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2章
第25話 待ち合わせ
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ダンジョン探索者――冒険者とも言われている彼らは、その名前の通り、ダンジョンを探索する専門家たちのことだ。
ダンジョンとは、500年以上前の遺跡で、中にはたくさんのお宝が眠っているらしい。
そうしたお宝をそのまま持ち出すことは、法律で禁止され、盗掘と見なされるそうだが、ギルドという場所に持っていけば、換金が可能らしい。
そうやって日銭を稼いでいるものたちが、冒険者たちというそうだ。
だが、実入りが大きいが、その分リスクもある。
ダンジョンの中は、魔獣の巣になっており、さらにトラップなどもあって、魔窟と化しているようだ。
「わたしたちが冒険者に? 冒険者って学校に行かないとダメなんじゃ?」
ハートリーは首を傾げる。
ギルドに登録したら冒険者になれるというわけではないらしい。
冒険者になるためにも、その学校に行く必要があり、そこを卒業したものがダンジョンの探索が許される冒険者になるそうだ。
だが、ネレムの説明はよどみなく続いた。
「確かにハートリーの姐貴の言う通りです。けれど、パーティーの協力者ってことで同行は可能です。きちんとパーティーと交渉すれば、ちゃんと褒賞ももらうことができます。体のいい小遣い稼ぎですね」
「でも、校則違反なんじゃ……」
「お2人は知らないかもしれませんが、うちって結構無理して学院に入っている生徒も結構多いんですよ。だから、こっそり知り合いのパーティーに入って、お金を稼いでいる聖騎士とか、聖女とかいるんですよ。それに――――」
回復魔術を使えるのは、それだけでパーティーにとって有り難いらしい。
たとえ、半人前の聖女でも向こうは大歓迎なのだそうだ。
「随分と詳しいんですね、ネレム」
「そんな睨まないでくださいよ、ルヴルの姐さん。実は知り合いにパーティーがいまして。たまに協力者として同行してるんです。どうですか? なんだったら、紹介しますけど」
「わたしたち、迷惑じゃないかな?」
「全然そんなことありませんよ、ハートリーの姐貴。さっきも言ったけど、回復魔術の使い手は貴重なんです。3人全員でも大歓迎だと思います。荒くれ者ばかりなんで、生傷が絶えないんですよ、冒険者って」
悪くない話だ。
実入りは良さそうだし、ツテもある。
校則違反というのが、大聖母様に背くという意味で後ろ髪を引かれる思いではあるが、友を作れといったのも、大聖母様だ。
このネックレスを授受できることによって、我らはさらに強い絆で結ばれそうな気がする。
そのために、どうしてもお金は必要だ。
「わかりました。ネレムの話、乗りましょう。ハーちゃんはどうしますか?」
「わたしも行く。ちょっと怖いけど、3人一緒なら」
「決まりですね。ちょうど3日後に、聖クランソニア学院の魔術改訂の日があります」
聖クランソニア学院には、生徒の安全のために様々な魔術が施されている。
その魔術が正常に稼働しているかどうか、チェックするのが、魔術改訂の日だ。
その日は1日休校となる。
「その日でどうでしょう」
「異議ありません」
「私も――」
「じゃあ、知り合いに話を通しておきます。たぶん喜ぶと思いますよ」
露店の店主には、次の安息日に買いに来ると断り入れ、我らはダンジョン探索へと赴くこととなった。
◆◇◆◇◆
魔術改訂の日。
我は王都にあるギルドの前で、ハートリーとネレムを待っていた。
聞いてはいたが、確かに荒くれ者たちが、どんどんギルドの中に入っていく。
一攫千金を夢見て、皆が目をギラギラさせていた。
とはいえ、中には我に色目を向ける者も少なくないがな。
そういう者は、軽く【邪視】をかけて、追い払ってやった。
こういうこともあろうと、なるべく露出は避けた服装をチョイスしてきたというのに。
やはり、我の容姿はどうも人間の男の視線を集めるらしい。
まあ、自分で言うのもなんだが、なかなか美少女であるがな。
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」
声をかけてきたのは、2人の冒険者だった。
変な肩パットに、雄鳥の鶏冠をそのまま付けたような髪型。
下品に開かれた口から、黄ばんだ歯が見える。
体臭も凄いな。
こいつら、風呂に入っているのか?
どうせこやつら、我の容姿に惹かれて声をかけてきたのだろう。
とっとと【邪視】で追い払うか。
「あんた、学校の友達を待ってるんじゃないのかい?」
冒険者の口から友達の名前が出て、我は寸前で魔術を止めた。
「もしかして、ネレムさんの知り合いですか?」
我が尋ねると、2人の冒険者は顔を見合わせ微笑んだ。
「そうそう。そのネレムちゃんの知り合いだ。遅くて心配したよ」
「遅く?」
集合時間にはまだ時間があったはずだが……。
「すでに本隊は先に行ってる。そこにネレムちゃんもいるよ」
「ハーちゃ――――ハートリーさんも一緒ですか?」
「あ? ああ。勿論、その子も一緒だ。我々は君を待ってたんだよ。今なら急げば間に合うはずだ。早く行こう」
冒険者たちは我を急かす。
「わかりました。その前に少しいいですか?」
我は冒険者に向かって手を掲げた。
何故かギョッと驚かれる。
別になんてことはない。
単純にこやつらの体臭の臭さを、回復させてやるだけだ。
我は回復魔術を使う。
真っ白な光に、周囲は覆われた。
「「ぎゃああああああああああああ!! 目がぁ! 目がぁぁぁぁああ」」
2人の冒険者の悲鳴が上がる。
やがて施術が終わると、周りは日常を取り戻した。
「な、なんだったんだ、今の?」
「あれ? オレ、頭痛が……治ってる?」
「そう言えば、俺もそこはかとなく胃の中のムカムカが」
「すげぇな、お嬢ちゃん。まさか俺たちの2日酔いを治すなんて。こりゃすごい治癒士だ」
我を称賛する。
だが、我の機嫌が直ることはなかった。
鼻を摘まみ、渋い顔を冒険者たちにさらして見せる。
「ど、どうしたんだい、お嬢ちゃん?」
「な、何か俺たち粗相したかな?」
「い、いえ? なんでも……」
何故だ、何故こいつらの体臭まで治ってないのだ!
くっ……。我はまだまだ未熟のようだ。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
一体、どっちの悪意が強いのだろうかw
ダンジョンとは、500年以上前の遺跡で、中にはたくさんのお宝が眠っているらしい。
そうしたお宝をそのまま持ち出すことは、法律で禁止され、盗掘と見なされるそうだが、ギルドという場所に持っていけば、換金が可能らしい。
そうやって日銭を稼いでいるものたちが、冒険者たちというそうだ。
だが、実入りが大きいが、その分リスクもある。
ダンジョンの中は、魔獣の巣になっており、さらにトラップなどもあって、魔窟と化しているようだ。
「わたしたちが冒険者に? 冒険者って学校に行かないとダメなんじゃ?」
ハートリーは首を傾げる。
ギルドに登録したら冒険者になれるというわけではないらしい。
冒険者になるためにも、その学校に行く必要があり、そこを卒業したものがダンジョンの探索が許される冒険者になるそうだ。
だが、ネレムの説明はよどみなく続いた。
「確かにハートリーの姐貴の言う通りです。けれど、パーティーの協力者ってことで同行は可能です。きちんとパーティーと交渉すれば、ちゃんと褒賞ももらうことができます。体のいい小遣い稼ぎですね」
「でも、校則違反なんじゃ……」
「お2人は知らないかもしれませんが、うちって結構無理して学院に入っている生徒も結構多いんですよ。だから、こっそり知り合いのパーティーに入って、お金を稼いでいる聖騎士とか、聖女とかいるんですよ。それに――――」
回復魔術を使えるのは、それだけでパーティーにとって有り難いらしい。
たとえ、半人前の聖女でも向こうは大歓迎なのだそうだ。
「随分と詳しいんですね、ネレム」
「そんな睨まないでくださいよ、ルヴルの姐さん。実は知り合いにパーティーがいまして。たまに協力者として同行してるんです。どうですか? なんだったら、紹介しますけど」
「わたしたち、迷惑じゃないかな?」
「全然そんなことありませんよ、ハートリーの姐貴。さっきも言ったけど、回復魔術の使い手は貴重なんです。3人全員でも大歓迎だと思います。荒くれ者ばかりなんで、生傷が絶えないんですよ、冒険者って」
悪くない話だ。
実入りは良さそうだし、ツテもある。
校則違反というのが、大聖母様に背くという意味で後ろ髪を引かれる思いではあるが、友を作れといったのも、大聖母様だ。
このネックレスを授受できることによって、我らはさらに強い絆で結ばれそうな気がする。
そのために、どうしてもお金は必要だ。
「わかりました。ネレムの話、乗りましょう。ハーちゃんはどうしますか?」
「わたしも行く。ちょっと怖いけど、3人一緒なら」
「決まりですね。ちょうど3日後に、聖クランソニア学院の魔術改訂の日があります」
聖クランソニア学院には、生徒の安全のために様々な魔術が施されている。
その魔術が正常に稼働しているかどうか、チェックするのが、魔術改訂の日だ。
その日は1日休校となる。
「その日でどうでしょう」
「異議ありません」
「私も――」
「じゃあ、知り合いに話を通しておきます。たぶん喜ぶと思いますよ」
露店の店主には、次の安息日に買いに来ると断り入れ、我らはダンジョン探索へと赴くこととなった。
◆◇◆◇◆
魔術改訂の日。
我は王都にあるギルドの前で、ハートリーとネレムを待っていた。
聞いてはいたが、確かに荒くれ者たちが、どんどんギルドの中に入っていく。
一攫千金を夢見て、皆が目をギラギラさせていた。
とはいえ、中には我に色目を向ける者も少なくないがな。
そういう者は、軽く【邪視】をかけて、追い払ってやった。
こういうこともあろうと、なるべく露出は避けた服装をチョイスしてきたというのに。
やはり、我の容姿はどうも人間の男の視線を集めるらしい。
まあ、自分で言うのもなんだが、なかなか美少女であるがな。
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」
声をかけてきたのは、2人の冒険者だった。
変な肩パットに、雄鳥の鶏冠をそのまま付けたような髪型。
下品に開かれた口から、黄ばんだ歯が見える。
体臭も凄いな。
こいつら、風呂に入っているのか?
どうせこやつら、我の容姿に惹かれて声をかけてきたのだろう。
とっとと【邪視】で追い払うか。
「あんた、学校の友達を待ってるんじゃないのかい?」
冒険者の口から友達の名前が出て、我は寸前で魔術を止めた。
「もしかして、ネレムさんの知り合いですか?」
我が尋ねると、2人の冒険者は顔を見合わせ微笑んだ。
「そうそう。そのネレムちゃんの知り合いだ。遅くて心配したよ」
「遅く?」
集合時間にはまだ時間があったはずだが……。
「すでに本隊は先に行ってる。そこにネレムちゃんもいるよ」
「ハーちゃ――――ハートリーさんも一緒ですか?」
「あ? ああ。勿論、その子も一緒だ。我々は君を待ってたんだよ。今なら急げば間に合うはずだ。早く行こう」
冒険者たちは我を急かす。
「わかりました。その前に少しいいですか?」
我は冒険者に向かって手を掲げた。
何故かギョッと驚かれる。
別になんてことはない。
単純にこやつらの体臭の臭さを、回復させてやるだけだ。
我は回復魔術を使う。
真っ白な光に、周囲は覆われた。
「「ぎゃああああああああああああ!! 目がぁ! 目がぁぁぁぁああ」」
2人の冒険者の悲鳴が上がる。
やがて施術が終わると、周りは日常を取り戻した。
「な、なんだったんだ、今の?」
「あれ? オレ、頭痛が……治ってる?」
「そう言えば、俺もそこはかとなく胃の中のムカムカが」
「すげぇな、お嬢ちゃん。まさか俺たちの2日酔いを治すなんて。こりゃすごい治癒士だ」
我を称賛する。
だが、我の機嫌が直ることはなかった。
鼻を摘まみ、渋い顔を冒険者たちにさらして見せる。
「ど、どうしたんだい、お嬢ちゃん?」
「な、何か俺たち粗相したかな?」
「い、いえ? なんでも……」
何故だ、何故こいつらの体臭まで治ってないのだ!
くっ……。我はまだまだ未熟のようだ。
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