この想いが、恋だと気付くまで

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紬said.

7.

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あれから早いもので一週間が経ち、初めの2日くらいは話したこともない同級生に「付き合いはじめたんだね」「どっちから告白したの?」とか質問されたりしたが、休日も入り数日経つと今ではほぼ何もなくなった。

高杉君とはあの日から少しずつ話すようになったし、連絡もちょこちょことるようになった。
話すと言っても、「おはよう」とか「体育頑張ろうな」とかそんな感じ。体育は2クラスずつ合同であるのだ。隣のクラスである高杉君とは一緒に授業を受けている。…と言っても男女別なのでほぼ関わることはない。
LEMONも似たような感じで、特に恋人らしいことは何も無い。…と思う。
新一年生が仮入部してきてから部活動も結構忙しいらしく、一緒に帰ったり休みの日はデートしたりと言うものも無かった。好きあっていないのだから無いのも当たり前かとは思うが、もし万が一と言うこともあるので高杉君から連絡がある度にドキリとしていた初めの日々が懐かしい。
一度お昼に誘われたのだが、友人と食べるからと言って断った。…それを3人に報告したらなぜか怒られた。解せぬ。

他にあの日から変わったことといえば、芽衣ちゃんと西園寺君とよく話すようになったこと。後、私の呼び方が“瀬名ちゃん”から“むぎたん”にいつの間にかレベルアップしていた。芽衣ちゃん限定だけど。
他にもちょくちょく話したりするクラスメイトはいるが、芽衣ちゃんと2人かたまに西園寺君も含めた3人一緒に休み時間はいることが多いような気がする。
初めの印象は最悪だったけれど、それは私の機嫌も悪かったからそう言う目で見てしまっただけだど今は思うことにしている。…ぼっちがイヤだとかそういうことではない。
なぜ私だったのかは未だ不明ではあるが、聞いてしまったら今のこの生活を壊してしまいそうで怖くて聞けないでいるのが本音である。

「ねぇーむぎたんはどっちが良いと思うー?」
「俺はこっちかな」
「西園寺には聞いてませーん」
「はいはいそうですかー」

「すみませんねー」と言う西園寺君の拗ねた表情にふふっと笑いが溢れた。

5限目のこの時間は、なんと自習時間。学校近くで不審者が出たとかで、先生達は緊急会議中。
“自習”と言うのは私達学生にとっては“自由”時間である。
さすがに教室から出る人たちはいないが、みんな教室内で自由にしている。私もその中の1人だ。

「ねぇむぎたんはどっちー?」
「んー芽衣ちゃんは大人っぽい雰囲気だから、淡い色よりも赤とか青のハッキリした色の方が似合う気がするな」
「だよねー、私もそう思うわ」

「やっぱ黄色はないよねー」とさっき西園寺くんが指差した色を芽衣ちゃんが笑えば、西園寺くんは「うっせ」と笑った。
今は芽衣ちゃんが今週のデートで着る洋服を決めている所である。3つ年上の彼氏さんとは、付き合って2年になると昨日教えてもらったばかりだ。
スマホに映る短めのタイトなスカートはカラーが5色あり、どの色もかわいい。スタイルの良い芽衣ちゃんにすごく似合いそうだ。

「よしっ、決めた!落ち着いた大人な雰囲気にしたいから青にするー」

ササッと注文を済ませた芽衣ちゃん。
今日頼んで明日には届くらしい。最近の通販ってすごいね。

「むぎたんありがとうねー」
「私は何もしてないよ」
「ううん、そんなことないよー」と笑顔を向けられる。「あれ、俺には?」なんて言っている西園寺君に「はぁ?」と芽衣ちゃんが返す。
ここ最近見慣れた光景がとても楽しい。この瞬間がもう少し続いて欲しいと思う私は、きっとこれから先も真実を聞けないでいるのだろう。

____
___

「そう言えばさー、むぎたんはデートとかしないのー?」

漫才のような2人のやりとりを見たり、芽衣ちゃんのバイト先の話や西園寺君の部活の話を聞いたりしていると、唐突に芽衣ちゃんから質問がとんでくる。

「え?した方がいいのかな?」

私がそう答えたら「だって付き合ってたらしたくない?デート」と当たり前のように言われる。
…あ、そっか。2人は高杉君側の人で彼側からしか知らないから、私が高杉君のこと好きで付き合っていると思っているんだ。…なんかごめんね。

「朝陽は何も言ってこないのか?」
「うん…高杉君も忙しいだろうし、私に使う時間なんてないよー」

ヘラっと笑って言うと、2人は「はぁ…」とため息をつく。
どうしたのかと首を傾げると、芽衣ちゃんが私の肩をガシッと掴んだ。
いきなりのことに驚く私は、その事よりも彼女の瞳が爛々としているように見えるのが気になる。

「むぎたん。私たちに任せて!」
「え?」
「そうだな。今週の土曜日は空いてるか?」
「うん、予定は何もないけど…」
「じゃあ空けといてくれ」
「え?」
「決まったら後で連絡するから…ね?」
「う、うん」

西園寺君の淡々とした様子と芽衣ちゃんの迫力によく分からず頷いてしまった。
だが、この時2人の勢いに負けず良く考えていればよかったと後悔するのは意外とすぐのことである。
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