15 / 30
気になる金の動き
しおりを挟む
指定された喫茶店は、新宿の裏道に入ったこじんまりしたお店だった。
そこには個室というわけではないけれど、きっちり区切られた席が2、3ありそこならばあまり周囲を気にせず話ができそうだ。
時臣は先にそこへ通され、待ち合わせの人が来たらカフェオレを持ってきてくれるように頼んでおいた。
「遅くなりました」
店員に案内されて、芹奈が前の席に着く。
「いえいえ、こちらが少々早めに来ただけですから。注文も勝手ではありますが、カフェオレを頼んでおきましたので」
「あら、私の好みまでご存知でしたか?」
歳は調べによると29歳。二度目だが最初の印象よりはおとなしめに見える。中々の美人で雰囲気もいい女っぷりだ。
「え、そうだったんですか?いや偶然ですよ」
本当に偶然だったので、まあ掴みはOKと内心で拳を握り飲み物が来るまでは他愛もない話をした。
「お待たせいたしました」
カフェオレが届き、これで話ができると芹奈も踏んだのかバッグの中から綺麗に縁がカットされた封筒を取り出し前に置く。
「これは?」
見るからに、某都市銀行の封筒で前には『親展』の文字。
「近藤智史の部屋には、郵便物も貯まるので週に3回ほど通っているんですが、8月に行った時にこれがポストに入っていて…」
芹奈は言い淀み、時臣は中を見てもいいかと確認をして封筒を手に取った。
「お金関係にはきっちりした人ですので、こう言った督促状のようなものがきたことはなく、私もびっくりしてしまい中を確認しましたところ、明細に…」
近藤はこの口座を支払い専用にしていたらしく、請求に合わせてどこかから入金をしていたのだろう。でもなければ未払いはありえない。
開けてみて明細を確認して、時臣はーなるほどーと少々口を歪める。
「グランドホテルの請求が来ていますね。しかも…結構回数が多い…」
「はい…私は一緒には…」
このカードの請求は先々月分が請求されることとなっており、8月に来たということは、6月の請求ということだ。
「女性関係をお疑い…ということですか…」
また女か。時臣は妙な符号に注意を払う。
「そんな感じも素振りもみえなかったのですけど…こういう形で出てくると…」
「まあ、疑わざるを得ない…ですよね…」
近藤にも女の影か…
「それと、その明細に記してある、次回請求の明細書に明記されている7月半ばの260万円の引き出し…シオツカファイナンスというところですけれど、これは…俗にいう闇金というところなのでしょうか…だとしたらなぜあの人がそんな所に…」
時臣の頭の中で何かが思い当たる。
少し前。飛田との話で…影山が250万もの大金を一括で返済したと聞いた気がする…260万と金額は違うが…その時飛田が持ってきたのは確か近藤と影山の2ショットだ。頭でピースが動き出した。
「ええ、しおづかファイナンスはまあ…所謂やくざ関係の金融業ですね…」
芹奈はため息をついて肩を落とす。ーなぜそんなところと…ーと不安そうな顔をみせて、落ち着くためかカフェオレを口にする。
確か飛田が、兄貴分の汐塚がやっている所だと言っていたはずだから間違いはないはずだ。
「この男に見覚えはありますか?」
時臣は続けて影山の写真を芹奈に見せた。芹奈はじっと写真を見て
「少し…近藤に顔だちが近いですよね…でも知らない方です。この方は?」
「多分ローカルニュースになったと思いますが、国上市で先月中旬頃に見つかった遺体のご本人です」
影山が近藤の社員証を持っていたというのは黙っておくことにする。
「あ、知ってます。あの事件の…でもこの方が近藤となにか?」
「今おっしゃられたように、顔だちが少々似ているので、最初近藤さんと間違われていたんですよ。誤解は解けましたけれど。なので何かご存知だったらと思いましてお聞きしただけです。少しでも見つける手掛かりになればと思いまして」
そう苦笑して、時臣もカフェオレを一口口にした。
「色々大変なんですね…智史も本当何をしているのか。部屋にも戻らない、銀行関係の支払いも滞っているということは、遠くにいるのか…それとも…」
芹奈は事件で亡くなったという影山の写真をじっとみて、悲しい顔をする。
「まだそうと決まった訳でも無いですから。こういう言い方は大変失礼かと思いますが…女性のところにいて、あなたに顔向けできなくなっている…可能性もない訳ではないですし…そう言うところからも我々が攻めてみますので、お任せください。この銀行の明細はいい情報でした。ありがとうございます。できるだけ早くお知らせができるようにいたしますので、もう少々お待ちください」
「よろしくお願いいたします」
頭を下げる芹奈に、こちらも不甲斐なさを頭を下げることでしか表せずに申し訳ないと言って、銀行の明細書をスマホで取らせてもらい、その日は芹奈と別れた。
時臣は喫茶店を出た足ですぐに飛田に連絡を入れる。
「俺だけど今大丈夫か?」
『おう、大丈夫だ。なんだ?』
時臣は立ち止まって壁際によりタバコを咥えたが、通りがかった年配のご婦人2人にじっと見つめられて、咥えるにとどめた。
もう少しでパズルがカチッとはまりそうなもどかしさがある。骨を鳴らさないと痛い関節のような、数ミリずれたらはまりそうな感覚がもどかしい。
「お前がこの間言ってた『しおづかファイナンス』顔つないでくれないかな。ちょっと聞きたいことができた。できたら影山を担当って言うのがあったらそいつと話したい」
『ああ、いいぜ。従業員の方な、わかった。いつが良いんだ?』
「できるだけ早くがいいんだが。俺の精神衛生の為にも」
「なんだそりゃ、わかった連絡とってみるわ。お前の頭がイっちまうのも困るからな』
そう笑い声が返ってきて、笑い事じゃないんだよ、などと思いながらーんじゃーと電話を切る。
咥えていたタバコをとりあえず箱に戻し、5時ちょっと過ぎの新宿の大通りへ出た。
こんな時は酒だ。思考をまとめるべくゴールデン街に足を向け、唯希に今日は待たなくていいから時間で帰れと連絡を入れた。
そこには個室というわけではないけれど、きっちり区切られた席が2、3ありそこならばあまり周囲を気にせず話ができそうだ。
時臣は先にそこへ通され、待ち合わせの人が来たらカフェオレを持ってきてくれるように頼んでおいた。
「遅くなりました」
店員に案内されて、芹奈が前の席に着く。
「いえいえ、こちらが少々早めに来ただけですから。注文も勝手ではありますが、カフェオレを頼んでおきましたので」
「あら、私の好みまでご存知でしたか?」
歳は調べによると29歳。二度目だが最初の印象よりはおとなしめに見える。中々の美人で雰囲気もいい女っぷりだ。
「え、そうだったんですか?いや偶然ですよ」
本当に偶然だったので、まあ掴みはOKと内心で拳を握り飲み物が来るまでは他愛もない話をした。
「お待たせいたしました」
カフェオレが届き、これで話ができると芹奈も踏んだのかバッグの中から綺麗に縁がカットされた封筒を取り出し前に置く。
「これは?」
見るからに、某都市銀行の封筒で前には『親展』の文字。
「近藤智史の部屋には、郵便物も貯まるので週に3回ほど通っているんですが、8月に行った時にこれがポストに入っていて…」
芹奈は言い淀み、時臣は中を見てもいいかと確認をして封筒を手に取った。
「お金関係にはきっちりした人ですので、こう言った督促状のようなものがきたことはなく、私もびっくりしてしまい中を確認しましたところ、明細に…」
近藤はこの口座を支払い専用にしていたらしく、請求に合わせてどこかから入金をしていたのだろう。でもなければ未払いはありえない。
開けてみて明細を確認して、時臣はーなるほどーと少々口を歪める。
「グランドホテルの請求が来ていますね。しかも…結構回数が多い…」
「はい…私は一緒には…」
このカードの請求は先々月分が請求されることとなっており、8月に来たということは、6月の請求ということだ。
「女性関係をお疑い…ということですか…」
また女か。時臣は妙な符号に注意を払う。
「そんな感じも素振りもみえなかったのですけど…こういう形で出てくると…」
「まあ、疑わざるを得ない…ですよね…」
近藤にも女の影か…
「それと、その明細に記してある、次回請求の明細書に明記されている7月半ばの260万円の引き出し…シオツカファイナンスというところですけれど、これは…俗にいう闇金というところなのでしょうか…だとしたらなぜあの人がそんな所に…」
時臣の頭の中で何かが思い当たる。
少し前。飛田との話で…影山が250万もの大金を一括で返済したと聞いた気がする…260万と金額は違うが…その時飛田が持ってきたのは確か近藤と影山の2ショットだ。頭でピースが動き出した。
「ええ、しおづかファイナンスはまあ…所謂やくざ関係の金融業ですね…」
芹奈はため息をついて肩を落とす。ーなぜそんなところと…ーと不安そうな顔をみせて、落ち着くためかカフェオレを口にする。
確か飛田が、兄貴分の汐塚がやっている所だと言っていたはずだから間違いはないはずだ。
「この男に見覚えはありますか?」
時臣は続けて影山の写真を芹奈に見せた。芹奈はじっと写真を見て
「少し…近藤に顔だちが近いですよね…でも知らない方です。この方は?」
「多分ローカルニュースになったと思いますが、国上市で先月中旬頃に見つかった遺体のご本人です」
影山が近藤の社員証を持っていたというのは黙っておくことにする。
「あ、知ってます。あの事件の…でもこの方が近藤となにか?」
「今おっしゃられたように、顔だちが少々似ているので、最初近藤さんと間違われていたんですよ。誤解は解けましたけれど。なので何かご存知だったらと思いましてお聞きしただけです。少しでも見つける手掛かりになればと思いまして」
そう苦笑して、時臣もカフェオレを一口口にした。
「色々大変なんですね…智史も本当何をしているのか。部屋にも戻らない、銀行関係の支払いも滞っているということは、遠くにいるのか…それとも…」
芹奈は事件で亡くなったという影山の写真をじっとみて、悲しい顔をする。
「まだそうと決まった訳でも無いですから。こういう言い方は大変失礼かと思いますが…女性のところにいて、あなたに顔向けできなくなっている…可能性もない訳ではないですし…そう言うところからも我々が攻めてみますので、お任せください。この銀行の明細はいい情報でした。ありがとうございます。できるだけ早くお知らせができるようにいたしますので、もう少々お待ちください」
「よろしくお願いいたします」
頭を下げる芹奈に、こちらも不甲斐なさを頭を下げることでしか表せずに申し訳ないと言って、銀行の明細書をスマホで取らせてもらい、その日は芹奈と別れた。
時臣は喫茶店を出た足ですぐに飛田に連絡を入れる。
「俺だけど今大丈夫か?」
『おう、大丈夫だ。なんだ?』
時臣は立ち止まって壁際によりタバコを咥えたが、通りがかった年配のご婦人2人にじっと見つめられて、咥えるにとどめた。
もう少しでパズルがカチッとはまりそうなもどかしさがある。骨を鳴らさないと痛い関節のような、数ミリずれたらはまりそうな感覚がもどかしい。
「お前がこの間言ってた『しおづかファイナンス』顔つないでくれないかな。ちょっと聞きたいことができた。できたら影山を担当って言うのがあったらそいつと話したい」
『ああ、いいぜ。従業員の方な、わかった。いつが良いんだ?』
「できるだけ早くがいいんだが。俺の精神衛生の為にも」
「なんだそりゃ、わかった連絡とってみるわ。お前の頭がイっちまうのも困るからな』
そう笑い声が返ってきて、笑い事じゃないんだよ、などと思いながらーんじゃーと電話を切る。
咥えていたタバコをとりあえず箱に戻し、5時ちょっと過ぎの新宿の大通りへ出た。
こんな時は酒だ。思考をまとめるべくゴールデン街に足を向け、唯希に今日は待たなくていいから時間で帰れと連絡を入れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヘリオポリスー九柱の神々ー
soltydog369
ミステリー
古代エジプト
名君オシリスが治めるその国は長らく平和な日々が続いていた——。
しかし「ある事件」によってその均衡は突如崩れた。
突如奪われた王の命。
取り残された兄弟は父の無念を晴らすべく熾烈な争いに身を投じていく。
それぞれの思いが交錯する中、2人が選ぶ未来とは——。
バトル×ミステリー
新感覚叙事詩、2人の復讐劇が幕を開ける。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる