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9章

第62.5話 せいじょは いっぽも うごかない(後編)

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注意:近日中に序盤の展開を改訂します。
   先に書きましたが、序盤の展開が好きだったと言う方は、
   バックアップの方をよろしくお願いします。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

 その瞬間、ついにアケイが剣を振り下ろした。
 動きが鈍いゴーレム騎士の打ち下ろしとは思えぬ鋭さ。
 斬撃は空気を斬り、やがて闘技場の一角を断つ。
 大地がめくれる。
 視界に見えたのは、穴と言うよりはもはや谷とも言うべき溝であった。

 それを見て、アケイは笑う。

「ふっ! 動いたな……」

 ルナの姿はその溝の側にあった。
 先ほどとは位置が変わっている。
 どうやら、回避したらしい。

 俺は「ふー」と息を吐いた。
 だが――――。

「いいえ。動いてませんよ」

 直後、ルナの声が別の場所から聞こえる。
 そのルナの姿は、アケイの足元にあった。
 1度は胸を撫で下ろした俺だったが、驚愕の光景を見て椅子から立ち上がる。

「る、ルナが2人!! ――――――あっ!!」

 気付いた時には、もう回答は出ていた。
 チッタが【変身】を解く。
 ルナに化けていたのだ。

「言いましたよ。『私はヽヽここから1歩も動くつもりがない』って……」

 ルナはいよいよ釘バットを構える。

「兄者!!」

 エケイが声をかけた時には遅い。
 ルナの渾身の横薙ぎが、アケイの両足を粉砕していた。

「ぎゃあああああああああああ!」

 アケイの悲鳴が上がる。
 両足を断たれては、如何に力に優れていようとも立つこともままならない。
 あっさりと態勢を崩したアケイは、そのまま地面へと倒れた。

「兄者! おのれ!!!!」

 エケイがアケイの仇を取ろうと、飛び込んでくる。

 対するはチッタだ。
 ルナを守るように立ちはだかる。
 【守護方陣】を改めて展開すると、エケイの攻撃を弾いた。
 動きを止めたところで、チッタはエケイに向かって走る。

「くそ! 獣め! 調子に乗るな! お前の攻撃など、我らゴーレム騎士には通じぬ」

 チッタの力は“141”。
 はっきり言って、ルナよりも劣る。
 防御力が“424”にプラス90の石装備をしたエケイに攻撃を通すのは難しい。

 けれど、通す方法がないわけじゃない。

「チッタ!!」

 ルナが手を掲げた。

 【神通力】!!

 【怪力】の上位互換。
 指定した仲間の力を4倍に上げる。
 これでチッタの力は“561”。
 だが、これがチッタのすべてじゃない。

『ガウッ!!』

 【連続攻撃】!!

 エケイに襲いかかると、嵐のように連撃を繰り返す。
 チッタの攻撃力と、エケイの防御力。
 さほど差はないものの、チッタの攻撃は確実にエケイの体力を削いでいく。

 いや、明らかに上回っていた。

『ガルルルルルルル……!』

 雄々しく吠える。

 チッタのジョブは守護獣。
 ルナを守る騎士だ。
 故に側に守護する対象がいれば、それだけで補正値が変わる。
 おそらくその攻撃力は、エケイの防御力を遥かに越えているのだろう。

 一方、そのエケイの表情が変わる。
 試合の前、エヴノスの力を受けて、あれほど余裕を見せていた顔が絶望に歪んだ。

「ぎゃあああああああああ!! 兄者ぁぁぁぁあああああ!!」
「弟者ぁぁぁぁあああああ!!」

 ついにエケイの身体が、チッタによって貫かれた。
 中心を射抜かれたエケイの巨躯もまた崩れていく。
 そのまま城が落ちるように、地面へと倒れていった。

 ずんっ……。

 重苦しい音が響いた後に、闘技場を支配したのは重い重い静寂であった。

 その中で優美な笑みを浮かべたものがいる。
 俺の側に座って、この試合の差配していたローデシアだった。
 薄く唇を開いた彼女は、ついに宣言した。

「勝者、ルナ&チッタのコンビ!!」


 おおおおおおおおおおおおおおおおお!!


 その瞬間、割れんばかりの歓声が響くのだった。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

チッタにポケモン感があるw

※ 明日の更新お休みさせていただきます。
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