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7章

第43話 せいじょは かなさいぼうを そうびした(前編)

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 一悶着はあったが、俺たちは無事ドワーフから武器を買うことを許された。

 メーリンの案内で向かったのは、城内にある武器屋だ。

「ここがチンさんの武器屋ネ」

 メーリンが紹介する。
 思わず「おお」と声を上げた。
 感心したのではない。
 純粋に驚いたのだ。

 武器屋といえば、武骨な佇まいを想像する。
 ゲームによっては、蜜柑箱サイズの木箱をカウンターにして、青空の下で売っている強者もいるが、それはそれで渋いと俺は思う。
 中に入れば、所狭しと武器が並んでいるのが、俺の勝手なイメージだ。

 だが、今俺の目の前にある武器屋は、そんなイメージとはかけ離れていた。

 どういう理屈で動いているかわからない電飾風のネオン。
 「武」「器」「屋」とデカデカと書かれた大きな看板も光っている。
 その光もやたらと淫靡で、赤、ピンク、紫などの刺激的な色が点滅していた。

 まるでいかがわしい店のようだ……。

 ふと周りを見ると、そんな店ばかりが並んでいる。
 城塞内にある繁華街といったところなのだろう。
 狭い通りに、ドワーフが溢れ返っていた。

「大魔王様、入らないアルか?」

 メーリンの声で我に返った俺は、武器屋の中に入る。
 ドワーフのサイズに合わせているのか、少し狭い。
 天井がすれすれだ。
 それでも並んでいる武器は、人間サイズに近かった。

 大昔、ドワーフの顧客は主に人間だった。
 その名残が残っていて、ドワーフの武器も人間サイズに合わせているらしく、そのための剣技も生まれたという。
 なかなか勉強になるなあ。

 中は油と鉄の臭いがする。
 昔、研修で行った下請けの工場を思い出した。

「アレー。誰かと思ったら、メーリンちゃんアルか」
「チンさん、ご無沙汰ぶりネ」

 店の奥からやって来たのは、毛むくじゃらの髭を揺らしたドワーフだった。
 目はギロリと大きく、特徴的なとんがり耳。
 身体は小さいけど胸板は大きく、肩の周りの筋肉が隆起していた。

 俺が想像する典型的なドワーフ。
 でも、差別するわけじゃないけど、似非中国人みたいなしゃべり方のおかげで、色々と台無しになっていた。

「メーリンちゃん、何用ネ。もしかして新しいお客さん見つけタ?」

 メーリンはドワーフ族の中でも、外商を担当しているらしい。
 つまり外の世界に出て、新規顧客を獲得してくる役目を負っている。
 実は、魔族にも顔が利くそうだ。

 ドワーフにも族長はいるようだが、今回大魔王の俺の相手はそのままメーリンということになった。

「まあ、そんなとこアル。チンさん、こちら大魔王様」
「アイヤー。大魔王アルか? そりゃ大物連れてきたアルな」
「むふふふ……。チンさん、ただの大物じゃないヨ。こいつ、大きな金をぶら下げているアルよ」
「ほっほおおお! それは助かるアル。最近、武器売れないアル。たっぷり絞り尽くさせてもらうアルよ」

「「くっくっくっくっく……」」

 最後に2人して怪しい笑みを浮かべる。
 歪んだ瞳で、俺を見つめていた

 おいおい。
 いくら俺が無限に金を生み出せるといっても、安請け合いをするつもりはないぞ。
 てか、客の前で堂々と絞り尽くすとかいうなよ。
 あと、表現が微妙に卑猥すぎる!



※ 後編へ続く
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