしげる私に、メリル様は言った。
「属性もわからないし、ちょっと、試してみようか。」
「…え?」
そして、部屋の窓に向かうメリル様を眺めていれば、おいで。と手招きされる。
飼い主に尻尾を振るように近付くと、良い子。と頭を撫でられた。
へへ……へへへ……。
そうだらしなく笑っていると、そんな私を無視して、窓を開ける。
念のためとフードを被れば、人はいないよ。と言われた。
それじゃあ…。と脱ぐと、窓の外に広がる木々を見る。
その中の、一本の大きな木をメリル様が指差し、あれを見ててね。と言った。
何が始まるのだろうかと思いながらも、はい。と返事をして言われた通りに見ていれば、
ボッ
「ハッ⁉︎」
そんな音がして、緑の木は、赤の炎に包まれた。
「……へぇ。なるほどね。」
「め、メリル様⁉︎火事です!木が!木が!」
「うん、ちょっと静かにしててくれる?」
轟々と燃え盛る炎を纏った木を指差し、メリル様に言うと、彼はこちらを見ることなく、無表情でそう言った。
そして、木に向かって手をかざしたと思ったら、
ピキリ
先ほど燃えていた木の方から、そんな音がした。
恐る恐る見れば、
「…えぇぇぇえ⁉︎」
燃えていたはずの木が、氷漬けにされていた。
「え?え?何?…え?」
困惑する私の元に、冷んやりとした空気が流れてくる。
「これもか……。」
よくわからない言葉を呟き、再度手をかざすメリル様に、次は何が起こるのかと、氷漬けの木を見ていれば、
バッ
強風が吹いた。
ビュンビュンと風を切る音が聞こえる。
思わず目をつぶってしまった私は、風がやんだのを感じると、ソッと目を開けた。
「えぇぇぇぇ……。」
なんかもう、反応するのも疲れてきた。
なんと、先ほどまで氷漬けにされていた木が、無くなっていたのである。
「凄いね。リウ。」
「……そうですね。」
こんな凄い魔法を立て続けに見るなんて……。と言えば、そう言うことじゃないんだけどね。と苦笑いされた。
その後、確認が終わったのか、窓を閉めたメリル様に着いて、ソファーに戻る。
何か考え込んでいるメリル様に話しかけることが出来ず、冷めてしまったハーブティーを飲んだ。
……あ、冷めても美味しい。
そうやって待つこと数十分。
流石にそろそろ何かお話を…!と思った頃、メリル様の口が動いた。
「リウ。」
「はい。」
「まだ、僕が持っている属性しか試していないから、確実なことは言えないけど……、」
そう言って、私の目の前に、あの魔法石を持ってきた。
「リウが作ったこの魔法石は、多分、全属性持ちだ。」
「……へ?」
「ま、またまたご冗談を。」
私はそう簡単に騙されませんよ!
そう言って、ヘラっと笑えば、
「何?僕の言っていることが信じられないの?」
冷たい瞳を向けられた。
シュバっ
「め、滅相もございません…っ!!」
「分かればよろしい。」
メリル様にお許しいただけたようで、ホッと胸をなでおろす。
人生で初めて、スライディング土下座と言うものをしたが、案外できるものだな、と思った。
その後、調べたいことが出来た。と言うメリル様に、寮まで送ってもらった。
先ほどの事を知りたくて、教えて欲しいと聞くと、調べてはっきりしたらね。と言われてしまった。
メリル様にそう言われれば、私なんかが聞けるはずもないじゃないか…!
そうして、送ってくれたメリル様に、ありがとうございました。と言い、その背を見送る。
馬車でここまで来ないのはなぜか分からないが、多分、いつも引きこもっているとメリル様が言っていたから、ちょうど良い運動なのだろう。
メリル様に会えたと、ルンルンで寮に帰ろうと振り返ると、
「随分と、楽しそうだな。リウ。」
「—ヒッ!」
鬼の形相をした、ゼノさんがおりましたとさ。
0
お気に入りに追加
1,831
あなたにおすすめの小説
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる