ボスは1人でいいと、魔王軍の裏ボスなのに暗黒大陸に追放されたので、適当に開拓してたら最強領地と嫁を手に入れた

延野 正行

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8章

第52話 ぶきを つくろう!(前編)

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 【言霊ネイムド】――――チン。

 俺はチンさんに名前を与える。
 聞いたところによると、魔法鉱石ミスリルを扱うのが、ドワーフの中でも1番うまいらしい。
 元々チンさんは、ドワーフの中でも1、2を争う名工だったそうだ。
 だが、火の温度が上がらなくなり、魔法鉱石ミスリルを精製するのが難しくなって、武器屋に鞍替えしたと聞いた。

 チンさんって、ドワーフらしい雰囲気があるよな。
 似非中国人みたいなしゃべり方を除けばだけど……。

「そう言えば、メーリンもだけど、チンさんって誰が名前を付けてくれたの?」
「アイヤー。大魔王様、知らなかったアルか?」
「どういうこと?」
「ドワーフの名前は、みんなパパがつけてるネ」
「パパ……?」

 族長か!!

 そうか。
 ドワーフは族長が名前を付けているのか。
 ある意味個性的な存在だけど、変な名前でなくてよかったね。

「それよりも、チンさん。気分はどうアルか?」
「特に変わったところないアル。わたし、これで強くなったアルか?」
「とりあえず、ステータスを見せてください」


 名前   : チン
 レベル  : 1/90
    力 : 40
   魔力 : 15
   体力 : 40
  素早さ : 10
  耐久力 : 23

 ジョブ  : 鍛冶職人

 スキル  : 鍛冶(耐久)LV1


 “力”が強ッッッッッ!!
 “体力”も半端ないな。
 ミャアの初期値を見た時も驚いたけど、チンさんの初期値も驚きだ。
 このまま戦闘要員として育てたいぐらいだ。

 確かにチンさんって、武器屋にしておくにはもったいないほど、身体付きが凄いからなあ。そもそも鍛冶師って強キャラで描かれること多いしね。
 デスゲー……。鍛冶師……。アンドレイ…………うっ、頭が…………!

 こうなってくると、成長した時のステータスが楽しみだね。

 俺は早速、チンさんをレベルアップさせてみた。
 やり方は前にメーリンをレベルアップさせた時と一緒だ。
 横でチンさんも見ていたので、手順を説明するまでもなく、お手軽にレベルアップを果たすことができた。

 そして、ステータスがこちら……。


 名前   : チン
 レベル  : 12/90
    力 : 101
   魔力 : 38
   体力 : 99
  素早さ : 37
  耐久力 : 55

 ジョブ  : 鍛冶職人

 スキル  : 鍛冶(耐久)LV1 修理LV1
        鍛冶(魔法)LV1 耐えるLV1


 レベル12で、“力”が100を突破してしまった。
 レベルの上限から考えて、レアリティは4ってとこだろう。
 つまり、ルナの聖女の下、メーリンと同じぐらいだ。
 なのに、“力”の値が、やばすぎる。
 成長度からいって、レベル20前半で“力”が200を越えるんじゃなかろうか。

 他の値は低いけど、順調に育てていけば、第二の脳筋キャラに……。

「どうしました、ダイチ様」
「あ。いや……別に、ルナのことを脳筋キャラとか思ってないから」
「のーきん?」

 いや、何でもないです。
 マジもう勘弁して下さい。

「ジョブも鍛冶職人だから、ぴったりアルな」

 メーリンは満足そうに頷く。
 すると、横でミャアがあることに気付いた。

「ダイチ、鍛冶の横にある『(耐久)』とか『(魔法)』とかってなんみゃ?」
「ああ。そのレベルを上げると、武器や防具を作った時、耐久力が上昇したり、魔法を付与したりできるんだよ」
「アイヤー! つまり、わたしもう魔法の武器が作れたりするアルか?」
「だね。といっても、うちには魔法系のスキルを持っている人はいないけど」

 そうなんだよなあ。
 実は、まだうちには魔法系のスキルを持っている人材がいない。
 やっぱりエルフとかになるのかな?
 と言っても、領地を守る分には、戦力は十分だけどね。

「あ! そう言えば、1つ教えておくよ。鍛冶職人の鍛冶スキルは派生しない仕様だから。LV5になれば、それ以上は上がらない。その代わり、色々な鍛冶スキルを覚えるから。一応、頭に入れておいて」

 数ある中でも、鍛冶スキルは第2、第3と派生しないスキルだ。
 その代わり、たくさんの武器に関する鍛冶スキルが生まれる。
 そして、その中には――――。

「神剣や魔剣を作るスキルもある」
「神剣や……。魔剣……」
「それはすごいみゃ!」
「かっこ良いです!」
「アイヤー。なら、神剣と魔剣、売り放題ネ」

 一際、目を輝かせたのは、メーリンだった。
 また瞳が金貨みたいに輝いている。
 変なことを考えなきゃいいけど。

「チンさん、もう少しレベル上げるアル」
「アイヤー。メーリン、何故アルか?」
「神剣を鎚てるようになるまで、レベルアップしてもらって、後でガッチリ稼ぐアルよ」
「アイヤ! それは名案あるよ」

「「ぐふふふふふふふ……」」

 おい。そこのドワーフコンビ。
 めっちゃ聞こえてるぞ。

「盛り上がってるとこ悪いけど、その前にルナのために武器を作ってくれよ」
「ええ! 神剣とか魔剣とか作れる方がいいアルよ。魔族をぶっ倒せるアル」
「俺が、魔族からなんて言われているか、わかってての発言か?」
「心配しなくていいアルね。魔族いなくなったら、大魔王様の名前、大神王にするネ」

 そんな中二病みたいな渾名はいらないよ。
 大魔王ですら、小っ恥ずかしいのに……。

「神剣まで作らせるつもりはないから」
「チェッ! 大魔王様のケチ! メーリンの裸を見たのに」
「え? メーリンの裸見たアルか? 大魔王様、大人しそうな顔をして、手を出すの早いアルね」
「誤解だ! そもそもあの時、メーリンは半裸だったろ」
「でも、半裸見たアルね。メーリンの胸大きかったアルか?」

 チンさん、なんでそこ食い気味で聞いてくるの?
 好きなの? メーリンのこと?
 なんかドワーフって年がわかり辛いんだけど、チンさんって何歳なんだろうか。

「とにかく早く作ってくれないかな、チンさん。あまり時間がないし」
「任せておくアル。大魔王様はドワーフの恩人ネ。2割引きで引き受けるアルよ」

 え? そこはタダじゃないの?
 きっちりしてるなあ。
 さすがはドワーフだ。


※ 後編へ続く
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