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紬said.
13.
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時刻はPM2:10過ぎ。
映画を見終わった私たちは、お腹も空いたため近くの飲食店に入る。
休日だからかこの時間でもまだ人は多い。少し待ってから案内された席に座りメニューを注文した。
私はハンバーグドリアとサラダのセット。高杉君はハンバーグランチのご飯大盛りを頼んだ。
「GLoRiA凄かったねー!」
「マジで再現度ヤバすぎ」
「原作も見たくなっちゃったよー」
「漫画なら持ってるから明後日にでも持ってこようか?」
「見る!」
私達は映画を見終わってからずっとテンションが高い。芽衣ちゃんが言っていた通り本当にヤバかった。何がって?色々だよ!
「お願いします!」と高杉君の提案に食い気味でのる私に、笑いながら「じゃあ二巻ずつ持ってくるな」と言い彼は飲み物を飲んだ。
それから映画の話題で盛り上がること数分。「お待たせいたしましたー」と私達の頼んだ料理がやってくる。
美味しい匂いのする料理を前に、私のお腹が小さくクゥーと鳴いた。
チラリと高杉君を見ると「うまそうだなー」と言って料理を見ている。気付いていないようだ。
「いただきます」と言った言葉が2人重なって、ふふっと笑った。
____
___
ご飯も食べ終わりブラブラと話しながら歩いていると、高杉君が「ちょっとここ寄っていい?」と言ったのでスポーツショップに入る。
スポーツショップにはたまに渉と来るのだが、バスケコーナーには初めてきた。
たくさんのバスケットシューズが並んでいる場所まで来た高杉君はひとつのシューズを手に取る。
「新しいバッシュ欲しいんだよねー」
「ばっしゅ?」
ばっしゅとは何だろう?と高杉君を見ると、「これのこと」と持っていたバスケットシューズを私に渡す。
なるほど、バスケットシューズのことを略してバッシュと言うのかと納得する。そう言えば、あおいがたまにバッシュがどうのとか言っていたな…と今更ながら話を理解した。
「コレと…こっちのバッシュで悩んでてさ…」
そう言って私に手渡したものとは別のバッシュを手に取る。
私が持っているのは黒ベースに白の模様が踵部分から飛沫のように入っているデザイン。高杉君が持っているのはブランドは同じで黒ベースに靴底とかかと、足首の後ろ部分が濃い目の赤になっているデザインだ。
高杉君は後ろにデザインがあるのが好きなのかな…と思いながら2つを見比べる。
どちらもかっこいいもんなーと悩んでいると、ふと視界にあるものが入った。
「これ…」
“シューズお買い上げの方にもれなくプレゼント”と書かれたボードの横に、私が持っているバッシュと同じデザインのキーホルダーがあった。
存在感のあるバッシュが小さくなるとなんともかわいらしい。
「すごいね、どこから見てもそっくり!小人の靴みたいだねー」
「ははっ小人って」
私の感想に肩を震わせ笑う高杉君。
「そんなに笑わなくてもいいじゃん」と持っているバッシュで二の腕を突くと、「ごめんごめん」と笑いながら言う。
いまだ笑い止まない高杉君は「小人の靴欲しいからこっちにするわ」と言い自分が持っていたバッシュを元の場所に戻した。
バッシュのサイズを確認しレジに行く。会計の時に店員さんからキーホルダーを受け取った高杉君はそれを見てまた笑った。
「バカにしているでしょう?」
「ん?してないよ」
「本当に?」
「本当に」
店員さんは私達の会話が分からず首を傾げていたが、特に気にしていないようで「ありがとうございましたー」と見送ってくれた。
その後、「笑ったお詫び」と言ってクレープを奢ってくれた高杉君。そこで今度はチョコといちごのどっちにしようかとメニュー表を前に悩む私に、「俺がどっちか食べるから両方買おうか。そしたらどっちも食べれるだろ?」と大人な対応をしてくれる彼が輝いて見えたのは、きっとクレープの妖精さんのせいだと思う。
______
___
夕方になりそろそろ帰ろうかと私達はバス乗り場まで歩く。高杉君の家はここから15分ほど歩いたところにあるらしい。
街中っ子なんだねと話していると、私が乗るバスのバス停まで着いた。時間を確認するとバスが来るまで後数分。
「ちょうど良いくらいに来たな」と言う高杉君にうんと返事をすると、少し先の信号に引っかかっているバスが見えた。
「あ、バスくる」
「本当だな。…瀬名」
「今日はありがとう」と私の目の前に何かをぶら下げる。
反射的にそれを手に取ると、あの“小人の靴”だった。
「え、コレ…」
もらって良いの?と聞くと、「うん、瀬名に持っていて欲しい」と言われる。
ありがとうと受け取ると、ちょうどバスがきた。私も高杉君に今日はありがとうと手を振りバスに乗る。
後ろ側の席に座った私は、窓から見える高杉君にまたありがとうと口パクをし小人の靴を片手に手を振った。
高杉君も手を振り返してくれて、それはバスが動き出し彼の姿が見えなくなるまで続いた。
______
___
ゴォォと走る音がする。
静かな車内で目を閉じると、先ほどまでの彼の笑顔が目蓋の裏に浮かんだ。
窓に頭を預け横目に通り過ぎていく景色が、いつかの景色と重なる。今は隣にない温もりに寂しさを覚えるが、それはきっと今日が楽しかったからだと手の中にある“小さな贈り物”を握った。
映画を見終わった私たちは、お腹も空いたため近くの飲食店に入る。
休日だからかこの時間でもまだ人は多い。少し待ってから案内された席に座りメニューを注文した。
私はハンバーグドリアとサラダのセット。高杉君はハンバーグランチのご飯大盛りを頼んだ。
「GLoRiA凄かったねー!」
「マジで再現度ヤバすぎ」
「原作も見たくなっちゃったよー」
「漫画なら持ってるから明後日にでも持ってこようか?」
「見る!」
私達は映画を見終わってからずっとテンションが高い。芽衣ちゃんが言っていた通り本当にヤバかった。何がって?色々だよ!
「お願いします!」と高杉君の提案に食い気味でのる私に、笑いながら「じゃあ二巻ずつ持ってくるな」と言い彼は飲み物を飲んだ。
それから映画の話題で盛り上がること数分。「お待たせいたしましたー」と私達の頼んだ料理がやってくる。
美味しい匂いのする料理を前に、私のお腹が小さくクゥーと鳴いた。
チラリと高杉君を見ると「うまそうだなー」と言って料理を見ている。気付いていないようだ。
「いただきます」と言った言葉が2人重なって、ふふっと笑った。
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ご飯も食べ終わりブラブラと話しながら歩いていると、高杉君が「ちょっとここ寄っていい?」と言ったのでスポーツショップに入る。
スポーツショップにはたまに渉と来るのだが、バスケコーナーには初めてきた。
たくさんのバスケットシューズが並んでいる場所まで来た高杉君はひとつのシューズを手に取る。
「新しいバッシュ欲しいんだよねー」
「ばっしゅ?」
ばっしゅとは何だろう?と高杉君を見ると、「これのこと」と持っていたバスケットシューズを私に渡す。
なるほど、バスケットシューズのことを略してバッシュと言うのかと納得する。そう言えば、あおいがたまにバッシュがどうのとか言っていたな…と今更ながら話を理解した。
「コレと…こっちのバッシュで悩んでてさ…」
そう言って私に手渡したものとは別のバッシュを手に取る。
私が持っているのは黒ベースに白の模様が踵部分から飛沫のように入っているデザイン。高杉君が持っているのはブランドは同じで黒ベースに靴底とかかと、足首の後ろ部分が濃い目の赤になっているデザインだ。
高杉君は後ろにデザインがあるのが好きなのかな…と思いながら2つを見比べる。
どちらもかっこいいもんなーと悩んでいると、ふと視界にあるものが入った。
「これ…」
“シューズお買い上げの方にもれなくプレゼント”と書かれたボードの横に、私が持っているバッシュと同じデザインのキーホルダーがあった。
存在感のあるバッシュが小さくなるとなんともかわいらしい。
「すごいね、どこから見てもそっくり!小人の靴みたいだねー」
「ははっ小人って」
私の感想に肩を震わせ笑う高杉君。
「そんなに笑わなくてもいいじゃん」と持っているバッシュで二の腕を突くと、「ごめんごめん」と笑いながら言う。
いまだ笑い止まない高杉君は「小人の靴欲しいからこっちにするわ」と言い自分が持っていたバッシュを元の場所に戻した。
バッシュのサイズを確認しレジに行く。会計の時に店員さんからキーホルダーを受け取った高杉君はそれを見てまた笑った。
「バカにしているでしょう?」
「ん?してないよ」
「本当に?」
「本当に」
店員さんは私達の会話が分からず首を傾げていたが、特に気にしていないようで「ありがとうございましたー」と見送ってくれた。
その後、「笑ったお詫び」と言ってクレープを奢ってくれた高杉君。そこで今度はチョコといちごのどっちにしようかとメニュー表を前に悩む私に、「俺がどっちか食べるから両方買おうか。そしたらどっちも食べれるだろ?」と大人な対応をしてくれる彼が輝いて見えたのは、きっとクレープの妖精さんのせいだと思う。
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夕方になりそろそろ帰ろうかと私達はバス乗り場まで歩く。高杉君の家はここから15分ほど歩いたところにあるらしい。
街中っ子なんだねと話していると、私が乗るバスのバス停まで着いた。時間を確認するとバスが来るまで後数分。
「ちょうど良いくらいに来たな」と言う高杉君にうんと返事をすると、少し先の信号に引っかかっているバスが見えた。
「あ、バスくる」
「本当だな。…瀬名」
「今日はありがとう」と私の目の前に何かをぶら下げる。
反射的にそれを手に取ると、あの“小人の靴”だった。
「え、コレ…」
もらって良いの?と聞くと、「うん、瀬名に持っていて欲しい」と言われる。
ありがとうと受け取ると、ちょうどバスがきた。私も高杉君に今日はありがとうと手を振りバスに乗る。
後ろ側の席に座った私は、窓から見える高杉君にまたありがとうと口パクをし小人の靴を片手に手を振った。
高杉君も手を振り返してくれて、それはバスが動き出し彼の姿が見えなくなるまで続いた。
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ゴォォと走る音がする。
静かな車内で目を閉じると、先ほどまでの彼の笑顔が目蓋の裏に浮かんだ。
窓に頭を預け横目に通り過ぎていく景色が、いつかの景色と重なる。今は隣にない温もりに寂しさを覚えるが、それはきっと今日が楽しかったからだと手の中にある“小さな贈り物”を握った。
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