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5章

第31.5話 ゆみへい かーちゃ(後編)

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「ぎゃあああああああああああああ!!」

 ウッドローは悶絶する。

「ん? 生きているのかい? 【狙撃】ってスキルを使ったんだけどね」

 【必中】、【致命】といったスキル特性を2つ合わせ持つスキルである。
 要は急所に対して、必ず当たるというスキルで、これ1発で命を絶つことも可能だ。
 どうやらウッドローはかなり体力があって、即死とまではいかなかったらしい。

「ククク……。調子に乗るなよ、人族!! お前の矢では、我に致命的なダメージは与えられぬぞ」

 ウッドローは舌を使って、眉間の矢を抜く。

「加えて、魔蛙族はあらゆる毒にも対応している」
「そのようだね……。だけど、構わないよ。あたしは。あんたを討って、勝ち名乗りを上げるのは、若いもんに任せるさ」


 ねぇ、ステノ……。


 ウッドローが急にピンと背筋を立てた。
 顔が青ざめると、ブクブクと泡を拭く。
 そのまま前のめりになって、地面に倒れた。

 ウッドローは目を見開いている。
 自分がどうして死んだかもわからないようだった。

「やったね、ステノ……」

 その巨躯の背後から現れたのは、ステノだった。
 魔蛙族の急所。
 首裏に突き立てたナイフを引き抜く。

「カーチャさんが、気を引いていたおかげです」
「こんなあたしでも、役には立ったかい。嬉しいね」
「カーチャさんは凄いです。もっと自信を持って下さい」
「あっはっはっは」
「何かおかしいこと、言いました?」
「いや――――」


 昔と逆だと思っただけさ。


 カーチャは笑ったが、ステノは首を傾げるだけだった。

「さて、次行こうかね」
「はい。わたしたちで魔蛙族の幹部を倒しましょう」

 そして2人は、鬱蒼と茂る森の中に紛れていくのだった。


 ◆◇◆◇◆


 森のあちこちから悲鳴が聞こえる。
 そのどれもが、汚い魔蛙族の叫びだった。
 村人や獣人たちが紛れた森に、500匹の魔蛙族が飲み込まれていく。

「作戦通りだな」

 森の後方で様子を窺っていた俺は、うんと頷いた。

「やりましたね、ダイチ様」

 笑顔を見せたのは、ルナだ。
 側にはチッタもいる。
 一応、ルナもチッタも、俺の護衛役というくくりになっていた。
 とはいえ、ここまで魔蛙族が来ることはないけどね。

 ルナも前線に出て戦ってもらった方がいいのだけど、後方に控えてもらうことにした。

 実は回復役というのが、ルナしかいないからだ。
 言わば、この後方は病院みたいな役目だった。
 とはいえ、後退してくる者は皆無だ。
 それだけ、みんなが魔蛙族を圧倒してるのだろう。
 森の奥から聞こえてくるのは、魔蛙族の汚い悲鳴だけだった。

 加えて、少々の怪我ならウィンドのスキルで回復させてしまうこともできる。

 これならルナも前線に出ていってもらえば良かったかもしれない。
 俺はちょっと後悔していた。

「何故だ!! 何故、我ら魔蛙族が劣勢なのだぁぁぁぁああああ!!」

 前線の方からうなり声が聞こえる。
 ブラムゴンの大声だ。

 【遠見】のスキルを持つ村人によれば、魔蛙族の数はすでに30を切っていた。

「はあ、やっぱりこうなったか……」

 俺は溜息を吐く。
 大勝なのは喜ばしいけど、ここまでこちら有利に偏るとは。
 いや、予想していなかったわけじゃない。
 むしろこの展開は予想通りだ。

 だから、ブラムゴンには退けと忠告したのだ。
 否定されたのも、俺の予想通りではあったけど。

 勝因を言うなら、みんなの成長が早かったことだろう。
 ドリーの【成長促進】は、ちょっと言葉が悪いかもだけど、完全に余計ヽヽだった。
 面白くってさらに育成した俺も悪いんだけどさ。

 やっぱり精霊のシステムが、チートなんだよな。
 育成された人族や獣族に、簡単に基礎能力が向上する補正値がプラスされるんだもん。

 有り体に言って、何が言いたいかというと……。


 魔蛙族とブラムゴンが、全く敵になっていないのだ。


 とはいえ、このまま生殺しにしておくわけにはいかないだろう。

「ルナ、そろそろ決着を着けようか」
「はい、ダイチ様」

 ルナは棍棒を握りしめるのだった。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


カーチャ、格好良すぎない?
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