ボスは1人でいいと、魔王軍の裏ボスなのに暗黒大陸に追放されたので、適当に開拓してたら最強領地と嫁を手に入れた

延野 正行

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7章

第41話 かねで こうげきしますか?(前編)

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「チッタ!!」
『ガウッ!!』

 ルナが叫ぶ。
 その声にすぐさまチッタは動いた。
 皆の前に出て、【鉄壁】を張り巡らす。
 そこにルナの【結界】が合わさった。

 流れるような連携。
 その直後、砲弾が着弾した。

 ゴオオオオオオオンンンンン!!

 耳をつんざくような爆発音。
 【鉄壁】と【結界】の合わせ技を以てしても、防ぐことは難しい。
 だが、その威力を防ぐには十分だったようだ。

 まともに当たればバラバラになっていた俺の身体は、五体無事のまま存在していた。

「ふー……」
「ダイチ様、大丈夫ですか?」

 ルナが駆け寄る。
 回復のスキルを使おうとしたが、おかげさまでこっちは無傷だ。
 せいぜいびっくりして、尻餅をついたぐらいだろう。
 我ながら情けない限りである。

 それでも、ルナ、ミャア、ステノの怒りを誘うには十分だったらしい。

 特にミャアは怒り心頭だ。
 目を大きく開くと、より獣らしく眼光を光らせた。

「ダイチの仇みゃあああああああ!」

 ミャアが突撃していく。

 お約束だけど、俺は死んでないぞ。

 けれど、ミャアの行動は勇敢にもほどがある。
 相手は魔族や魔獣ではない。
 城そのものだ。
 1人で行って、勝てるはずがない。

「ミャア! 戻れ!!」

 制止したけど、ミャアは止まらなかった。
 頭の上の耳も、どうやらこの時ばかりはうまく機能しなかったらしい。

 それに向かったのは、1人だけじゃない。

「あれ? ステノもいない」

 まさか――――。

 俺は城を振り返る。
 すでにミャアが城壁に取り付きつつあった。
 その間、1発も砲弾は飛んでこない。
 どうやら次弾装填に時間がかかるらしい。

 だが、ミャアの前に高くそびえる城壁がある。
 どうやって上るのかと見ていたら……。

「みゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃ!!」

 城壁のとっかかりに爪をかけると、もの凄い勢いで登り始めた。
 すげぇ……。

 ついにミャアは城壁を上りきる。
 獣人の身体能力の高さに、ドワーフたちは完全に竦み上がっていた。

「堪忍ヨ」
「命ばかりはお助けヨ」

 ドワーフたちは独特のイントネーションで命乞いする。
 だが、ミャアの怒りは収まらない。
 みゃあ、と雄叫びを上げると、向かったのは先ほどの大砲だ。

 ゴォォォォォォォォォオオオンンンン!!

 スキルが載った拳を、思いっきり振り抜いた。
 全長が人よりも大きな大砲がくの字に曲がりながら、吹っ飛ぶ。
 すると、後ろの大砲に激突し、そのまま城壁の下へと落ちていった。

「ふふん……。どんなものみゃ」

 ちょっとすっきりしたらしい。
 ミャアは得意げに笑う。
 だが、その背後に手斧を持ったドワーフが足を忍ばせる。

「ミャア、後ろ!」
「みゃ!」

 振り返った時には遅かった。
 ミャアではない。
 ミャアに襲いかかろうとしてたドワーフの方がだ。

 すでにその顎の下に、刃物が突きつけられていた。
 鋭い殺気と眼差しに、ドワーフたちは息を呑む。
 【気配遮断】を解いて、現れたのはステノだ。

「動かないで下さい。それ以上、動いたら切ります」

 こ、怖ひ……。
 ステノって、ジョブなしだけど、確実にアサシンに近づいているよな。
 そもそも城壁を上った手際だって、暗殺者って感じだし。
 俺は城壁に掛けられた鉤縄を見る。
 ミャアがドワーフを引きつけて間に、手早く縄を使って城壁を上ったのだ。

 一体どこで覚えたんだろうか。
 ステノって、通常訓練の他にも自主練してるみたいだから、俺も把握してない技術を持ってたりするんだよなあ。

 そもそも鉤縄なんてどこで見つけてきたんだろうか。
 ブラムゴンの屋敷にあったのか?

 俺は首を捻るのだった。


※ 後編へ続く
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