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第1章
第6話 大切な存在
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「お兄ちゃん?なにやってるの」
「いや、特に…。ただなんとなくぶらぶらしていただけだ」
ゆきの側にはスーツを来た見たことの無い女性がいた。
「ゆき、その人は……?」
「この人は、佐藤紗雪さん。私の「マネージャー」だよっ」
「マネージャー…?」
雑誌コーナーを鋭い目で観察していたマネージャーは、オレの存在に気付いた。
「どうしたの、ゆき…?ん?あなたは…」
「どうも。「月城彼方」です」
「彼方?…そうか、君があの。ゆきのお兄さんね」
「知っているんですかオレのこと?」
「ええ。ゆきがよく話しているからね、君のこと」
「ねぇ紗雪さん」
ゆきは、マネージャーに何かを話している。
そして…
「ふうん。そうだね、せっかくだからキミも一緒に見ていく?私たちの事務所を」
こうして、オレは。ゆきの所属するという事務所を見学することになった。
「春野花」の一角に位置する大通りにある。3回たての小さなビル。
これが、ゆき達の事務所。
看板には「翼プロダクション」と書かれていた。
「ここが、私たちの事務所よ」
マネージャーに案内されてオレは事務所に入る。
中はとても簡素なものだった
奥に事務机が1つあった。そして入口付近には普通の家庭で使うようなテーブル1つと椅子が2つある。おそらく客をもてなすためのものだろう。そして、それ以外には特になにも置いていなかった。
「なんか…、思ったより閑散としてますね」
「まぁね。ここの社員は私しかいないから」
「え?」
「私がゆきのマネージャーであり、事務所の社長も兼任しているのよ。ちなみに所属アイドルも、ゆき1人よ」
「まじでますか…」
意外な事実に驚くオレにゆきが話す
「紗雪さんはね、凄いんだよ。事務所経営しながら、私の仕事の管理も全部やってくれて。それに、私の歌う曲も紗雪さんが作っているんだよ」
「え、曲も作ってるんすか?」
「ええ、作曲は私で、作詞がゆき。ゆきの曲は全てそのスタイルで作っているわ。生憎他のとこに頼むお金もないし、それに今のスタイルがゆきに合ってると思うしね」
「はぇ~」
事務所管理に、社長にアイドルの管理に、作曲って…、1人でこなせる仕事なのだろうか…。
「お兄ちゃん、ゆっくりしていってね」
とゆきにいわれ。オレとゆきは椅子に座った。
「そういえば、ゆきは、なにしにここに来たんだ」
「私は、今後のスケジュールのチェックだよ。毎週1回は1週間のスケジュールを確認しにここへ来るの」
「なるほど」
ゆきと話ながら、マネージャーの仕事を眺める。
マネージャーは凄い勢いで、手を使わずに、書類を目の前にポンポンと出したり消したりしていた…。
「それって、「能力」ですか」
「ええ、よく分かったわね。物を瞬間的に移動したり、もの同士を入れ替えたり出来る「瞬間移動(テレポーテーション)。それが私の能力よ。これが無ければ私の仕事は成り立たないといっても過言ではないくらいなのよ」
…なるほど。瞬間移動の能力があるから、事務所の業務をしつつも、他の事まで手が回せるのか。
…しかし、瞬間移動移動出来るとはいえ、書類の場所や種類を把握してないと頭がこんがらがりそうだ…。そこはマネージャーの頭の良さでカバーしているのだろう。
「でも、瞬間移動って凄く便利そうですね。人を遠くに飛ばしたりとかも出来るんですか」
「いえ。残念ながらそれは無理よ。軽いものならほぼ無制限に使い続けられるけど、人間なら、近くに飛ばすだけで精一杯ね。しかもそらをすれば5分ほど能力が使えなくなるインターバルが発生してしまうの 。もちろん人同士を入れ替えるなんてのは不可能ね」
「そうなんすか」
「能力は、便利ではあるけど、「万能」ではないのよね、用は使いようよ。……でも人を遠くに飛ばせれば、ゆきを簡単に遠くでイベントさせたりできるのにねえ」
「ははっ」
それはそれで帰りはどうするのだろうという気はするが。
そんなことを考えているとマネージャーがゆきに言った。
「ゆき…、そろそろ時間じゃあない?」
「あっそうだね。それじゃあ行ってくるね紗雪さん!お兄ちゃん!」
ゆきは事務所を出ていった。
「そういえば今日はゆきのコンサートの日でしたね」
「それもあるけど、今日はもう1つ大事なイベントがあるのよ」
「え」
「フフっ、せっかくだし、あなたも見ていく?」
……
「みんなー!今日も来てくれて、ありがとー!!」
わああああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!
今日も、ゆきのコンサートが終わった。
相変わらず凄い盛り上がりだ。
コンサートも終わりひとがはけていくかと思われたが。いつもと違い、人々は会場のステージの方に向かって並び出した。
「……?」
謎の行列に戸惑っていると、会場の袖からマネージャーが右手をこっちこっち、と招いてオレを呼んでいた。
オレはマネージャーの元へ向かった。
「……いったい、何が始まるんです」
「トーク会よ」
「トーク会?なんですかそれ」
「ゆきのアイデアで生まれたイベントよ。ファンのみんなをもっと近くに感じたいと言う、ゆきの願いからね。まぁ見てればわかるわ」
ステージ袖から、ゆきのトーク会を覗く。
そこでは、ゆきはファンの人々と、楽しそうな話をしていた…。
「尾崎さんこんにちわ。最近お仕事どう?」
「こんにちは。いやー、それがねぇ、今までの頑張りが認められたのか。なんと!昇進がきまったのだよお!」
「わあー!!凄い!!良かったね!!おめでとう!!」
……
「檜山さんこんにちは。今日はどうしたの?」
「こんちゃーゆきちゃん。それがさぁ。ねぇ聞いてよお最近さあウチの上司がホントウザくてさあ…」
「あはは……それは大変でしたね。…そうだ!その上司さんも私のコンサートに連れてきてはどうでしょう?」
「あぁ、それいーかも!?…あんがとね、ゆきちゃん。ゆきちゃんと話してると、なんかスッキリするわね、いつもありがとう」
……
「だいちくん、うみちゃん。こんにちわ。くろこは元気?」
「うん、くろこも、ゆきちゃんのコンサート見たいって言ってたよ」
「そっかぁ、どうにかして見せてあげたいね。うみちゃんは最近どう?」
「うん…。新しい学校にも慣れてきたよ。新しい友達もできてね、今度一緒にコンサート行くって約束したの」
「そっか…、良かったねうみちゃん。友達と来るの楽しみにしてるね!」
……
色々な人々とゆきは話している。
学生や、サラリーマンとおもしきスーツの人やolらしき人まで、男女問わず色々いる。中には小さい子供から老人までいた。
「…こうしてみると。色々な人がいるのな、ゆきのファンは…」
ゆきのファンは皆、ゆきと友人のように軽い感じで話している。
そして。なにより凄いのはゆきだ。
ゆきはファンの1人1人のことをちゃんと覚えるのか、誰が来ても、すぐ様その人に、適応した話題をだし。
誰もが話しやすいようにしてスムーズに楽しく話せるようにしてるんだ。
これは生半可なことでできるものじゃあないぞ…。
1人1人の話す時間は1分ほどとそこまで長くはないが。
ゆきと話した人々は、必ず、皆笑顔で帰っていく。
それだけ、アイドルと話せる時間というのは幸せなことなのだろうか。
いつもゆきと一緒にいるオレにはよく分からないが…。
「ねむちゃん、こんにちわ。最近勉強はどう?」
「こんにちは~。そりゃあもうバッチリぐーよ!ゆきちゃんのコンサート見てると勉強やる気がグングン湧いてきちゃうんだよー。この前なんて数学テストで80店取っちゃったんだから!」
……ってあいつは、眠音ねむ!あいつまで来ていたのか
…ってか、お前は学校でいつでも話せるだろうがっ!
…………
3時間ほどして、イベントは終了した。
マネージャーはこの後も少しやることがあるらしく事務所に戻って行った。
外に出ると、空は既に真っ暗だった。
「…あいつ。いつもあんな事やっていたのか……。そりゃぁいつも家にいないわけだな」
オレは、妹のことはわかっているようでいて。なにもわかっていなかったのかもしれない。
などと考えていると後ろから、声が聞こえた
「お兄ちゃーーん」
「ゆきか、お疲れ様」
「えへへ、ありがと。今日はトーク会の事も見てたんだね」
「あぁ、マネージャーに誘われてな。……それにしても、ゆきは。ファンの事みんな1人1人ちゃんと覚えているのか」
「うん。覚えているけど、それがどうかしたの?」
ゆきは、それはさも当然だというような顔ですんなりと答えた。
「いや、どうしたって…凄くないか?」
「なんで?学校の先生だって生徒の事はみんな覚えているでしょ?」
いや、そういう問題か…?どうみても200人以上はいたぞ…。
「お兄ちゃんは昔から物覚え悪い物ね。でも大丈夫。お兄ちゃんだって頑張ればきっとできるよ!みんな優しいもん!」
いや、オレが覚える必要はないのだが…
うーむ。これも才能ってやつなのだろうか… 。
「…なんというか、私にとって、皆は。友達というか……家族みたいな。それくらい近いような、大切な存在なの。だからね、皆にも。ステージから歌を届けるだけじゃなくて。もっと私を近くに感じてほしいの」
夜空を見上げながら、ゆきはそう呟いやいた。
「……家族、か」
「あ。も、もちろん!お兄ちゃんだって。私の大切な「家族」だよっ!お兄ちゃんは誰よりも大切なんだよっ!」
何故かゆきは、オレの腕にしがみついてそう言ったのだった。
「ははっ。わかっているよ」
「いや、特に…。ただなんとなくぶらぶらしていただけだ」
ゆきの側にはスーツを来た見たことの無い女性がいた。
「ゆき、その人は……?」
「この人は、佐藤紗雪さん。私の「マネージャー」だよっ」
「マネージャー…?」
雑誌コーナーを鋭い目で観察していたマネージャーは、オレの存在に気付いた。
「どうしたの、ゆき…?ん?あなたは…」
「どうも。「月城彼方」です」
「彼方?…そうか、君があの。ゆきのお兄さんね」
「知っているんですかオレのこと?」
「ええ。ゆきがよく話しているからね、君のこと」
「ねぇ紗雪さん」
ゆきは、マネージャーに何かを話している。
そして…
「ふうん。そうだね、せっかくだからキミも一緒に見ていく?私たちの事務所を」
こうして、オレは。ゆきの所属するという事務所を見学することになった。
「春野花」の一角に位置する大通りにある。3回たての小さなビル。
これが、ゆき達の事務所。
看板には「翼プロダクション」と書かれていた。
「ここが、私たちの事務所よ」
マネージャーに案内されてオレは事務所に入る。
中はとても簡素なものだった
奥に事務机が1つあった。そして入口付近には普通の家庭で使うようなテーブル1つと椅子が2つある。おそらく客をもてなすためのものだろう。そして、それ以外には特になにも置いていなかった。
「なんか…、思ったより閑散としてますね」
「まぁね。ここの社員は私しかいないから」
「え?」
「私がゆきのマネージャーであり、事務所の社長も兼任しているのよ。ちなみに所属アイドルも、ゆき1人よ」
「まじでますか…」
意外な事実に驚くオレにゆきが話す
「紗雪さんはね、凄いんだよ。事務所経営しながら、私の仕事の管理も全部やってくれて。それに、私の歌う曲も紗雪さんが作っているんだよ」
「え、曲も作ってるんすか?」
「ええ、作曲は私で、作詞がゆき。ゆきの曲は全てそのスタイルで作っているわ。生憎他のとこに頼むお金もないし、それに今のスタイルがゆきに合ってると思うしね」
「はぇ~」
事務所管理に、社長にアイドルの管理に、作曲って…、1人でこなせる仕事なのだろうか…。
「お兄ちゃん、ゆっくりしていってね」
とゆきにいわれ。オレとゆきは椅子に座った。
「そういえば、ゆきは、なにしにここに来たんだ」
「私は、今後のスケジュールのチェックだよ。毎週1回は1週間のスケジュールを確認しにここへ来るの」
「なるほど」
ゆきと話ながら、マネージャーの仕事を眺める。
マネージャーは凄い勢いで、手を使わずに、書類を目の前にポンポンと出したり消したりしていた…。
「それって、「能力」ですか」
「ええ、よく分かったわね。物を瞬間的に移動したり、もの同士を入れ替えたり出来る「瞬間移動(テレポーテーション)。それが私の能力よ。これが無ければ私の仕事は成り立たないといっても過言ではないくらいなのよ」
…なるほど。瞬間移動の能力があるから、事務所の業務をしつつも、他の事まで手が回せるのか。
…しかし、瞬間移動移動出来るとはいえ、書類の場所や種類を把握してないと頭がこんがらがりそうだ…。そこはマネージャーの頭の良さでカバーしているのだろう。
「でも、瞬間移動って凄く便利そうですね。人を遠くに飛ばしたりとかも出来るんですか」
「いえ。残念ながらそれは無理よ。軽いものならほぼ無制限に使い続けられるけど、人間なら、近くに飛ばすだけで精一杯ね。しかもそらをすれば5分ほど能力が使えなくなるインターバルが発生してしまうの 。もちろん人同士を入れ替えるなんてのは不可能ね」
「そうなんすか」
「能力は、便利ではあるけど、「万能」ではないのよね、用は使いようよ。……でも人を遠くに飛ばせれば、ゆきを簡単に遠くでイベントさせたりできるのにねえ」
「ははっ」
それはそれで帰りはどうするのだろうという気はするが。
そんなことを考えているとマネージャーがゆきに言った。
「ゆき…、そろそろ時間じゃあない?」
「あっそうだね。それじゃあ行ってくるね紗雪さん!お兄ちゃん!」
ゆきは事務所を出ていった。
「そういえば今日はゆきのコンサートの日でしたね」
「それもあるけど、今日はもう1つ大事なイベントがあるのよ」
「え」
「フフっ、せっかくだし、あなたも見ていく?」
……
「みんなー!今日も来てくれて、ありがとー!!」
わああああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!
今日も、ゆきのコンサートが終わった。
相変わらず凄い盛り上がりだ。
コンサートも終わりひとがはけていくかと思われたが。いつもと違い、人々は会場のステージの方に向かって並び出した。
「……?」
謎の行列に戸惑っていると、会場の袖からマネージャーが右手をこっちこっち、と招いてオレを呼んでいた。
オレはマネージャーの元へ向かった。
「……いったい、何が始まるんです」
「トーク会よ」
「トーク会?なんですかそれ」
「ゆきのアイデアで生まれたイベントよ。ファンのみんなをもっと近くに感じたいと言う、ゆきの願いからね。まぁ見てればわかるわ」
ステージ袖から、ゆきのトーク会を覗く。
そこでは、ゆきはファンの人々と、楽しそうな話をしていた…。
「尾崎さんこんにちわ。最近お仕事どう?」
「こんにちは。いやー、それがねぇ、今までの頑張りが認められたのか。なんと!昇進がきまったのだよお!」
「わあー!!凄い!!良かったね!!おめでとう!!」
……
「檜山さんこんにちは。今日はどうしたの?」
「こんちゃーゆきちゃん。それがさぁ。ねぇ聞いてよお最近さあウチの上司がホントウザくてさあ…」
「あはは……それは大変でしたね。…そうだ!その上司さんも私のコンサートに連れてきてはどうでしょう?」
「あぁ、それいーかも!?…あんがとね、ゆきちゃん。ゆきちゃんと話してると、なんかスッキリするわね、いつもありがとう」
……
「だいちくん、うみちゃん。こんにちわ。くろこは元気?」
「うん、くろこも、ゆきちゃんのコンサート見たいって言ってたよ」
「そっかぁ、どうにかして見せてあげたいね。うみちゃんは最近どう?」
「うん…。新しい学校にも慣れてきたよ。新しい友達もできてね、今度一緒にコンサート行くって約束したの」
「そっか…、良かったねうみちゃん。友達と来るの楽しみにしてるね!」
……
色々な人々とゆきは話している。
学生や、サラリーマンとおもしきスーツの人やolらしき人まで、男女問わず色々いる。中には小さい子供から老人までいた。
「…こうしてみると。色々な人がいるのな、ゆきのファンは…」
ゆきのファンは皆、ゆきと友人のように軽い感じで話している。
そして。なにより凄いのはゆきだ。
ゆきはファンの1人1人のことをちゃんと覚えるのか、誰が来ても、すぐ様その人に、適応した話題をだし。
誰もが話しやすいようにしてスムーズに楽しく話せるようにしてるんだ。
これは生半可なことでできるものじゃあないぞ…。
1人1人の話す時間は1分ほどとそこまで長くはないが。
ゆきと話した人々は、必ず、皆笑顔で帰っていく。
それだけ、アイドルと話せる時間というのは幸せなことなのだろうか。
いつもゆきと一緒にいるオレにはよく分からないが…。
「ねむちゃん、こんにちわ。最近勉強はどう?」
「こんにちは~。そりゃあもうバッチリぐーよ!ゆきちゃんのコンサート見てると勉強やる気がグングン湧いてきちゃうんだよー。この前なんて数学テストで80店取っちゃったんだから!」
……ってあいつは、眠音ねむ!あいつまで来ていたのか
…ってか、お前は学校でいつでも話せるだろうがっ!
…………
3時間ほどして、イベントは終了した。
マネージャーはこの後も少しやることがあるらしく事務所に戻って行った。
外に出ると、空は既に真っ暗だった。
「…あいつ。いつもあんな事やっていたのか……。そりゃぁいつも家にいないわけだな」
オレは、妹のことはわかっているようでいて。なにもわかっていなかったのかもしれない。
などと考えていると後ろから、声が聞こえた
「お兄ちゃーーん」
「ゆきか、お疲れ様」
「えへへ、ありがと。今日はトーク会の事も見てたんだね」
「あぁ、マネージャーに誘われてな。……それにしても、ゆきは。ファンの事みんな1人1人ちゃんと覚えているのか」
「うん。覚えているけど、それがどうかしたの?」
ゆきは、それはさも当然だというような顔ですんなりと答えた。
「いや、どうしたって…凄くないか?」
「なんで?学校の先生だって生徒の事はみんな覚えているでしょ?」
いや、そういう問題か…?どうみても200人以上はいたぞ…。
「お兄ちゃんは昔から物覚え悪い物ね。でも大丈夫。お兄ちゃんだって頑張ればきっとできるよ!みんな優しいもん!」
いや、オレが覚える必要はないのだが…
うーむ。これも才能ってやつなのだろうか… 。
「…なんというか、私にとって、皆は。友達というか……家族みたいな。それくらい近いような、大切な存在なの。だからね、皆にも。ステージから歌を届けるだけじゃなくて。もっと私を近くに感じてほしいの」
夜空を見上げながら、ゆきはそう呟いやいた。
「……家族、か」
「あ。も、もちろん!お兄ちゃんだって。私の大切な「家族」だよっ!お兄ちゃんは誰よりも大切なんだよっ!」
何故かゆきは、オレの腕にしがみついてそう言ったのだった。
「ははっ。わかっているよ」
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