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はち。
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目が覚めたら、見覚えのある天井が目に入った。
ベージュ色した天井から視線をそらせば、誰かの荷物が目に入る。
パサリ
そんな音が耳に届き、音のする方を見ると、テントの入り口に昨日も会った緑の髪と瞳の女性と目が合った。
「…パドマさん?」
確か、そう呼ばれていたはずだ。
思わず言葉にしてしまった私を彼女は気にすることなく私の目の前まで来る。
「おはよう、顔色も良いわね。」
「あ、はい…。」
あまりに近すぎる綺麗な顔に視線を逸らして返事をする。
昨日から思うのだが、この国の人達は自分の顔面偏差値を分かっているのだろうか。
顔を離したパドマさんは、私に手を差し出してきた。
寝たままの状態だった私は、その手に手を置く。
女性にしては強い力で引っ張り起こされ、少し驚く。
騎士団の一員だし、鍛えているからだろうか。
豆の跡が残る手は、少しゴツゴツしていた。
「はい、どうぞ。」
「…ありがとうございます。」
引っ張り起こされてからテントを出て連れて来られたのは、昨日の夜見た焚き火をしていた場所だった。
今は火が消えているその周りに置いてある太い丸太に座ると、パドマさんがパンとスープを持ってきてくれる。
お礼を言い受け取れば、パドマさんは私の向かいにある丸太に座った。
「どう?少しは落ち着いた?」
「あ、はい、いえ、落ち着きました。」
そう言えば、落ち着いてないじゃない。と笑った。
その凛とした綺麗な顔を見れば、その瞳と目が合った。
「そう言えば、まだ名乗ってもいなかったわね。私はパドマ・ピア・メイヤーズよ。」
「…メイヤーズさん。」
「あら、さっきみたいにパドマで良いわ。」
「ありがとうございます、パドマさん。私は、リウ・ハナミヤです。私のこともリウって呼んでください。」
「そう。じゃあ遠慮なくリウって呼ばせてもらうわ。」
そう言ってパンを一口かじるパドマさんを見て、私も受け取ったパンを食べる。
少し硬いパンを食べながら周囲を見渡すと、何人かの人たちと目が合う。
やはりと言うか、カラフルな色彩を持った彼等と目が合った瞬間にパッとそらされる視線に居心地の悪さを感じた。
昨日の3人がいないのを確認した私は、食事を再開する。
「貴女、聖女召喚に巻き込まれてここに来たんでしょう?」
「ゴホッ!」
無言で食べ続けていた私に、パドマさんが声をかける。
いきなりの質問に飲んだスープを喉に引っ掛けてしまう。
「ゲホッ、ゴホッ、…はぁ、…すみません。」
「いや、私も悪かったわ。ちょっと気になってしまって。」
ごめんなさいね。そう言って眉を下げるパドマさんに焦る。
慌てて、気にしないでください!と言えば、そう。と顔を戻した。
一瞬、あれ?と思ったが、目の前の綺麗な顔にそれも忘れる。
仕方ない。私は綺麗なものには弱いのだ。
「…シュトロハイムさん達からお聞きしたんですか?」
「えぇ。一応、私が今貴女のお世話係だからね。」
あともう1人いるけど。と言ってスープを飲み干すパドマさんを見つめる。
「お世話係…?」
「そう。まぁ、王都に戻るまでの期間限定って感じだけど。…だから、困ったことがあったら私に言って。」
「そうなんですね…。すみません、お仕事増やしてしまって。」
「気にしないで。料理当番とか見回りとかしなくて良いからどちらかと言えば役得なの。」
いたずらが成功したかのようなそんな表情に私は少し安堵する。
私に気を使わせないようにしてくれているのか分からないが、そう言ってもらえると少しだけ心が軽くなったような気がした。
「そろそろそのお世話係の子も来るはずなんだけどね。…ねぇ、それまで話を聞かせてくれないかしら?」
「はい、私の話で良ければ。」
「ありがとう!それで、貴女はどうやってこの世界に来たの?」
そう言って瞳を輝かせる彼女に、かわいいなぁと思う。
「そうですね…。私、地球って世界にある日本って国から来たんですけど、」
「チキュウ?ニホン?」
「はい。この世界とは違って魔力とか魔獣とかはいなく「パドマさん!」って、」
「あら、ハロルドもう来たの?」
「もうってなんですか。急げって言ったのパドマさんじゃないですか。」
私が話を始めてすぐ、遮るように現れた人物に私は目を瞬かせる。
この世界に来てからはどちらかと言うと懐かしく馴染みのある焦げ茶の髪に同じ焦げ茶の瞳。
その人物は、目の前に座っているパドマさんと何やら話し込んでいる。
そんな2人を見ながら私は思った。
いや、正確には、今初めて会った少年にだ。
現れた少年は、何というか、とても、
「かわいい…。」
「はぁ⁉︎かわいい言うな!」
そう、可愛かったのだ。
自分に言われたことだと気付き、怒るその顔すら、可愛いのだ。
ベージュ色した天井から視線をそらせば、誰かの荷物が目に入る。
パサリ
そんな音が耳に届き、音のする方を見ると、テントの入り口に昨日も会った緑の髪と瞳の女性と目が合った。
「…パドマさん?」
確か、そう呼ばれていたはずだ。
思わず言葉にしてしまった私を彼女は気にすることなく私の目の前まで来る。
「おはよう、顔色も良いわね。」
「あ、はい…。」
あまりに近すぎる綺麗な顔に視線を逸らして返事をする。
昨日から思うのだが、この国の人達は自分の顔面偏差値を分かっているのだろうか。
顔を離したパドマさんは、私に手を差し出してきた。
寝たままの状態だった私は、その手に手を置く。
女性にしては強い力で引っ張り起こされ、少し驚く。
騎士団の一員だし、鍛えているからだろうか。
豆の跡が残る手は、少しゴツゴツしていた。
「はい、どうぞ。」
「…ありがとうございます。」
引っ張り起こされてからテントを出て連れて来られたのは、昨日の夜見た焚き火をしていた場所だった。
今は火が消えているその周りに置いてある太い丸太に座ると、パドマさんがパンとスープを持ってきてくれる。
お礼を言い受け取れば、パドマさんは私の向かいにある丸太に座った。
「どう?少しは落ち着いた?」
「あ、はい、いえ、落ち着きました。」
そう言えば、落ち着いてないじゃない。と笑った。
その凛とした綺麗な顔を見れば、その瞳と目が合った。
「そう言えば、まだ名乗ってもいなかったわね。私はパドマ・ピア・メイヤーズよ。」
「…メイヤーズさん。」
「あら、さっきみたいにパドマで良いわ。」
「ありがとうございます、パドマさん。私は、リウ・ハナミヤです。私のこともリウって呼んでください。」
「そう。じゃあ遠慮なくリウって呼ばせてもらうわ。」
そう言ってパンを一口かじるパドマさんを見て、私も受け取ったパンを食べる。
少し硬いパンを食べながら周囲を見渡すと、何人かの人たちと目が合う。
やはりと言うか、カラフルな色彩を持った彼等と目が合った瞬間にパッとそらされる視線に居心地の悪さを感じた。
昨日の3人がいないのを確認した私は、食事を再開する。
「貴女、聖女召喚に巻き込まれてここに来たんでしょう?」
「ゴホッ!」
無言で食べ続けていた私に、パドマさんが声をかける。
いきなりの質問に飲んだスープを喉に引っ掛けてしまう。
「ゲホッ、ゴホッ、…はぁ、…すみません。」
「いや、私も悪かったわ。ちょっと気になってしまって。」
ごめんなさいね。そう言って眉を下げるパドマさんに焦る。
慌てて、気にしないでください!と言えば、そう。と顔を戻した。
一瞬、あれ?と思ったが、目の前の綺麗な顔にそれも忘れる。
仕方ない。私は綺麗なものには弱いのだ。
「…シュトロハイムさん達からお聞きしたんですか?」
「えぇ。一応、私が今貴女のお世話係だからね。」
あともう1人いるけど。と言ってスープを飲み干すパドマさんを見つめる。
「お世話係…?」
「そう。まぁ、王都に戻るまでの期間限定って感じだけど。…だから、困ったことがあったら私に言って。」
「そうなんですね…。すみません、お仕事増やしてしまって。」
「気にしないで。料理当番とか見回りとかしなくて良いからどちらかと言えば役得なの。」
いたずらが成功したかのようなそんな表情に私は少し安堵する。
私に気を使わせないようにしてくれているのか分からないが、そう言ってもらえると少しだけ心が軽くなったような気がした。
「そろそろそのお世話係の子も来るはずなんだけどね。…ねぇ、それまで話を聞かせてくれないかしら?」
「はい、私の話で良ければ。」
「ありがとう!それで、貴女はどうやってこの世界に来たの?」
そう言って瞳を輝かせる彼女に、かわいいなぁと思う。
「そうですね…。私、地球って世界にある日本って国から来たんですけど、」
「チキュウ?ニホン?」
「はい。この世界とは違って魔力とか魔獣とかはいなく「パドマさん!」って、」
「あら、ハロルドもう来たの?」
「もうってなんですか。急げって言ったのパドマさんじゃないですか。」
私が話を始めてすぐ、遮るように現れた人物に私は目を瞬かせる。
この世界に来てからはどちらかと言うと懐かしく馴染みのある焦げ茶の髪に同じ焦げ茶の瞳。
その人物は、目の前に座っているパドマさんと何やら話し込んでいる。
そんな2人を見ながら私は思った。
いや、正確には、今初めて会った少年にだ。
現れた少年は、何というか、とても、
「かわいい…。」
「はぁ⁉︎かわいい言うな!」
そう、可愛かったのだ。
自分に言われたことだと気付き、怒るその顔すら、可愛いのだ。
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