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じゅうご。
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き、気持ち悪い?
え、メリル様に気持ち悪いって言われた?
誰が?……私が?
え、どうしよう、立ち直れない。
そんな私の心情を知らぬ周囲は話をし始める。
メリル様の美しい手は未だに私の手を握ったままだ。
うっは!どうしよう!意識したら手から水が…!
それを感じ取ったのか、メリル様は手を離し、私の服の袖で手を拭った。
あぁ、それすらもメリル教に入会した私にはご褒美です!
「メリル、どういうことだ?」
「魔力はあるんだよね?」
「うん、そうだね、魔力はあるよ。」
ただね、黒いんだよ。真っ黒。
そう言って、メリル様が私の目を見る。
「それと…、ねぇ、君さ……
……その髪と瞳の色、本物?」
「—ッ!」
「おい、それはどういうことだ?」
「いやね、会った時から違和感はあったんだけど、今魔力の巡りで分かった。…瞳はそうだね、本物の様だ。綺麗な色。少し濃いめだけど…グレーなんだね。」
イーグルアイみたい。そう言って、私の瞳を見る。
他の皆んなの視線も突き刺さっているような気がした。
前の世界では色々あったが、この世界に来てからは何も言われなかった。
日本から来たから、そういうものだと納得してもらっていたのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「だけどこの髪の色は、偽物だよね?この色なら地属性としてごまかせそうだけど。…ただ、どうして色が変わっているのかは分からないなぁ。」
サラサラと、私の前髪を触りながら、首をかしげる。しばらくして、メリル様が口を開いた。
「浄化、してみようか。」
「…浄化?」
困惑する私に、メリル様は、そう水属性の魔術。と言って私の髪に手をかざす。
「やめ…っ!」
恐怖を感じた私が頭を守ろうとした時には、メリル様の魔術が発動した後だった。
コトリと、パドマさんから借りた髪留めが落ちた音がした。
サラリと、自分の髪が流れる音がした。
「……っ!」
誰かの、息を飲む音が聞こえる。
もしかしたら、自分のだったかもしれない。
「黒、色……?」
ハロルド君の声が、この静寂に響いた。
呆然とする私を、目の前で見ているメリル様が、ニヤリと笑った気がした。
「……へぇ。やっぱり。」
「メリル…様……、あの……、」
「うん、リウ。もう一度魔力検査をしようか。」
何か言われるんじゃないかと怯える私と、固まる周囲を無視し、メリル様は私の手を握る。
この人は存外、周囲を気にしないようだ。
戸惑う私に、集中して。と彼は言い、目を閉じる。
何かもう、驚き慌てることにも疲れた私は、素直にそれに従った。
「んー。やっぱり、真っ黒だ。」
数分して、メリルさんは呟く。
なんだ、私のお腹の中かい?と言う冗談が言える雰囲気ではない。
なんせ、空気が重いのだ。
それはもう、床に自分から叩きつけられたくなるくらいに、重い。
「あの、メリル様…ほかの皆さんが……。」
置いてけぼりです…。と言うと、だから?、と首を傾げられた。
ほわぁぁぁぁぁあぁぁぁあかわいぃぃぃぃい…っ!
と思った私は、もう手遅れなメリル様信者だ。
「リウ、今から魔法を使ってみようか。」
「え?でも私、使ったこと…。」
「大丈夫。魔力はあるんだから、使えるよ。ただ、何が使えるのかが分からないから、手探り状態だけどね。」
そう言って、握ったままの私の手をひいた。
「おい!メリル、どこに連れて行く⁉︎」
この重い空気からおさらばするようにメリル様が団長室の扉に向かえば、ゼノさんが私の反対の手を握った。
……やめて!私のために争わないで!
とは、心の中にしまっておいた。
…なんかセシル王子の方からジト目で見られている気がするが、私の心の声でも漏れていたのであろうか?
「屋外訓練場だよ。魔力属性がわからないんだ。外でするのはあたりまえでしょう?」
メリル様にそう言われたゼノ団長は、私の手を離す。
それを確認したメリル様は、私の手を引き屋外訓練場へと向かった。
建物から出た私達は訓練場の真ん中に立つ。
ゼノさん達4人は、訓練場の近くから見ているようだ。
……緊張するなぁ。
「じゃあまずは火属性からね。」
「はい。」
「やり方を説明するよ。まず、手のひらを出して。」
「はい。」
「その手のひらの上に火の塊を置くイメージで、さっきの魔力の流れを感じながら力をいれてごらん。」
「火の塊……。」
「そう、それが魔法だから。」
水風船の火バージョンで良いのだろうか?
言われたままにイメージする。
「んんんんん……。」
1分経過。
「ぬぬぬぬぬぬぬ……。」
5分経過。
「ふんぬうううう……。」
15分経過。
「うんぬぬぬぬ」
「火属性ではないみたいだね。」
「……もう少し早めに判断できませんか。」
「善処するよ。」
とても疲れた。
集中力半端ない。
「じゃあ次は同じ要領で、水ね。」
「……はい。」
その後、全属性を試した。
え、メリル様に気持ち悪いって言われた?
誰が?……私が?
え、どうしよう、立ち直れない。
そんな私の心情を知らぬ周囲は話をし始める。
メリル様の美しい手は未だに私の手を握ったままだ。
うっは!どうしよう!意識したら手から水が…!
それを感じ取ったのか、メリル様は手を離し、私の服の袖で手を拭った。
あぁ、それすらもメリル教に入会した私にはご褒美です!
「メリル、どういうことだ?」
「魔力はあるんだよね?」
「うん、そうだね、魔力はあるよ。」
ただね、黒いんだよ。真っ黒。
そう言って、メリル様が私の目を見る。
「それと…、ねぇ、君さ……
……その髪と瞳の色、本物?」
「—ッ!」
「おい、それはどういうことだ?」
「いやね、会った時から違和感はあったんだけど、今魔力の巡りで分かった。…瞳はそうだね、本物の様だ。綺麗な色。少し濃いめだけど…グレーなんだね。」
イーグルアイみたい。そう言って、私の瞳を見る。
他の皆んなの視線も突き刺さっているような気がした。
前の世界では色々あったが、この世界に来てからは何も言われなかった。
日本から来たから、そういうものだと納得してもらっていたのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「だけどこの髪の色は、偽物だよね?この色なら地属性としてごまかせそうだけど。…ただ、どうして色が変わっているのかは分からないなぁ。」
サラサラと、私の前髪を触りながら、首をかしげる。しばらくして、メリル様が口を開いた。
「浄化、してみようか。」
「…浄化?」
困惑する私に、メリル様は、そう水属性の魔術。と言って私の髪に手をかざす。
「やめ…っ!」
恐怖を感じた私が頭を守ろうとした時には、メリル様の魔術が発動した後だった。
コトリと、パドマさんから借りた髪留めが落ちた音がした。
サラリと、自分の髪が流れる音がした。
「……っ!」
誰かの、息を飲む音が聞こえる。
もしかしたら、自分のだったかもしれない。
「黒、色……?」
ハロルド君の声が、この静寂に響いた。
呆然とする私を、目の前で見ているメリル様が、ニヤリと笑った気がした。
「……へぇ。やっぱり。」
「メリル…様……、あの……、」
「うん、リウ。もう一度魔力検査をしようか。」
何か言われるんじゃないかと怯える私と、固まる周囲を無視し、メリル様は私の手を握る。
この人は存外、周囲を気にしないようだ。
戸惑う私に、集中して。と彼は言い、目を閉じる。
何かもう、驚き慌てることにも疲れた私は、素直にそれに従った。
「んー。やっぱり、真っ黒だ。」
数分して、メリルさんは呟く。
なんだ、私のお腹の中かい?と言う冗談が言える雰囲気ではない。
なんせ、空気が重いのだ。
それはもう、床に自分から叩きつけられたくなるくらいに、重い。
「あの、メリル様…ほかの皆さんが……。」
置いてけぼりです…。と言うと、だから?、と首を傾げられた。
ほわぁぁぁぁぁあぁぁぁあかわいぃぃぃぃい…っ!
と思った私は、もう手遅れなメリル様信者だ。
「リウ、今から魔法を使ってみようか。」
「え?でも私、使ったこと…。」
「大丈夫。魔力はあるんだから、使えるよ。ただ、何が使えるのかが分からないから、手探り状態だけどね。」
そう言って、握ったままの私の手をひいた。
「おい!メリル、どこに連れて行く⁉︎」
この重い空気からおさらばするようにメリル様が団長室の扉に向かえば、ゼノさんが私の反対の手を握った。
……やめて!私のために争わないで!
とは、心の中にしまっておいた。
…なんかセシル王子の方からジト目で見られている気がするが、私の心の声でも漏れていたのであろうか?
「屋外訓練場だよ。魔力属性がわからないんだ。外でするのはあたりまえでしょう?」
メリル様にそう言われたゼノ団長は、私の手を離す。
それを確認したメリル様は、私の手を引き屋外訓練場へと向かった。
建物から出た私達は訓練場の真ん中に立つ。
ゼノさん達4人は、訓練場の近くから見ているようだ。
……緊張するなぁ。
「じゃあまずは火属性からね。」
「はい。」
「やり方を説明するよ。まず、手のひらを出して。」
「はい。」
「その手のひらの上に火の塊を置くイメージで、さっきの魔力の流れを感じながら力をいれてごらん。」
「火の塊……。」
「そう、それが魔法だから。」
水風船の火バージョンで良いのだろうか?
言われたままにイメージする。
「んんんんん……。」
1分経過。
「ぬぬぬぬぬぬぬ……。」
5分経過。
「ふんぬうううう……。」
15分経過。
「うんぬぬぬぬ」
「火属性ではないみたいだね。」
「……もう少し早めに判断できませんか。」
「善処するよ。」
とても疲れた。
集中力半端ない。
「じゃあ次は同じ要領で、水ね。」
「……はい。」
その後、全属性を試した。
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