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朝陽said.
5.
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数日経つと、瀬名とのことはバスケ部の先輩や他の先輩と会った時に聞かれるくらいで、揶揄われることもほとんどなくなった。
瀬名とも話したり連絡をとったりで、関係は順調だと思う。
ただ何かあるとすれば、連絡も会話もほぼ俺からであるということくらいか。それを瀬名に言うつもりはないが、少し…いや、だいぶ気になっている。
「へぇ、不審者ってあそこにある小学校の生徒に声かけたんだってー」
「声かけたっつーか下半身露出だろ」
「うっわ、ないわー」
「きっしょ」
5限目。
不審者が出たとかで先生達は会議中。そして俺達は自習時間になった。
寝ようとする俺の席に早々と来た伊織が颯汰を呼び、近くの席の菊池とその席に遊びに来ていた原がたまに会話に入る。
ガヤガヤとうるさい教室と自分の周りに、貴重な睡眠時間を奪われた俺は意味もなくスマホをいじる。
とりあえずFooooを開くと、菊池が言っていたように不審者の情報が載っていた。
不審者はいまだ逃走中ということで捕まってはいないらしい。
それをチラリと流し見て、颯汰からおすすめされたゲームアプリを開く。
落ちてくるブロックを消しながら手持ちのモンターを育て戦わせていくそれは、暇潰しにしていたら結構ハマってしまった。
15分程していると、ピコンっとLEMONの通知が入る。
《土曜日暇っしょ?》
動く画面の上部に、木村からのメッセージが見える。
樹が言ったのだろう。土曜日は花ノ谷高校で女バレが4校合同での練習試合を一日中するらしく、俺達は久々の1日休みがもらえた。
貴重な休みを、何を考えているか分からないが木村に使いたくはない。できればゆっくり昼まで寝ていたい。いや、やっぱり瀬名のために使いたい。
しかし、休みがあっても誘えていない俺は、付き合ってすぐの頃、瀬名に一緒に昼飯をどうかと誘って断られた傷が癒えていないのだろう。
ゲームがキリの良いところでアプリを閉じ、木村とのトーク画面を開く。
“暇じゃない”と打って送信しようとすると、木村から続けてメッセージが入る。
《むぎたんも暇だって》
ポンっと音が鳴り見えた文字に、自分の打っていた文字を消去し《暇》と一文字送った。
____
___
あの後、木村からは《予定空けてもらっているから頑張って誘え⭐︎》と連絡をもらった俺は、木村に感謝の念だけを送りスマホを閉じた。
「結構重いんだけど」
放課後。
樹と日誌を取りに部室に来た俺は、ジャンケン3回勝負で見事2回勝った。
悔しがる樹に部員全員の日誌を持たせ、外に出る。
体育館へと何かを運ぶ生徒の姿に、明日が身体測定日であることを思い出した。
こんな時まで大変だなと他人事のようにチラリと目を向け、職員室まで向かおうとすると、1組の男女が大きな荷物を持って歩いていた。
「瀬名?」
大きな袋に包まれたその荷物で、前が見え辛そうにして歩く見慣れた姿に声をかけると、彼女も俺達に気付いた。
俺達の名前を呼び立ち止まる瀬名に近付く。
気になっている袋の中身を聞くと、心電図の時に使うマットレスを持っているのだと言った。
瀬名の質問に答えながらそのマットレスを持つと、瀬名の隣にいた中川から視線を感じる。
それに気付かないフリをして樹と話している瀬名にどこに持っていくのかと訪ねると、少し先にある第二体育館らしい。
マットレスを持ったまま歩き出だした俺に、瀬名が慌てて着いてくる。
「持つからちょうだい!」と言ってくる瀬名の様子が可愛くてそれを上まで上げると、これまた可愛らしくピョンピョン飛んでくる。
かわいい、もうかわいいと俺が思っていると、樹から揶揄われ、それに中川も頷いた。
「早く持っていけよ。俺ここにいるから」
「了解」
樹は第二体育館まで来ないらしい。
第一体育館の近くの階段に座った樹を置いて第二体育館まで歩く。
「ごめんね」
「なんで瀬名が謝んの。俺が勝手に持ってるだけじゃん」
「そうそう。彼氏に持たせとけば良いんだよ。…な、高杉?」
「うっせ」
「照れんなって」
3人で話しながら歩くと、すぐに目的地に着く。
「ここまでで良いの?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
そう言う瀬名にマットレスを渡すと、体育館の奥の方から瀬名に声がかかった。
それに返事をした瀬名は、俺に声をかける。
別れるのが惜しくて何かを言おうと思ったけれど、何も出てこなかった俺は瀬名に「頑張れよ」と声をかけた。
第二体育館を出た俺は、見た目以上に柔らかい髪の感触が残っている手を見ながら樹の元に行くと、「何があったの?」と聞いてくる。
多分、俺が去った後に第二体育館から響いた声のことだろう。
「知らね」と返事をした俺は、樹と共に顧問がいる職員室まで日誌を持って行った。
職員室を出る直前、「早く帰れよ」と松野から言われる。「不審者は向こうの方まで行っているらしいからな」と言いながら職員室に入っていく松野に、「向こうってどこだよ」と樹が呟いた。
本当になと思い、少し気になった俺はFooooを開く。
「ごめん樹、先帰ってて」
「ん?あぁ別にいいけど。…なんか用事なら手伝うか?」
「いや、俺1人で大丈夫だわ」
「あっそ。じゃあな」
「おう。じゃあな」
樹と別れ、確か瀬名は内履きだったなと思い下駄箱まで歩く。
Fooooに載っていたのは、瀬名の家がある地域で不審者を見かけたと言う内容だった。
大丈夫だとは思うが、心配になったものはどうしようもない。
身体測定の準備がいつまでかかるかは知らないが、そんなに遅くないだろうと俺は待つことに決めた。
瀬名とも話したり連絡をとったりで、関係は順調だと思う。
ただ何かあるとすれば、連絡も会話もほぼ俺からであるということくらいか。それを瀬名に言うつもりはないが、少し…いや、だいぶ気になっている。
「へぇ、不審者ってあそこにある小学校の生徒に声かけたんだってー」
「声かけたっつーか下半身露出だろ」
「うっわ、ないわー」
「きっしょ」
5限目。
不審者が出たとかで先生達は会議中。そして俺達は自習時間になった。
寝ようとする俺の席に早々と来た伊織が颯汰を呼び、近くの席の菊池とその席に遊びに来ていた原がたまに会話に入る。
ガヤガヤとうるさい教室と自分の周りに、貴重な睡眠時間を奪われた俺は意味もなくスマホをいじる。
とりあえずFooooを開くと、菊池が言っていたように不審者の情報が載っていた。
不審者はいまだ逃走中ということで捕まってはいないらしい。
それをチラリと流し見て、颯汰からおすすめされたゲームアプリを開く。
落ちてくるブロックを消しながら手持ちのモンターを育て戦わせていくそれは、暇潰しにしていたら結構ハマってしまった。
15分程していると、ピコンっとLEMONの通知が入る。
《土曜日暇っしょ?》
動く画面の上部に、木村からのメッセージが見える。
樹が言ったのだろう。土曜日は花ノ谷高校で女バレが4校合同での練習試合を一日中するらしく、俺達は久々の1日休みがもらえた。
貴重な休みを、何を考えているか分からないが木村に使いたくはない。できればゆっくり昼まで寝ていたい。いや、やっぱり瀬名のために使いたい。
しかし、休みがあっても誘えていない俺は、付き合ってすぐの頃、瀬名に一緒に昼飯をどうかと誘って断られた傷が癒えていないのだろう。
ゲームがキリの良いところでアプリを閉じ、木村とのトーク画面を開く。
“暇じゃない”と打って送信しようとすると、木村から続けてメッセージが入る。
《むぎたんも暇だって》
ポンっと音が鳴り見えた文字に、自分の打っていた文字を消去し《暇》と一文字送った。
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あの後、木村からは《予定空けてもらっているから頑張って誘え⭐︎》と連絡をもらった俺は、木村に感謝の念だけを送りスマホを閉じた。
「結構重いんだけど」
放課後。
樹と日誌を取りに部室に来た俺は、ジャンケン3回勝負で見事2回勝った。
悔しがる樹に部員全員の日誌を持たせ、外に出る。
体育館へと何かを運ぶ生徒の姿に、明日が身体測定日であることを思い出した。
こんな時まで大変だなと他人事のようにチラリと目を向け、職員室まで向かおうとすると、1組の男女が大きな荷物を持って歩いていた。
「瀬名?」
大きな袋に包まれたその荷物で、前が見え辛そうにして歩く見慣れた姿に声をかけると、彼女も俺達に気付いた。
俺達の名前を呼び立ち止まる瀬名に近付く。
気になっている袋の中身を聞くと、心電図の時に使うマットレスを持っているのだと言った。
瀬名の質問に答えながらそのマットレスを持つと、瀬名の隣にいた中川から視線を感じる。
それに気付かないフリをして樹と話している瀬名にどこに持っていくのかと訪ねると、少し先にある第二体育館らしい。
マットレスを持ったまま歩き出だした俺に、瀬名が慌てて着いてくる。
「持つからちょうだい!」と言ってくる瀬名の様子が可愛くてそれを上まで上げると、これまた可愛らしくピョンピョン飛んでくる。
かわいい、もうかわいいと俺が思っていると、樹から揶揄われ、それに中川も頷いた。
「早く持っていけよ。俺ここにいるから」
「了解」
樹は第二体育館まで来ないらしい。
第一体育館の近くの階段に座った樹を置いて第二体育館まで歩く。
「ごめんね」
「なんで瀬名が謝んの。俺が勝手に持ってるだけじゃん」
「そうそう。彼氏に持たせとけば良いんだよ。…な、高杉?」
「うっせ」
「照れんなって」
3人で話しながら歩くと、すぐに目的地に着く。
「ここまでで良いの?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
そう言う瀬名にマットレスを渡すと、体育館の奥の方から瀬名に声がかかった。
それに返事をした瀬名は、俺に声をかける。
別れるのが惜しくて何かを言おうと思ったけれど、何も出てこなかった俺は瀬名に「頑張れよ」と声をかけた。
第二体育館を出た俺は、見た目以上に柔らかい髪の感触が残っている手を見ながら樹の元に行くと、「何があったの?」と聞いてくる。
多分、俺が去った後に第二体育館から響いた声のことだろう。
「知らね」と返事をした俺は、樹と共に顧問がいる職員室まで日誌を持って行った。
職員室を出る直前、「早く帰れよ」と松野から言われる。「不審者は向こうの方まで行っているらしいからな」と言いながら職員室に入っていく松野に、「向こうってどこだよ」と樹が呟いた。
本当になと思い、少し気になった俺はFooooを開く。
「ごめん樹、先帰ってて」
「ん?あぁ別にいいけど。…なんか用事なら手伝うか?」
「いや、俺1人で大丈夫だわ」
「あっそ。じゃあな」
「おう。じゃあな」
樹と別れ、確か瀬名は内履きだったなと思い下駄箱まで歩く。
Fooooに載っていたのは、瀬名の家がある地域で不審者を見かけたと言う内容だった。
大丈夫だとは思うが、心配になったものはどうしようもない。
身体測定の準備がいつまでかかるかは知らないが、そんなに遅くないだろうと俺は待つことに決めた。
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