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6章
第38話 われと たたかえ
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◆◇◆◇◆ エヴノス side ◆◇◆◇◆
はあ??????????
暗黒大陸がほしい!?
暗黒大陸の領主にしてほしいだと??
一体、このバカダイチは何を考えている。
人材がいるということは、ダイチにとっては僥倖だろう。
しかし、この大陸は生物が住むには不適格な場所だ。
我から言わせれば、海の上に浮かぶ馬鹿でかい空船に等しい。
いや、もう何も考えまい。
この育成馬鹿の思考を読んでも、詮ないことだ。
それは身に染みて理解している。
ただ放っておくのもまずい。
未だに信じられぬが、ここには我がパワーアップさせたダークブラムゴンと魔蛙族を退けた強者がいることは確かだ。
億が一、我らが後れを取るということもあり得る。
他種族が我ら魔族を従えるなど、悪夢以外の何物でもない。
少し牽制しておく必要があるか……。
我はニヤリと笑った。
◆◇◆◇◆ ダイチ side ◆◇◆◇◆
「ダイチ様、お考え下さい」
暗黒大陸の領主にしてくれ。
その願いを聞いて、真っ先に再考を促したのは、ローデシアだった。
氷の瞳がやや切なげに俺の方を見ている。
何か哀れんでいるようにも思えた。
「物見遊山で暗黒大陸に行くというなら理解できます。しかし、ここは暗黒大陸……。まともに生物が住めるような場所ではないのですよ」
「でも、お前たちはそうと知りながら、人族や獣人を住まわせてるじゃないか」
「それは……」
ローデシアは言い淀む。
「悪い。ちょっとイジワルだったな。この世界を支配したのは魔族。支配されたのは他種族。それがこの世界の常識だ。俺は別にそれを咎めようとは思っていない。そもそもそう言う話をしたいわけじゃない」
「じゃあ……」
「俺はこの暗黒大陸を元に戻してやりたい。そして、この大陸にあるすべてのポテンシャルを引き出したいんだ」
「暗黒大陸のポテンシャル?」
「そうだ。この大陸に名前を付けるっていうのもいいな。何がいいかな……」
「ダイチ様」
「うん?」
1度考え込んだ俺に、ローデシアは神妙な表情で質問した。
「ダイチ様、1つ教えて下さい。仮にこの暗黒大陸のポテンシャルをすべて引き出せたとして、一体あなたは何をしたいのですか?」
「うーん。それを答えるのは難しいな」
「どうしてですか?」
「それまで俺が生きているかどうかわからないからだ」
「だ、ダイチ様は死にません」
ローデシアは思わず絶叫した。
「はっはっはっ……。いくら大魔王でも、俺だっていつ寿命で死ぬさ。魔族よりも遥かに寿命が短いんだからさ」
「それは――――」
「これは願いなんだけどさ」
俺はローデシアだけじゃない。
後ろに控えた人族や獣人にも語りかけた。
「もし、俺が死んでしまった時、多分困ったことになっていると思う。魔族も、人族も、獣族も関係なく……。だから、その時みんなで助けてやってほしい。この暗黒大陸だけじゃなくて、この世界とそこに住む人々を。俺が引き出したみんなの能力は、誰かや何かを守るために使ってほしいって思ってるからさ」
最後はニカッと、我らながら子どもみたいに笑った。
ここに来た時は、闇雲に魔族を育ててきた。
マナストリアを守るために必要だったからだ。
でも、今は世界は平和になって、ちょっとだけ俺は考えた。
俺がみんなのポテンシャルをギリギリまで引き出したことは、本当にいいことなのだろうか。
少し後悔もあったし、功罪のようなものも感じた。
密かに自分を責めたこともある。
けれど、やってしまったことを今さら言っても仕方がない。
泣いて喚いて、頭を下げて懇願しても、俺の力は何かを守る力であると同時に、何かを破壊する力でもある。
俺の目が黒いうちは、そんな暴走はさせない。
けれど、俺が死んだ後のことはどうしようもない。
ただ今ここにいるみんなに託すしかない。
そう俺は結論づけた。
すると、ローデシアはその場に膝を突く。
続いて、多くの村人や獣人たちも平伏した。
「大魔王様の下知というならば、我ら魔族は一生貫く所存です」
ローデシアは大げさに誓う。
「ダイチ様のご命令であれば、私も従います」
「同じくです」
「一生……ううん、孫の代まで絶対に守らせるみゃ」
ルナ、ステノ、ミャアも同意する。
他の村人も獣人たちも頷いた。
俺の意志を継承してくれるらしい。
ま、ちょっと気の早い話だがな。
「さて……。で――エヴノス、どうなんだ? 俺を領主にしてくれるか?」
簡易の神殿の中で、1人立っていたエヴノスは我に返った。
ニヤリと笑った後、何故か平伏しているローデシアや他種族を見て、驚く。
どうやら考えごとをしていて、俺の話を聞いていなかったらしい。
「エヴノス?」
「ああ。すまん。お前の領主の話だがな」
「うん」
「断る」
「な! ダメなのか? なんで? そもそもお前が暗黒大陸を――――」
「最後まで聞け。我としては懸念がある」
「大丈夫だ。ここにいる人族や獣人は、この世界のために力を振るうと約束してくれた」
「ん? 約束??」
本当に何も聞いていなかったんだな、こいつ。
「我が思うのは、お前に危険がないかということだ。大魔王であるお前を、この暗黒大陸に残しておくわけにはいかぬ」
いや、だからお前が俺をここに送ったんだろ?
大丈夫か、エヴノス。
若干ボケてないか、お前。
「そこでだ……」
どうやら話を進めるらしい。
強引というか、普通にエヴノスってマイペースなんだよな。
「お前が育てた村人の力を見たい。我が連れてきたゴーレム騎士と戦え」
…………え?
それは構わないのだが……。
だ、大丈夫かなあ?
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
絶対大丈夫じゃない……!
はあ??????????
暗黒大陸がほしい!?
暗黒大陸の領主にしてほしいだと??
一体、このバカダイチは何を考えている。
人材がいるということは、ダイチにとっては僥倖だろう。
しかし、この大陸は生物が住むには不適格な場所だ。
我から言わせれば、海の上に浮かぶ馬鹿でかい空船に等しい。
いや、もう何も考えまい。
この育成馬鹿の思考を読んでも、詮ないことだ。
それは身に染みて理解している。
ただ放っておくのもまずい。
未だに信じられぬが、ここには我がパワーアップさせたダークブラムゴンと魔蛙族を退けた強者がいることは確かだ。
億が一、我らが後れを取るということもあり得る。
他種族が我ら魔族を従えるなど、悪夢以外の何物でもない。
少し牽制しておく必要があるか……。
我はニヤリと笑った。
◆◇◆◇◆ ダイチ side ◆◇◆◇◆
「ダイチ様、お考え下さい」
暗黒大陸の領主にしてくれ。
その願いを聞いて、真っ先に再考を促したのは、ローデシアだった。
氷の瞳がやや切なげに俺の方を見ている。
何か哀れんでいるようにも思えた。
「物見遊山で暗黒大陸に行くというなら理解できます。しかし、ここは暗黒大陸……。まともに生物が住めるような場所ではないのですよ」
「でも、お前たちはそうと知りながら、人族や獣人を住まわせてるじゃないか」
「それは……」
ローデシアは言い淀む。
「悪い。ちょっとイジワルだったな。この世界を支配したのは魔族。支配されたのは他種族。それがこの世界の常識だ。俺は別にそれを咎めようとは思っていない。そもそもそう言う話をしたいわけじゃない」
「じゃあ……」
「俺はこの暗黒大陸を元に戻してやりたい。そして、この大陸にあるすべてのポテンシャルを引き出したいんだ」
「暗黒大陸のポテンシャル?」
「そうだ。この大陸に名前を付けるっていうのもいいな。何がいいかな……」
「ダイチ様」
「うん?」
1度考え込んだ俺に、ローデシアは神妙な表情で質問した。
「ダイチ様、1つ教えて下さい。仮にこの暗黒大陸のポテンシャルをすべて引き出せたとして、一体あなたは何をしたいのですか?」
「うーん。それを答えるのは難しいな」
「どうしてですか?」
「それまで俺が生きているかどうかわからないからだ」
「だ、ダイチ様は死にません」
ローデシアは思わず絶叫した。
「はっはっはっ……。いくら大魔王でも、俺だっていつ寿命で死ぬさ。魔族よりも遥かに寿命が短いんだからさ」
「それは――――」
「これは願いなんだけどさ」
俺はローデシアだけじゃない。
後ろに控えた人族や獣人にも語りかけた。
「もし、俺が死んでしまった時、多分困ったことになっていると思う。魔族も、人族も、獣族も関係なく……。だから、その時みんなで助けてやってほしい。この暗黒大陸だけじゃなくて、この世界とそこに住む人々を。俺が引き出したみんなの能力は、誰かや何かを守るために使ってほしいって思ってるからさ」
最後はニカッと、我らながら子どもみたいに笑った。
ここに来た時は、闇雲に魔族を育ててきた。
マナストリアを守るために必要だったからだ。
でも、今は世界は平和になって、ちょっとだけ俺は考えた。
俺がみんなのポテンシャルをギリギリまで引き出したことは、本当にいいことなのだろうか。
少し後悔もあったし、功罪のようなものも感じた。
密かに自分を責めたこともある。
けれど、やってしまったことを今さら言っても仕方がない。
泣いて喚いて、頭を下げて懇願しても、俺の力は何かを守る力であると同時に、何かを破壊する力でもある。
俺の目が黒いうちは、そんな暴走はさせない。
けれど、俺が死んだ後のことはどうしようもない。
ただ今ここにいるみんなに託すしかない。
そう俺は結論づけた。
すると、ローデシアはその場に膝を突く。
続いて、多くの村人や獣人たちも平伏した。
「大魔王様の下知というならば、我ら魔族は一生貫く所存です」
ローデシアは大げさに誓う。
「ダイチ様のご命令であれば、私も従います」
「同じくです」
「一生……ううん、孫の代まで絶対に守らせるみゃ」
ルナ、ステノ、ミャアも同意する。
他の村人も獣人たちも頷いた。
俺の意志を継承してくれるらしい。
ま、ちょっと気の早い話だがな。
「さて……。で――エヴノス、どうなんだ? 俺を領主にしてくれるか?」
簡易の神殿の中で、1人立っていたエヴノスは我に返った。
ニヤリと笑った後、何故か平伏しているローデシアや他種族を見て、驚く。
どうやら考えごとをしていて、俺の話を聞いていなかったらしい。
「エヴノス?」
「ああ。すまん。お前の領主の話だがな」
「うん」
「断る」
「な! ダメなのか? なんで? そもそもお前が暗黒大陸を――――」
「最後まで聞け。我としては懸念がある」
「大丈夫だ。ここにいる人族や獣人は、この世界のために力を振るうと約束してくれた」
「ん? 約束??」
本当に何も聞いていなかったんだな、こいつ。
「我が思うのは、お前に危険がないかということだ。大魔王であるお前を、この暗黒大陸に残しておくわけにはいかぬ」
いや、だからお前が俺をここに送ったんだろ?
大丈夫か、エヴノス。
若干ボケてないか、お前。
「そこでだ……」
どうやら話を進めるらしい。
強引というか、普通にエヴノスってマイペースなんだよな。
「お前が育てた村人の力を見たい。我が連れてきたゴーレム騎士と戦え」
…………え?
それは構わないのだが……。
だ、大丈夫かなあ?
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
絶対大丈夫じゃない……!
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