この想いが、恋だと気付くまで

imu

文字の大きさ
上 下
11 / 50
紬said.

10.

しおりを挟む
「莉子ー!あおいー!どうしようー」
「おい、紬さんや。なぜ私の名前は出て来ないのかい?」
「……。莉子ーあおいー」

「シカトするなー!」と言う咲の声を聞き流しながらお弁当を食べ始めている2人に助けを求める。
ごめん咲、今日は彼氏持ちの2人に用があるのだ。
昨日の夜にLEMONで大まかな事情を知っている2人は、トークでは食いついてきたのに実際に話し出そうとすると「「惚気は良いです」」と話を聞いてくれない。
「惚気てなんていない!」と主張するが、2人は私を無視し「昨日の不審者捕まったねー」と話している。捕まったんだね!それは良かった!

シカトされるのはとても悲しいことだと学んだ私は心の中で咲に謝罪をし、「お願いですから相談に乗ってください」と2人にチョコを差し出す。
「私には⁉︎」といまだに騒いでいる咲にもチョコを渡していると、「それで、相談とは?」と莉子が聞いてくれた。
待ってましたとばかりに明日の“デート”の回避方法を聞いたら「約束すっぽかすなんて最低」とゴミ虫を見るような目で見られたので、「冗談だってー…半分くらい」と返しておいた。

「服は何を着て行ったら良いでしょうか」
「何って…普通で良いんじゃない?」
「そうそう。普通で良いんだよ」
「…その“普通”とは何かを知りたいのです」

莉子は1年、あおいは1年半程続いている彼氏がいる。
芽衣ちゃんにはなんとなく聞きづらくて2人に聞いたのだが、“普通”の連呼で全く参考にならない。
助けを求めるように咲に視線を向けると、「私に分かると思う?」と凄く良い笑顔付きで返答をもらえた。

「んー、そう言われてもねー」
「いつもそんな考えないよ」

「「ねー」」と顔を見合わせて困った顔をする莉子とあおいに、相談する相手間違ったな…と思う。
参考にならないと絶望しご飯の上のふりかけを突いていると、「いつもの服で良いじゃん」とあおいが言った。
いつも何着てたか忘れた…と言えば、「ほらこの間のとかさ」と春休みに撮った写真を見せてくる。そこにはシフォン系のロングスカートにボリュームのある薄手ニットを着ている私が写っていた。

「あーこれ可愛かったよね」
「うん、これで良いじゃん」
「よし、決まりだね」

「はい、解散」と莉子がふざけて言うのを待った待ったと落ち着かせる。
全く一緒はダメでしょうと思ったことを言うと、「てかさ」と咲が唐揚げを食べながら話す。
ゴクンと唐揚げを飲み込んだ咲は、「紬は何でそんなに頑張ってるの?」と私に疑問を投げかけてきた。
「え?」と何を頑張っているのか分からない私が首を傾げたら、3人は顔を見合わせて笑うのだった。

____
___

「あ!むぎたんー!」

莉子と咲が部活のことで用事があるとのことで今日は少し早めに解散する。
あおいと2年の教室がある階まで着くと、2組の教室から出てきた芽衣ちゃんに声を掛けられた。
あおいと別れ、「ちょうど良かった!おいでー」と手招きする芽衣ちゃんの近くに行くと、彼女が仲の良い原さんと菊池さんが「瀬名ちゃんだー」「やっほー」と手を振ってくれる。
椅子に座ってる彼女達に手を振り返し芽衣ちゃんに「どうしたの?」と聞くと、「これあげるー」と以前西園寺君からもらったチョコレートバーのChiBoチボを私に渡す。”期間限定“と書かれた抹茶味の新商品だった。

「え!初めて見た!」
「ふっふーん、驚いた?そこのコンビニに売ってたんだよー」

「むぎたんそのチョコバーシリーズ好きだから買ってきてあげたよー」とドヤ顔をしている芽衣ちゃんに、嬉しい嬉しいと感謝を伝える。
「あれ、でもいつ買ってきたの?」と朝は何も言っていなかった芽衣ちゃんに聞くと、「え?昼休みだよ」と当たり前のように言われた。
校則的には休み時間・お昼時間に校内からは出てはいけないのだけれど…この子達には関係ないようだ。
そっかと返事をして、原さん菊池さんも含めて少しお喋りをする。
「中庭で食べないんだね」と聞くと芽衣ちゃん達3人はいつも教室で食べているらしい。理由は日焼けをしたくないから。なるほど、分かる。

「それにさー、3年にうざいのがいんの」
「3年生?」

自身の綺麗な黒髪の枝毛を探しながら菊池さんが言うと、原さんが「まじウザかったよねー」と頷く。
なんでも、1年生の時に一度中庭でご飯を食べていたらその先輩達に男に媚び売ってるーとか色々言われたらしい。その時は「は?フラれたからってあたらないでくださーい」「かわいそーだからしかたないよー」と言って笑って追い返したとのことだ。すごい。こわい。
「あの人達、高杉とか宮代達狙ってるからねー」「僻みだよね」「化粧濃ゆいブスのくせにね」と真顔で言う彼女達は、きっとこれからも強く生きていけるだろう。

予鈴がなり、「高杉達帰ってくるまでいたら?」という菊池さんの提案に遅れたくないから戻るよと芽衣ちゃんと教室に戻る。
私が席について少ししたら西園寺君も教室に入ってきた。
本鈴ギリギリだなーと思っていると、聞き慣れたチャイムの音が鳴る。
5、6限目は2年生の身体測定の時間。
担任の先生から一通りの説明があり、体操服に着替えたら体育館に向かうように指示が出る。
更衣室がないこの学校では教室内で着替えないといけないため、1・3・5組は女子、2・4・6組は男子と分かれることになっている。
ぞろぞろと1組から男子がいなくなり、代わりに2組から女子達がやってくる。原さんと菊池さんが「さっきぶりー」と西園寺君の机に荷物を置いた。
「ご飯の後に体重測るとかないよね」と芽衣ちゃんが落ち込んでいるのに同意して、私達は着替えて体育館へ向かった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。  後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。  しかし、そこに香奈が現れる。  成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……  オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕! ※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。 「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。 【今後の大まかな流れ】 第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。 第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません! 本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに! また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます! ※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。 少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

【本編完結】隣国が戦を仕掛けてきたので返り討ちにし、人質として王女を娶ることになりました。三国からだったのでそれぞれの王女を貰い受けます。

しろねこ。
恋愛
三国から攻め入られ、四面楚歌の絶体絶命の危機だったけど、何とか戦を終わらせられました。 つきましては和平の為の政略結婚に移ります。 冷酷と呼ばれる第一王子。 脳筋マッチョの第二王子。 要領良しな腹黒第三王子。 選ぶのは三人の難ありな王子様方。 宝石と貴金属が有名なパルス国。 騎士と聖女がいるシェスタ国。 緑が多く農業盛んなセラフィム国。 それぞれの国から王女を貰い受けたいと思います。 戦を仕掛けた事を後悔してもらいましょう。 ご都合主義、ハピエン、両片想い大好きな作者による作品です。 現在10万字以上となっています、私の作品で一番長いです。 基本甘々です。 同名キャラにて、様々な作品を書いています。 作品によりキャラの性格、立場が違いますので、それぞれの差分をお楽しみ下さい。 全員ではないですが、イメージイラストあります。 皆様の心に残るような、そして自分の好みを詰め込んだ甘々な作品を書いていきますので、よろしくお願い致します(*´ω`*) カクヨムさんでも投稿中で、そちらでコンテスト参加している作品となりますm(_ _)m 小説家になろうさんでも掲載中。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

処理中です...