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3章

第20 じゅうじんを なかまにしますか?

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~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


 屋敷を襲ったことによって、これで俺たちは完全にブラムゴンと敵対したことになる。
 遅くないうちに、ブラムゴンが村を襲撃しに来るだろう。
 ヤツは狡猾な魔族だ。
 多分1匹だけじゃない。
 徒党を組んで、襲いかかってくるはずである。

 だが、はっきり言って今の村に防衛力は皆無だ。
 それに魔蛙族の跳躍力は、魔族の中でも郡を抜いている。
 どんなに高い城壁を作っても、突破してくるだろう。
 だから、俺が考えた方針は……。

「迎え討つ!」

 俺が力説すると、聞いていた村人たちはどよめいた。

 ほとんどの村人が動揺している。
 魔蛙族の大軍を籠城せずに迎え討つのだ。
 そりゃ驚くよな。

 といっても、魔蛙族に籠城戦は無駄なのは皆もわかっている。
 問題なのは……。

「攻撃力じゃな」

 ソンチョーが指摘した。

 そうなんだよな。
 圧倒的に戦力が足りてない。
 攻撃系のスキルやジョブを持つのは、今のところルナ、チッタ、ソンチョー、カーチャぐらいだ。
 他の村人は後方支援や生活系のスキルやジョブしか持っていない。
 レベルを上げれば、基礎能力が高まるが、時間が圧倒的に足りていなかった。

 ルナの前では馬鹿にしたが、ブラムゴンのステータスはかなり高い。



 名前   : ブラムゴン
 レベル  : 6/6
    力 : 121
   魔力 : 55
   体力 : 200
  素早さ : 185
  耐久力 : 153

 ジョブ  : なし

 スキル  : 大跳躍LV5 毒吐きLV5



 なんと言っても、体力と耐久力の高さだろう。
 大岩の下敷きになっても、海を渡るほどの体力が残っていたのだ。
 ルナやチッタでも攻撃はほとんど通らない。
 村で一番の攻撃力を誇るソンチョーでやっとといったところだろう。

「加えて力も強いし、何より魔蛙族は素早い。ブラムゴン以外の魔蛙族の能力も似たりよったりのはずじゃろう。一斉に襲いかかられれば、一溜まりもないぞ」

 昔、剣士だっただけあって、ソンチョーの目は確かだ。
 ますます不利な状況を聞いて、村人たちの顔がいよいよ青くなる。

「迎え討つ場所は、魔の森にしようかと思ってる。ここなら魔蛙族の機動力も封じることができるはずだ。ドリアードも手伝ってくれると言ってくれているしな」
『あそこでならば、私の能力もお役に立てるでしょう』
「「「「おお……」」」」

 1つ安心できる材料ができて、村人たちは安堵する。
 だが、魔蛙族を討伐できる戦力については、何も解決していない。
 そこで俺はある解決策を提案した。

「獣人族に手伝ってもらう」

 再び村人たちはどよめいた。

「獣人族か」
「案としては悪くないが……」
「獣人たちとの交流がなくなって、もう50年以上経っている」
「果たして、我らに手を貸して貰えるか」

「もらえるさ」

 俺が断言すると、皆が沈みきった顔を上げた。
 そのまま俺は話を続ける。

「彼らだって、暗黒大陸の住人だよ。きっと話せばわかってくれるはずだ」

 この俺の一言が決定打となり、俺たちは獣人族たちの住み処へと向かうこととなった。


 ◆◇◆◇◆


「あれが獣人たちの住み処か……」

 魔の森とは反対方向。
 村の南に広がる山野に、俺たちの姿があった。
 俺は山肌にぽっかりと開いた洞穴を見つける。

 同行したルナとチッタも、岩から顔を出して様子を窺った。

「ここまで何事もなく進むことができましたね、ダイチ様」
「ああ……」

 獣人たちはとても警戒心が強いと聞いている。
 五感の能力が人族よりも優れているから、住み処に近づくものをすぐに見つけることができるそうだ。

「ステノのおかげだな」
「そ、そんな……」

 もう1人の同行者ステノは頬を染める。
 スキル『気配遮断』。
 こうして実地で体験するのは初めてだが、かなり便利な能力だ。
 ステノをうまく育成できれば、アサシンプレイもできるかも。
 背後からグサリって感じで。

 …………。

 ちょっと想像すると怖いけど……。

「むぅ……。ステノばかり褒めて」

 頬を膨らませたのは、ルナだった。
 その頭をそっと撫でてやる。

「ごめんごめん、ルナ。大丈夫、これから活躍してもらうから」
「はい。任せてください」
『キィ!』
「ああ。チッタにも活躍してもらうよ。でも、まだその姿でね」
『キィ!』

 俺はもう1度住み処の入口を覗き込む。
 歩哨が2人立っていた。
 頭に犬の耳を生やした男たちが、鋭い視線を光らせている。

「犬獣族ですね。耳と鼻がとても鋭いんです。力も強いですよ」

 ルナは教えてくれる。

 なるほど。
 獣人になっても、その能力は健在か。
 警察犬になるぐらいだからな。
 見張りにはもってこいってわけだ。

「よし、ステノ。『気配遮断』を切って」
「いいんですか? 見つかっちゃいますよ」
「ここまでで十分だよ。俺たちは話し合いに来たんだ。話し合い相手が見えないんじゃ、余計に警戒させるだけだろ」
「大丈夫、ステノ。何かあったら、わたしとチッタが守るから」
『キィ!』

 ルナとチッタの頼もしい声を聞いたステノは頷く。
 『気配遮断』を切った。
 その瞬間、歩哨の犬獣族が気付く。
 何者だといって、牙を剥きだした。

「待ってくれ! 俺たちは敵じゃない」

 俺たちは手を上げて、岩陰から現れる。

「人族?」
「なんでこんなところに?」

 犬獣族は動揺していた。
 本来なら外敵が現れたことを知らせるルーティンが組まれているだろう。
 それをしなかったのは、突然俺たちが目の前に現れたからだ。

「話し合いに来た。族長と合わせてくれ」

 俺が頼むと、入口の向こうで影が飛び出した。
 一直線に俺の方に向かってやってくる。
 気付いた時には、鋭い爪が俺に向かって振り下ろされようとしていた。

「ダイチ様!!」

 影の横から飛び出したのはルナだ。
 素早い動きに反応し、組み伏せる。
 その姿を見て、俺とルナは同時に驚いた。

「「女の子?」」

 ルナと同い年ぐらいだろうか。
 ピンと立った豹柄の耳と、黄金色の髪。
 ビキニのような面積の少ない衣服の下には、真っ白肌が輝いている。
 長い尻尾をピンと立て、橙色の目を憎々しげに侵入者である俺たちに向けられていた。

 姿形からして豹。豹の獣人だ。

「「ミャア様!!」」

 声を上げたのは、犬獣族の歩哨だ。

 ミャアって呼ばれているのか。
 名前があるってことは、獣人族の中の有力者なのかもしれない。

 一方、ミャアとルナは両手を組み、押し合いをしていた。
 下になったミャアは、大きな肉球がついた手でルナを押し返そうとする。
 ルナも負けていない。
 懸命に力を振るい、ミャアを押し返す。

「すごい……」
「あの娘、ミャア様に負けてないぞ」

 犬獣族たちは驚いている。
 俺も驚いていた。
 ルナのレベルは20を越えている。
 その力の強さは、一般人の10倍以上だ。
 なのに、決してミャアも負けていなかった。

 すごい。すごいぞ……。
 獣人族はおそらく力に特化した種族なのだろう。
 これで育成したら、どれぐらい強くなるのか。

 いや、それよりもミャアを育てることができれば、対魔蛙族の切り札になるはず。

「お前……。何者だ! ミャアと互角なんて」
「あなたこそ、何をするんですか。ダイチ様は話し合いに来たんですよ」
「ダイチ? まさかあいつが大魔王か?」

 俺を知っているのか。

「ルナ。離してあげて」
「でも……」
「大丈夫だから」

 そっとルナはミャアから離れる。

 ミャアはピョンと跳ねるように1度退いた。

「何しにきた、大魔王ダイチ?」
「俺の要求はただ1つだ」


 ミャア! 君がほしい…………!!

~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

ド●ンかな……?

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