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朝陽said.
13.
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「あー腹減ったー」
「やっと昼飯ー」
4限目終了後、移動教室だったため伊織と颯汰と教室までの道のりを歩く。
穏やかな風が吹く渡り廊下を歩いていると、前から瀬名が歩いてきた。
手にはお弁当が入っているのだろう袋を持ち、隣を歩く男子生徒と仲良さげに話している。
「眉間にシワが寄ってるよ」
颯汰が呆れたような声で言ってくる。
瀬名と歩いている男子生徒__中川と同じ部活である伊織が瀬名達に先に話しかけるのを追うように俺も声をかける。
瀬名と中川は今日が保健委員の当番らしい。
話を聞くと、日によっては佐々木先生が用事で少し抜けたりすることもあるらしく、保健室には委員の生徒だけになることもあるとのこと。
「それって委員の人以外も保健室で食べて良いの?」
「んー…どうなんだろう?良いのかな?」
「良いんじゃね?佐々木先生ならそう言いそうだけど」
「ふーん…分かった」
2人と別れ教室に着いた俺は、弁当を持って保健室を目指す。
この間のことが心配だからと伊織達には言ったが、俺の本音はバレバレだろう。ニヤついた顔で見送られた。
急ぎ足で保健室へ行き、扉を開ける。
「高杉君?」と驚いた顔をする瀬名と、来ると分かっていたような顔をする中川を横目に、佐々木先生にここで食べて良いかを聞く。
二つ返事で了承を得た俺は、瀬名と中川がいる丸テーブルの椅子の1つに座る。
瀬名と中川の間に座った俺は、2人と同じように弁当を広げる。
最初は戸惑っていた様子の瀬名も、俺と中川が普通に会話をしているといつも通りになった。
中川と部活の話とかをしていると、ふと中川が瀬名を見る。
そういえばと、途中から話に入ってこなくなった瀬名を俺も見ると、瀬名も俺達を見た。
「あ、ごめん、瀬名はこの話題つまらないよな」
「ん?全然そんなことないよ。聞いてて楽しい」
中川の言葉に、瀬名は笑顔で返す。
それから仲良く話す2人に多少嫉妬を覚え、「瀬名と中川って仲良いよな」と少しトゲのある言い方をしてしまった。
「え?」と戸惑うような瀬名の声にやってしまったと、言い訳のように返事をしていると、中川が面白い物を見たと言うように「同中だからな」と笑いながら言ってくる。
あの頃の瀬名と一緒に過ごしていたのかとモヤモヤとしながら聞くと、瀬名は「うん、そうだよ」と可愛らしく返事をした。
「同中って言っても、クラス違うとそんな話す機会ないし」
「そうだよね。渉がいたからかな?」
「だな。渉…瀬名の弟が同じサッカー部でさ、瀬名ともそれで話すようになったんだよなー」
「な?」と言う中川に瀬名は「うん」と返す。
それに安堵のようなよく分からないため息が出ると、中川が「と言うことで、納得していただけましたか」と弁当の唐揚げを箸に持ちながら聞いてくる。
降参のポーズで「しましたー」と棒読みの返事を返すと、笑う中川と首を傾げる瀬名が目に映った。
俺が嫉妬していたと気付いていない瀬名に、そのまま気付かれたくない俺は「あのさ」と全く別の話に変えた。
____
___
昼休みも残り10分ほど。
ガラガラと音を立て佐々木先生が保健室に戻ってきた。
俺達の方を見た先生は、瀬名に声をかける。何の用事だろうか?
すでに食べ終わっていた瀬名は「はい」と言いお弁当を片付け席を立ち先生の元へ駆け寄る。
「いってらー」
「ふふ、行ってきます」
俺の軽い言葉に笑い、返事をした瀬名は先生の後を追うようにパタパタと保健室を出て行った。
閉め忘れた扉の向こうから、2人の足音が遠ざかっていくのを聞いていると、「いや、本当に、もうさ」と中川が呆れた声を出した。
「…なんだよ」
「もうさ、どんだけ好きなんだよ」
「見てるこっちがなんかこう、むず痒くなるんだよ」と言って怒る中川は、今日の渡り廊下でのことから保健室での俺の様子を語る。
「俺が瀬名と歩いてるって分かった時の顔なんて恋敵見るような怖い顔してさ、保健室に来るとは思ってたけど…わざわざイスを瀬名の近くにずらすし、確かに瀬名は良いやつだと思っているけど、恋愛の意味では好きじゃねーよ」
「俺はライバルじゃありません。それと、チラチラと瀬名を見すぎて怖いわ」と失礼なことを言ってくる。
「は?そんなに見てねーよ」と言う俺の声は、中川のため息に流される。
その後も俺の行動に注意のような言葉をかけてくる中川に返事をしつつ、最後に「わかったわかった」と適当に返すと、もう一度大きなため息を吐いた中川は、一転、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「高杉って本当瀬名のこと好きな」
そう言ってくる中川に、「またその話かよ」と俺は呆れた顔をする。
女子並みに恋愛話大好きかよと思っていると、「まさか高杉をいじれる日が来るとは」と言ってくる。
まさかそう言う理由だと思っていなかった俺は、「なんだそれ。意味分かんねー」と笑った。
「やっと昼飯ー」
4限目終了後、移動教室だったため伊織と颯汰と教室までの道のりを歩く。
穏やかな風が吹く渡り廊下を歩いていると、前から瀬名が歩いてきた。
手にはお弁当が入っているのだろう袋を持ち、隣を歩く男子生徒と仲良さげに話している。
「眉間にシワが寄ってるよ」
颯汰が呆れたような声で言ってくる。
瀬名と歩いている男子生徒__中川と同じ部活である伊織が瀬名達に先に話しかけるのを追うように俺も声をかける。
瀬名と中川は今日が保健委員の当番らしい。
話を聞くと、日によっては佐々木先生が用事で少し抜けたりすることもあるらしく、保健室には委員の生徒だけになることもあるとのこと。
「それって委員の人以外も保健室で食べて良いの?」
「んー…どうなんだろう?良いのかな?」
「良いんじゃね?佐々木先生ならそう言いそうだけど」
「ふーん…分かった」
2人と別れ教室に着いた俺は、弁当を持って保健室を目指す。
この間のことが心配だからと伊織達には言ったが、俺の本音はバレバレだろう。ニヤついた顔で見送られた。
急ぎ足で保健室へ行き、扉を開ける。
「高杉君?」と驚いた顔をする瀬名と、来ると分かっていたような顔をする中川を横目に、佐々木先生にここで食べて良いかを聞く。
二つ返事で了承を得た俺は、瀬名と中川がいる丸テーブルの椅子の1つに座る。
瀬名と中川の間に座った俺は、2人と同じように弁当を広げる。
最初は戸惑っていた様子の瀬名も、俺と中川が普通に会話をしているといつも通りになった。
中川と部活の話とかをしていると、ふと中川が瀬名を見る。
そういえばと、途中から話に入ってこなくなった瀬名を俺も見ると、瀬名も俺達を見た。
「あ、ごめん、瀬名はこの話題つまらないよな」
「ん?全然そんなことないよ。聞いてて楽しい」
中川の言葉に、瀬名は笑顔で返す。
それから仲良く話す2人に多少嫉妬を覚え、「瀬名と中川って仲良いよな」と少しトゲのある言い方をしてしまった。
「え?」と戸惑うような瀬名の声にやってしまったと、言い訳のように返事をしていると、中川が面白い物を見たと言うように「同中だからな」と笑いながら言ってくる。
あの頃の瀬名と一緒に過ごしていたのかとモヤモヤとしながら聞くと、瀬名は「うん、そうだよ」と可愛らしく返事をした。
「同中って言っても、クラス違うとそんな話す機会ないし」
「そうだよね。渉がいたからかな?」
「だな。渉…瀬名の弟が同じサッカー部でさ、瀬名ともそれで話すようになったんだよなー」
「な?」と言う中川に瀬名は「うん」と返す。
それに安堵のようなよく分からないため息が出ると、中川が「と言うことで、納得していただけましたか」と弁当の唐揚げを箸に持ちながら聞いてくる。
降参のポーズで「しましたー」と棒読みの返事を返すと、笑う中川と首を傾げる瀬名が目に映った。
俺が嫉妬していたと気付いていない瀬名に、そのまま気付かれたくない俺は「あのさ」と全く別の話に変えた。
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昼休みも残り10分ほど。
ガラガラと音を立て佐々木先生が保健室に戻ってきた。
俺達の方を見た先生は、瀬名に声をかける。何の用事だろうか?
すでに食べ終わっていた瀬名は「はい」と言いお弁当を片付け席を立ち先生の元へ駆け寄る。
「いってらー」
「ふふ、行ってきます」
俺の軽い言葉に笑い、返事をした瀬名は先生の後を追うようにパタパタと保健室を出て行った。
閉め忘れた扉の向こうから、2人の足音が遠ざかっていくのを聞いていると、「いや、本当に、もうさ」と中川が呆れた声を出した。
「…なんだよ」
「もうさ、どんだけ好きなんだよ」
「見てるこっちがなんかこう、むず痒くなるんだよ」と言って怒る中川は、今日の渡り廊下でのことから保健室での俺の様子を語る。
「俺が瀬名と歩いてるって分かった時の顔なんて恋敵見るような怖い顔してさ、保健室に来るとは思ってたけど…わざわざイスを瀬名の近くにずらすし、確かに瀬名は良いやつだと思っているけど、恋愛の意味では好きじゃねーよ」
「俺はライバルじゃありません。それと、チラチラと瀬名を見すぎて怖いわ」と失礼なことを言ってくる。
「は?そんなに見てねーよ」と言う俺の声は、中川のため息に流される。
その後も俺の行動に注意のような言葉をかけてくる中川に返事をしつつ、最後に「わかったわかった」と適当に返すと、もう一度大きなため息を吐いた中川は、一転、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「高杉って本当瀬名のこと好きな」
そう言ってくる中川に、「またその話かよ」と俺は呆れた顔をする。
女子並みに恋愛話大好きかよと思っていると、「まさか高杉をいじれる日が来るとは」と言ってくる。
まさかそう言う理由だと思っていなかった俺は、「なんだそれ。意味分かんねー」と笑った。
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