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1章

第21話 模擬戦終了(前編)

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 気を取り直し、我はミカギリに向き直る。

「さあ、どこからでもかかってきて下さい」

「ひっ!!」

 ミカギリは悲鳴を上げた。
 1歩後退ると、今度は地面に足を取られ、スッ転んでしまった。
 完全に戦意喪失している。
 どうやら、やっと我との戦闘力の差を理解したらしい。

 我は無警戒にミカギリとの距離を詰める。
 一瞬にして前に現れた我に、ミカギリは抵抗すらしない。
 完全に居竦んでいた。

「ミカギリ先輩、老婆心ながらお伝えしますと、この大太刀がダメですね」

 我はまたあっさりとミカギリから大太刀を奪った。

「き、貴様……。何をする? それは聖剣のレプリカだぞ」

 聖剣のレプリカ?
 これが?
 ふーん。まあ、多少は魔力を感じるが。
 我に向けられた聖剣の100万分の1もないぞ。

 所詮はレプリカか。

 だが、それでもミカギリのような輩に持たせておくには、少々持ったいない代物だ。

 【絶喰ブリスト

 我は風属性系の消滅魔術を使う。
 大気を細かく操作し、物体を超震動させて破砕する魔術だ。

 一瞬にして、聖剣のレプリカは消滅する。
 さらさらと音を立てて、地面に落ちた。

「ああ……」

 ミカギリは情けない悲鳴を上げる。
 砂になったレプリカを名残惜しそうに見つめた。

 我は続いて魔術を披露する。

 【害樹ドレーン

 巨大な樹木を生み出す。
 さらに【絶喰ブリスト】を使って、細かく削った。
 現れたのは、一振りの木刀だ。

 それをミカギリに投げて寄越す。

「あなたには、それがちょうどいい……。それで日に1万……。いえ。毎日十万回素振りをなさって下さい。そうすれば、いつか私と対等に戦うことができるかもしれませんよ」

「…………け…………る、な」

「ん?」

「ふざけんなああああああああああああああああ!!」

 ミカギリは激昂する。
 どうやら、早速木刀を試したいらしい。
 仕方がない。
 また先ほどの返し技を使うか。
 良かったな、ミカギリ。
 さすがの我でも、木刀で首を斬ることはできぬ。

 折ることはできるがな。



 そこまで…………。



 厳かな声が聞こえた。
 その聞き覚えのある声に、我は足を止める。
 ミカギリも同様だった。

 声の方へ視線を向けると、アリアル・ゼル・デレジアが立っていた。
 聖クランソニア学院の学院長にして、【大聖母】の異名を持つ老婆である。
 我の憧れだ。

「アリアル様」

 我は慌てて膝を突く。
 それに倣うように、他の者も頭を下げた。

「お久しぶりですね、ルヴルさん。元気そうで良かったわ。少し元気が有り余りすぎているようだけど……」

 アリアル様は優しげな声をかける。
 だが、あの院長室であった時とは、違う。
 雰囲気に何か棘があった。
 どうやら、怒っているらしい。

 そして、その矛先は我ではなく、ミカギリに向けられた。

「学院長様、ご機嫌麗しく」

「ええ……。ありがとう、ミカギリ君。ですが、すべて聞きました。Bクラスのルマンド君の腕を切り落とし、あまつさえ下級生と私闘を繰り広げるとは」

「それは勘違いしておられます、学院長様。今のは模擬戦でございます」

「それだけではありません。最近、あなたたちの『八剣エイバー』は権力を振りかざし、行き過ぎた行為に走っていると伺いました。増長していると」

「そんなことはありません。『八剣エイバー』であることを自覚し、他の生徒の示しとなるべく行動を……」

「それがこの騒ぎですか? 審判や他の教官を脅したとも聞きましたよ」

「それは他の貴族も同じ――」

「今はあなたに言っているのです」

 アリアンはピシャリと言い放つ。

 なるほど。
 アリアン学院長は、優しげに見えるが、怒る時は怒るのだな。
 教育者として、さすがの貫禄だ。

「どうやらルヴルさんの言うことが、もっともなようです。あなたは少し頭を冷やした方がいい。あなたから『八剣エイバー』としての権利を剥奪します」

「なっ! ちょっと待ってください! 『八剣エイバー』は聖クランソニア学院の象徴的存在です。8人いてこその『八剣エイバー』……。その空席を誰が埋めるというのですか?」

「それはあなたが思い悩むことではありません。ただ――――これはあくまで私見ですが、私はルヴル・キル・アレンティリにもチャンスはあるとと思っています」

 学院長は皆の前できっぱりと言い放った。



※ 後編へ続く
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