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第4話
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「おい、走るなよ酒が回るぞ」
慌てて追いかけて、ユージは登り切った所で蒼真を捕まえる。
「どの部屋だ?」
蒼真とてそこまでは酔っていない。大丈夫、と支えを外し、部屋へ向かう。
1番奥の部屋の前まで来て、蒼真が部屋を開けようとした瞬間にユージが蒼真を引き寄せた。
「なにすっ んっ…」
抵抗する間も無く蒼真は、後一歩で部屋という所で唇など奪われてしまった。
「ん…んんっ」
両手は壁に押し付けられているのでユージを押し返すこともできない。
何度か角度を変える長いキスを、このくらい仕方ないかと味わおうかなと思った瞬間
「蒼真?」
部屋のドアが開いて翔が顔を出した。2人は慌てて身体を離したがそれは後の祭り。
ドアを開けた本人は
「あ、ごめん!」
とドアをバタンと閉めた。
蒼真はユージを睨みながら部屋へと入る。
「翔、悪かった。遅くなったし…なにしてんの?」
翔はメジャーリーグのジャンパーを羽織って、忘れ物はないかなとキョロキョロしながら身体をパンパンと叩いている。
「え?あ、その…俺、出てくからゆっくりやってくれよ」
無理して笑いながら翔は蒼真の脇を通り過ぎてゆこうとした。蒼真は『何をだ』と思いながら、ちょっと疲れたように
「ちょっと待て」
と翔の腕を掴もうとしたが翔は
「いいんだいいんだ、俺平気だから。下にいるだけ。マスターと話してるからさ」
蒼真の腕をポンポンと叩き、そうして部屋を出ようとする。
「だから~、そこにいる奴よく見ろ」
「え?」
そう言われて翔は、ずっとドアの前で所在なさそうに立ちすくんでいた男に目を向けた。
「ユージ?」
ユージは『よっ』とバツが悪そうに手を挙げる。
「え?なんで?」
「お前の早とちりだよ」
翔を部屋の中に戻しながら、蒼真はそれは深いため息をついた。
「あっ!じゃあ尚更俺がいたら邪魔じゃん?2人とも久しぶりなんだしさ」
とやっと座ったソファからまた立ちあがろうとする翔を、蒼真はーいいから…ーと押し留めてユージもここへ座れと呼びこむ。
ユージが日本にいた時の蒼真といい仲だったのは周知の事実で、翔さえもが久しぶりに会ったと言うのに遠慮しないわけにはいかない。
「下で会ったんだ。会ったってよりユージが来てくれた。俺たちが日本に来てたのしばらく前から知ってたってさ。それより翔。さっきユージがくれた情報なんだけど、ハワードが日本に来てるらしいんだ」
たった今まで和んでいた翔の顔が、一瞬で真顔になった。
「なんで…」
「なんでと言われると俺も困るけど、本人が出てきたということは…じゃないかってユージも言ってる。マジになってきたってことだよな」
翔の体が震えだす。さっき下で蒼真が見せた反応と一緒だ。ハワード・リーフは本当にこの2人には鬼門なのだ。
翔が座るソファの隣に蒼真は座り、両手で翔を抱きしめてやる。
「大丈夫。俺ら今までも逃げ切ってきたじゃん。今度もきっと平気だ。明日にでも日本を出ような」
ユージはその光景を傷ましそうに見つめる。
2人の経緯は蒼真から聞いていた。
MBLの所長が直々に追い回す理由だとか、2人がハワードからされた数々の行為とか。
その時蒼真は平然と話してはいたが、そういう風に話せる様になるまでの経緯というのもまた、ユージの心を傷ませた。
「例の奴、できてるのか?」
一度ぎゅっとしてから少し身体を離し翔に問う。
「うん、約束の1kg完全に」
「今夜ハラダの親父に渡して、明日出ような。俺も変だと思ったんだよ。今日のおっさんたち妙に強気だったからさあ。ゲームも出来なくなっちまう」
「久しぶりに会ったのにこんなで残念だけどな。気をつけて行けよ。ハラダのおっさんだったら俺もよく知ってるけどなかなかいい親父だよな。頼りになるし」
ユージも翔の腕をポンと叩いて微笑む。
「送ってやるから準備しろよ」
準備といっても、荷物は入り込んでいるハラダ組長の家なので、ここから持ち出すものは特にない。
「サンキュ 助かるよ。準備なんてないからこのまま行ける。行くぞ、翔」
「うん」
翔もだいぶ落ち着いて自分の足でしっかり立ち上がった。
「岩沙さん、ボスがお呼びですので、部屋までご案内します」
日本でも大きな組織のボスの家は、和洋折衷なモダンなデザインで敷地も広い豪邸だった。
蒼真が携帯端末を見ると、もう午前1時。随分失礼な時間になってしまった上に、未だ起きていて自分を呼ぶと言うことは、約束していた「ピュア」が気になってるんだろうなと申し訳なくなった。
ハラダの右腕とも言われる加賀屋が直々に案内をすると言うので、蒼真と翔は送ってくれたユージに礼を言って手を振った。
加賀屋もユージとは顔馴染みで、送ってくれて感謝する、といくらか握らせて屋敷に入っていく。
2人が心配なだけで送ってきたユージにしてみたら、貰う謂れがなかったが加賀屋のこういう細かい礼を欠かさないところが、この組を長く維持できている所なんだろうなと、ありがたく受け取って門扉を守っている下っ端の人にも挨拶をして敷地を出た。
部屋の前まで来て、加賀屋はドアを開け2人を中へ促し自分は最後に部屋へと入る。
「遅くなってしまって申し訳無かったです」
まず詫びると、部屋の真ん中に設置されている豪奢な応接セットの1人がけに腰掛けたハラダが
「宵の口だ」
と意にも介さず迎えてくれた。
40後半くらいだろうか。精悍な顔つきに似合わぬ笑顔は、こんな大きな組織をまとめ上げているボスには見えない。
「まず、こちらを。気を揉んでいらっしゃると思いますので、先に」
手に持った皮のクラッチバッグから、2つの真っ白な粉を取り出し、ハラダの座っている前のテーブルへ置いた。
「おお…これがピュアか…」
ほとんど出回らないピュアは、初めて取引した人が初めて見る代物である。
ピュアは幻覚剤の一種で、依存性は全くなく経口も粘膜摂取もどのような取り込み方でもOKなので、重宝がられているのも確か。しかも摂取後の感覚が、使ったことのある者に聞くと、性的ではない高揚感と視界が明るくなって、言葉でなんていっていいかわからないけど、ハッピーな気持ちになる。らしい。
常習性もないし、身体にそれほど害もないという薬だが、レアなモノ故に売値が異常価格になってしまい、2次的な犯罪が起こるので要注意な薬物となっていた。
そしてこれは翔にしか作れない秘密があるので、量産が出来ない物でもあったのだ。
ハラダは両手で持って、感触や重さなどを確認しながら嬉しそうに微笑んでいる。
「こんな時間になってしまって本当に申し訳ないです。届くのが遅くなってしまって、自分たちも少々焦りました」
「こうして手元に来たんだ、なんの文句もない」
「代金は確認しましたので、今この瞬間にはそれはボスのものです」
蒼真は営業の自分を演出して、プライベートで会っているものたちが見たら驚くほどちゃんとしている。
「それで、少々図々しいかと思うのですが、ハラダさんにお願いがあるんです」
蒼真はその営業スタイルそのままに、少し頭を下げた。
ピュアに気を取られていたハラダは、その言葉に顔を上げーまあ座りなさいよーと2人を促して加賀屋に飲み物を頼んだ。
「水割りでも飲むか?」
「あ、じゃあお願いします。翔は飲めないので、何かソフトドリンクで」
加賀屋は全て聞いて、部屋の隅のバーカウンターへ入ってゆく。
「で、願いというのは?」
ソファの上で座り直し、ピュアをテーブルに戻したハラダは前屈みになった。
「ハラダさんのお力を見込んでお願いするのですが…明日のできるだけ早い時間のイギリス以外のヨーロッパ便チケットは取れませんか」
ハラダの部屋にある時計を見れば既に1時30分。今からなど無理に等しい。だがそれでも頼まなければならない。1日でも早く日本を出なければ。
昨日の酒場での男たちも、ハワードの力でもう釈放されているはずだ。明日1日だって待てない。
「今からか…難しいな。ちょっとまってろ」
ハラダは傍のテーブルから携帯端末をとると、どこかへ連絡を始めた。
「ああ、俺だ。無理を言って悪いんだが、今から明日のできるだけ早いヨーロッパ便の航空券取れねえかな。いきさき?ああ」
と言いながら蒼真の顔を見るので 蒼真は
「ドイツでもどこでも取れるところで」
「ああ、イギリス以外のヨーロッパならどこでもいいそうだ。よろしく頼む。取れたら連絡をくれ」
「お手数おかけします」
端末を置くハラダに礼を言う。
「いやいや、気にするな。俺もお前も取引の世界で生きている人間だ。それなりの物がないとは思っちゃあいないんでね」
探るような、この世界に生きる男特有の目で蒼真たちを見返したハラダに、蒼真は内心『来たな』と気を引き締めた。
「翔、もう遅いし眠いだろ。部屋へ戻らせてもらえ。あとは俺が話を付けとくから」
側でこの状況に不安そうな顔をし始めた翔に蒼真は優しくいう。
飲み物を今持って行こうと思っていた加賀屋は、用意したメロンソーダをカウンターの陰に置き、水割り二つを持って
「では部屋までお連れしますね」
と言いながら水割りをテーブルに置き一礼した。
交渉ごとは全て蒼真に任せていた翔は、ーわかったーと一言言って、案内の加賀屋に従って部屋を出る。
まあ実際、無垢な部分の多い翔には大人の込み入った交渉ごとは苦手だと言うこともある。
翔がドアから出てゆくと、蒼真はハラダとむきあい水割りを一口口にした。
慌てて追いかけて、ユージは登り切った所で蒼真を捕まえる。
「どの部屋だ?」
蒼真とてそこまでは酔っていない。大丈夫、と支えを外し、部屋へ向かう。
1番奥の部屋の前まで来て、蒼真が部屋を開けようとした瞬間にユージが蒼真を引き寄せた。
「なにすっ んっ…」
抵抗する間も無く蒼真は、後一歩で部屋という所で唇など奪われてしまった。
「ん…んんっ」
両手は壁に押し付けられているのでユージを押し返すこともできない。
何度か角度を変える長いキスを、このくらい仕方ないかと味わおうかなと思った瞬間
「蒼真?」
部屋のドアが開いて翔が顔を出した。2人は慌てて身体を離したがそれは後の祭り。
ドアを開けた本人は
「あ、ごめん!」
とドアをバタンと閉めた。
蒼真はユージを睨みながら部屋へと入る。
「翔、悪かった。遅くなったし…なにしてんの?」
翔はメジャーリーグのジャンパーを羽織って、忘れ物はないかなとキョロキョロしながら身体をパンパンと叩いている。
「え?あ、その…俺、出てくからゆっくりやってくれよ」
無理して笑いながら翔は蒼真の脇を通り過ぎてゆこうとした。蒼真は『何をだ』と思いながら、ちょっと疲れたように
「ちょっと待て」
と翔の腕を掴もうとしたが翔は
「いいんだいいんだ、俺平気だから。下にいるだけ。マスターと話してるからさ」
蒼真の腕をポンポンと叩き、そうして部屋を出ようとする。
「だから~、そこにいる奴よく見ろ」
「え?」
そう言われて翔は、ずっとドアの前で所在なさそうに立ちすくんでいた男に目を向けた。
「ユージ?」
ユージは『よっ』とバツが悪そうに手を挙げる。
「え?なんで?」
「お前の早とちりだよ」
翔を部屋の中に戻しながら、蒼真はそれは深いため息をついた。
「あっ!じゃあ尚更俺がいたら邪魔じゃん?2人とも久しぶりなんだしさ」
とやっと座ったソファからまた立ちあがろうとする翔を、蒼真はーいいから…ーと押し留めてユージもここへ座れと呼びこむ。
ユージが日本にいた時の蒼真といい仲だったのは周知の事実で、翔さえもが久しぶりに会ったと言うのに遠慮しないわけにはいかない。
「下で会ったんだ。会ったってよりユージが来てくれた。俺たちが日本に来てたのしばらく前から知ってたってさ。それより翔。さっきユージがくれた情報なんだけど、ハワードが日本に来てるらしいんだ」
たった今まで和んでいた翔の顔が、一瞬で真顔になった。
「なんで…」
「なんでと言われると俺も困るけど、本人が出てきたということは…じゃないかってユージも言ってる。マジになってきたってことだよな」
翔の体が震えだす。さっき下で蒼真が見せた反応と一緒だ。ハワード・リーフは本当にこの2人には鬼門なのだ。
翔が座るソファの隣に蒼真は座り、両手で翔を抱きしめてやる。
「大丈夫。俺ら今までも逃げ切ってきたじゃん。今度もきっと平気だ。明日にでも日本を出ような」
ユージはその光景を傷ましそうに見つめる。
2人の経緯は蒼真から聞いていた。
MBLの所長が直々に追い回す理由だとか、2人がハワードからされた数々の行為とか。
その時蒼真は平然と話してはいたが、そういう風に話せる様になるまでの経緯というのもまた、ユージの心を傷ませた。
「例の奴、できてるのか?」
一度ぎゅっとしてから少し身体を離し翔に問う。
「うん、約束の1kg完全に」
「今夜ハラダの親父に渡して、明日出ような。俺も変だと思ったんだよ。今日のおっさんたち妙に強気だったからさあ。ゲームも出来なくなっちまう」
「久しぶりに会ったのにこんなで残念だけどな。気をつけて行けよ。ハラダのおっさんだったら俺もよく知ってるけどなかなかいい親父だよな。頼りになるし」
ユージも翔の腕をポンと叩いて微笑む。
「送ってやるから準備しろよ」
準備といっても、荷物は入り込んでいるハラダ組長の家なので、ここから持ち出すものは特にない。
「サンキュ 助かるよ。準備なんてないからこのまま行ける。行くぞ、翔」
「うん」
翔もだいぶ落ち着いて自分の足でしっかり立ち上がった。
「岩沙さん、ボスがお呼びですので、部屋までご案内します」
日本でも大きな組織のボスの家は、和洋折衷なモダンなデザインで敷地も広い豪邸だった。
蒼真が携帯端末を見ると、もう午前1時。随分失礼な時間になってしまった上に、未だ起きていて自分を呼ぶと言うことは、約束していた「ピュア」が気になってるんだろうなと申し訳なくなった。
ハラダの右腕とも言われる加賀屋が直々に案内をすると言うので、蒼真と翔は送ってくれたユージに礼を言って手を振った。
加賀屋もユージとは顔馴染みで、送ってくれて感謝する、といくらか握らせて屋敷に入っていく。
2人が心配なだけで送ってきたユージにしてみたら、貰う謂れがなかったが加賀屋のこういう細かい礼を欠かさないところが、この組を長く維持できている所なんだろうなと、ありがたく受け取って門扉を守っている下っ端の人にも挨拶をして敷地を出た。
部屋の前まで来て、加賀屋はドアを開け2人を中へ促し自分は最後に部屋へと入る。
「遅くなってしまって申し訳無かったです」
まず詫びると、部屋の真ん中に設置されている豪奢な応接セットの1人がけに腰掛けたハラダが
「宵の口だ」
と意にも介さず迎えてくれた。
40後半くらいだろうか。精悍な顔つきに似合わぬ笑顔は、こんな大きな組織をまとめ上げているボスには見えない。
「まず、こちらを。気を揉んでいらっしゃると思いますので、先に」
手に持った皮のクラッチバッグから、2つの真っ白な粉を取り出し、ハラダの座っている前のテーブルへ置いた。
「おお…これがピュアか…」
ほとんど出回らないピュアは、初めて取引した人が初めて見る代物である。
ピュアは幻覚剤の一種で、依存性は全くなく経口も粘膜摂取もどのような取り込み方でもOKなので、重宝がられているのも確か。しかも摂取後の感覚が、使ったことのある者に聞くと、性的ではない高揚感と視界が明るくなって、言葉でなんていっていいかわからないけど、ハッピーな気持ちになる。らしい。
常習性もないし、身体にそれほど害もないという薬だが、レアなモノ故に売値が異常価格になってしまい、2次的な犯罪が起こるので要注意な薬物となっていた。
そしてこれは翔にしか作れない秘密があるので、量産が出来ない物でもあったのだ。
ハラダは両手で持って、感触や重さなどを確認しながら嬉しそうに微笑んでいる。
「こんな時間になってしまって本当に申し訳ないです。届くのが遅くなってしまって、自分たちも少々焦りました」
「こうして手元に来たんだ、なんの文句もない」
「代金は確認しましたので、今この瞬間にはそれはボスのものです」
蒼真は営業の自分を演出して、プライベートで会っているものたちが見たら驚くほどちゃんとしている。
「それで、少々図々しいかと思うのですが、ハラダさんにお願いがあるんです」
蒼真はその営業スタイルそのままに、少し頭を下げた。
ピュアに気を取られていたハラダは、その言葉に顔を上げーまあ座りなさいよーと2人を促して加賀屋に飲み物を頼んだ。
「水割りでも飲むか?」
「あ、じゃあお願いします。翔は飲めないので、何かソフトドリンクで」
加賀屋は全て聞いて、部屋の隅のバーカウンターへ入ってゆく。
「で、願いというのは?」
ソファの上で座り直し、ピュアをテーブルに戻したハラダは前屈みになった。
「ハラダさんのお力を見込んでお願いするのですが…明日のできるだけ早い時間のイギリス以外のヨーロッパ便チケットは取れませんか」
ハラダの部屋にある時計を見れば既に1時30分。今からなど無理に等しい。だがそれでも頼まなければならない。1日でも早く日本を出なければ。
昨日の酒場での男たちも、ハワードの力でもう釈放されているはずだ。明日1日だって待てない。
「今からか…難しいな。ちょっとまってろ」
ハラダは傍のテーブルから携帯端末をとると、どこかへ連絡を始めた。
「ああ、俺だ。無理を言って悪いんだが、今から明日のできるだけ早いヨーロッパ便の航空券取れねえかな。いきさき?ああ」
と言いながら蒼真の顔を見るので 蒼真は
「ドイツでもどこでも取れるところで」
「ああ、イギリス以外のヨーロッパならどこでもいいそうだ。よろしく頼む。取れたら連絡をくれ」
「お手数おかけします」
端末を置くハラダに礼を言う。
「いやいや、気にするな。俺もお前も取引の世界で生きている人間だ。それなりの物がないとは思っちゃあいないんでね」
探るような、この世界に生きる男特有の目で蒼真たちを見返したハラダに、蒼真は内心『来たな』と気を引き締めた。
「翔、もう遅いし眠いだろ。部屋へ戻らせてもらえ。あとは俺が話を付けとくから」
側でこの状況に不安そうな顔をし始めた翔に蒼真は優しくいう。
飲み物を今持って行こうと思っていた加賀屋は、用意したメロンソーダをカウンターの陰に置き、水割り二つを持って
「では部屋までお連れしますね」
と言いながら水割りをテーブルに置き一礼した。
交渉ごとは全て蒼真に任せていた翔は、ーわかったーと一言言って、案内の加賀屋に従って部屋を出る。
まあ実際、無垢な部分の多い翔には大人の込み入った交渉ごとは苦手だと言うこともある。
翔がドアから出てゆくと、蒼真はハラダとむきあい水割りを一口口にした。
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