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7章
第45話 しょうにんを なかまにした(前編)
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ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん♪
ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん♪
ちゃららららららららららちゃ~~ら~~♪
(仲間になった時の音のつもり)
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
早速、封印の洞窟へと俺たちは向かうことにした。
エヴノスたちがやってくるのは、1ヶ月後。
武器の製作期間を考えると、あまり休んでもいられない。
「大魔王様、こっちアル」
準備していた俺に声をかけたのは、チンさんだった。
洞窟に入るための保護用の防具を貸してくれたチンさんは、俺に話があるらしい。
「何ですか、チンさん?」
「実は――――って、すごい顔ネ。大丈夫アルか?」
「まあ、色々ありまして……
目の下が真っ黒になってる俺を見て、チンさんは心配する。
気を取り直して――――。
「メーリンのことをよろしく頼むネ」
「え? もちろんだよ」
封印の洞窟の案内役はメーリンとなった。
同じ族長の娘でも、ミャアとは違ってメーリンには武力がない。
力はそれなりに強いみたいだけど、普通の女の子よりも強いという程度だ。
チンさんが心配するのもわかるけど……。
「メーリンはとてもお金にがめついけど、とても優しい子ヨ。あの子がいなかったら、ドワーフ族は滅んでいたかもしれないネ」
「そんなに……!」
「メーリンは族長の制止を振り切って、暗黒大陸から出てた定期船に隠れて、1人で魔族本土に行ったね。そこで魔族と、ドワーフが作る工芸品や武器を売ったアルよ」
「すごい……」
メーリンのヤツ、たった1人で魔族の本土へ行って、商売をしていたのか。
すごい度胸だ。
おそらくドワーフって素性を隠して、商売をしていたんだろう。
けど、1歩間違えれば命の危険を伴う行動だ。
「でも、魔族の武器の主流は魔法鉱石ヨ」
そう。チンさんの言うとおりだ。
魔族の武器の多くは、魔法鉱石製のものばかりである。
対して鉄製の武器は基本的に粗悪品として扱われる。
「だけど、メーリンは必死になってうちの武器を売ってくれたアル。魔法鉱石よりも切れるってネ。実際、うちの鉄製の武器は、向こうのなまくらと比べたら、よく斬れるアル。それをメーリンは交渉して、商売に道筋を付けたアルよ」
「メーリンって、すごいヤツだったんだな」
なんか映画になりそうな壮大な話だ。
ちっさくて、俺よりも若いように見えているけど、きっと俺よりも遥かに苦労しているんだろう。
「『顧客にとって鉄貨1枚にしか見えない価値を、金貨100枚に変えるのが商人の仕事アル』とメーリンはよく言ってたアル」
それって、俺がさっき言った言葉と似ているな。
そうか。あの時のメーリンの反応って、これだったんだな。
「ほしいな」
俺はふと呟いた。
「ん? メーリンアルか? それはいいアル。大魔王様とメーリンが結婚すれば、ドワーフ族は万々歳。一生安泰アル」
「いやいやいやいや、そういうことじゃなくて……」
全くなんでみんなこう――俺にくっつけようとするんだろうか。
でも、メーリンが欲しいのは素直な気持ちだ。
きっとメーリンなら、理想の暗黒大陸を共有することができるだろう。
いや、彼女ならより具体的なヴィジョンをみんなに提供できるかもしれない。
「まだアルか、大魔王様」
チンさんの店を覗き込んだのは、噂のメーリンだった。
後ろには出立の準備を整えたルナたちもいる。
「ちょうど良かった、メーリン」
「???」
事情がわからないメーリンは、首を傾げる。
片眼鏡からぶら下がった金の鎖が、しゃらりと揺れる。
俺はメーリンの傾けた頭に手を置いた。
「ちょっと! いきなり何するアルね。触る時は触るというネ。あと、お触り1回20銀貨アルよ。後で小指を添えて払うよろし!」
やめろ!
その口調で「お触り」とかいうな。
なんかリアルだから。リアルを感じるから。
あと、小指を添えて?
普通は耳を揃えてじゃないの?
マナストリアではそういう表現になるだろうか。
だったら、随分乱暴だ……。
「冗談。嘘アルよ」
「嘘なんだ……。良かった」
「で――そろそろこの手をどけて欲しいネ」
「ごめんごめん。ちょっと待ってね」
【言霊】――――メーリン。
※後編へと続く。
ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃん♪
ちゃららららららららららちゃ~~ら~~♪
(仲間になった時の音のつもり)
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
早速、封印の洞窟へと俺たちは向かうことにした。
エヴノスたちがやってくるのは、1ヶ月後。
武器の製作期間を考えると、あまり休んでもいられない。
「大魔王様、こっちアル」
準備していた俺に声をかけたのは、チンさんだった。
洞窟に入るための保護用の防具を貸してくれたチンさんは、俺に話があるらしい。
「何ですか、チンさん?」
「実は――――って、すごい顔ネ。大丈夫アルか?」
「まあ、色々ありまして……
目の下が真っ黒になってる俺を見て、チンさんは心配する。
気を取り直して――――。
「メーリンのことをよろしく頼むネ」
「え? もちろんだよ」
封印の洞窟の案内役はメーリンとなった。
同じ族長の娘でも、ミャアとは違ってメーリンには武力がない。
力はそれなりに強いみたいだけど、普通の女の子よりも強いという程度だ。
チンさんが心配するのもわかるけど……。
「メーリンはとてもお金にがめついけど、とても優しい子ヨ。あの子がいなかったら、ドワーフ族は滅んでいたかもしれないネ」
「そんなに……!」
「メーリンは族長の制止を振り切って、暗黒大陸から出てた定期船に隠れて、1人で魔族本土に行ったね。そこで魔族と、ドワーフが作る工芸品や武器を売ったアルよ」
「すごい……」
メーリンのヤツ、たった1人で魔族の本土へ行って、商売をしていたのか。
すごい度胸だ。
おそらくドワーフって素性を隠して、商売をしていたんだろう。
けど、1歩間違えれば命の危険を伴う行動だ。
「でも、魔族の武器の主流は魔法鉱石ヨ」
そう。チンさんの言うとおりだ。
魔族の武器の多くは、魔法鉱石製のものばかりである。
対して鉄製の武器は基本的に粗悪品として扱われる。
「だけど、メーリンは必死になってうちの武器を売ってくれたアル。魔法鉱石よりも切れるってネ。実際、うちの鉄製の武器は、向こうのなまくらと比べたら、よく斬れるアル。それをメーリンは交渉して、商売に道筋を付けたアルよ」
「メーリンって、すごいヤツだったんだな」
なんか映画になりそうな壮大な話だ。
ちっさくて、俺よりも若いように見えているけど、きっと俺よりも遥かに苦労しているんだろう。
「『顧客にとって鉄貨1枚にしか見えない価値を、金貨100枚に変えるのが商人の仕事アル』とメーリンはよく言ってたアル」
それって、俺がさっき言った言葉と似ているな。
そうか。あの時のメーリンの反応って、これだったんだな。
「ほしいな」
俺はふと呟いた。
「ん? メーリンアルか? それはいいアル。大魔王様とメーリンが結婚すれば、ドワーフ族は万々歳。一生安泰アル」
「いやいやいやいや、そういうことじゃなくて……」
全くなんでみんなこう――俺にくっつけようとするんだろうか。
でも、メーリンが欲しいのは素直な気持ちだ。
きっとメーリンなら、理想の暗黒大陸を共有することができるだろう。
いや、彼女ならより具体的なヴィジョンをみんなに提供できるかもしれない。
「まだアルか、大魔王様」
チンさんの店を覗き込んだのは、噂のメーリンだった。
後ろには出立の準備を整えたルナたちもいる。
「ちょうど良かった、メーリン」
「???」
事情がわからないメーリンは、首を傾げる。
片眼鏡からぶら下がった金の鎖が、しゃらりと揺れる。
俺はメーリンの傾けた頭に手を置いた。
「ちょっと! いきなり何するアルね。触る時は触るというネ。あと、お触り1回20銀貨アルよ。後で小指を添えて払うよろし!」
やめろ!
その口調で「お触り」とかいうな。
なんかリアルだから。リアルを感じるから。
あと、小指を添えて?
普通は耳を揃えてじゃないの?
マナストリアではそういう表現になるだろうか。
だったら、随分乱暴だ……。
「冗談。嘘アルよ」
「嘘なんだ……。良かった」
「で――そろそろこの手をどけて欲しいネ」
「ごめんごめん。ちょっと待ってね」
【言霊】――――メーリン。
※後編へと続く。
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