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1章
第17話 ジャアクな戦略(前編)
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ついにBクラスとの模擬戦が始まる。
競技場中央には、Fクラスの面々が整列していた。
もちろん、我もハートリーもいる。
観客席からはネレムが声援を送っていた。
対するBクラスである。
さすがは貴族の子息たちだ。
我らと比べて武器が違う。
入学前から英才教育を受け、EやCクラス以上の圧迫感を感じる。
だが、我らFクラスが不敵な笑みを浮かべているのに対して、Bクラスのものたちに余裕はなかった。
「ノコノコ出てきおって……。余程死にたいらしいな」
進み出たのは、ルマンドだった。
その額にはすでに青筋が浮かんでいる。
怒り顔のルマンドを見て、我は微笑で返した。
「さすがの貴族も、殺せば罪に問われるのではないですか?」
「表を歩けなくしてやると言っているのだ。それでもいいのかと、聞いている」
「構わねぇ……」
「こっちは邪悪!」
「悪は悪らしく」
「貴族様に楯突いてやる」
「なんたったって、こっちにルヴルさんがいるんだからな」
ルマンドの脅しに、Fクラスは一致団結して言い返す。
皆の面構えが違う。
もう弱小Fクラスとは言わせぬ迫力があった。
「良かろう。お前たちが、その気ならばこちらも容赦はせん。邪悪というなら、この閃光の騎士ルマンド・ザム・ギールが、悪を打ち払うだけだ」
ついに模擬戦の開始時刻となる。
前衛聖騎士、後衛に神官と聖女が並んだ。
戦うのは聖騎士たちだ。
さすがに緊張の色が見える。
真向かい中央に立ったルマンドは、青筋を浮かべている。
貴族に楯突く平民に対し、いまだ怒りが収まらぬらしい。
「はじめ!」
審判の声がかかる。
鬨の声が上がり、ついにFクラスとBクラスがぶつかり合った。
特に早かったのは、ルマンドだ。
ありったけの身体強化系の魔術を浴び、さらに自己強化系の魔術も唱える。
力が満ちると、ルマンドは飛び出した。
ほう……。なかなか速い。
舌を巻くという程ではないが、あの年齢であそこまで出来れば、非凡と言われるのも頷ける。
身体強化魔術と一口で言っても、実は奥が深い。
力が強くなっても反応速度やタイミングは、自分で取らなければならない。
柔な鍛え方なら、身体はすぐにすり減ってしまう。
だが、ルマンドにそんな危険性はない。
しなやかに鍛え上げられていた。
「食らえ!!」
ルマンドは一瞬にして距離を詰める。
持っている細身の剣が鞭のようにしなると、一斉に襲いかかってきたFクラスの聖騎士たちを薙いだ。
その斬撃は凄まじいに尽きる。
一瞬にしてFクラスの聖騎士の防具を切り裂いた。
血煙が舞い、いきなり模擬試合は朱に染まる。
「ぎゃあああああああああ!」
「キャアアアアアアアアア!」
「いてぇえ!!」
Fクラスの聖騎士たちから悲鳴が上がる。
聞くだけで胸がざわつく同クラスの聖騎士の悲鳴。
だが、ルマンドは愉快げに笑った。
「ははははははは! どうだ! 私の斬撃は!! Fクラスの防護魔術など……」
確かにFクラスの聖騎士達には、防護魔術がかかっていた。
その効果の上からダメージを通したルマンドの才は、さすがと言わざる得ないだろう。
だが、そんなことぐらいで調子に乗ってもらっては困る。
大笑するルマンドに襲いかかったのは、Fクラスの聖騎士だった。
慌ててルマンドは防御を選択する。
振り下ろされた剣を弾き、一旦後方に下がって様子を見た。
「なに……? お前達、さっき斬られて――」
しかし、どう見てもFクラスの聖騎士に傷はない。
それどころか溌剌としていた。
「どうしましたか、ルマンドさん? 何を狼狽えているんです?」
我は不敵な笑みを浮かべる。
※ 後編へと続く
競技場中央には、Fクラスの面々が整列していた。
もちろん、我もハートリーもいる。
観客席からはネレムが声援を送っていた。
対するBクラスである。
さすがは貴族の子息たちだ。
我らと比べて武器が違う。
入学前から英才教育を受け、EやCクラス以上の圧迫感を感じる。
だが、我らFクラスが不敵な笑みを浮かべているのに対して、Bクラスのものたちに余裕はなかった。
「ノコノコ出てきおって……。余程死にたいらしいな」
進み出たのは、ルマンドだった。
その額にはすでに青筋が浮かんでいる。
怒り顔のルマンドを見て、我は微笑で返した。
「さすがの貴族も、殺せば罪に問われるのではないですか?」
「表を歩けなくしてやると言っているのだ。それでもいいのかと、聞いている」
「構わねぇ……」
「こっちは邪悪!」
「悪は悪らしく」
「貴族様に楯突いてやる」
「なんたったって、こっちにルヴルさんがいるんだからな」
ルマンドの脅しに、Fクラスは一致団結して言い返す。
皆の面構えが違う。
もう弱小Fクラスとは言わせぬ迫力があった。
「良かろう。お前たちが、その気ならばこちらも容赦はせん。邪悪というなら、この閃光の騎士ルマンド・ザム・ギールが、悪を打ち払うだけだ」
ついに模擬戦の開始時刻となる。
前衛聖騎士、後衛に神官と聖女が並んだ。
戦うのは聖騎士たちだ。
さすがに緊張の色が見える。
真向かい中央に立ったルマンドは、青筋を浮かべている。
貴族に楯突く平民に対し、いまだ怒りが収まらぬらしい。
「はじめ!」
審判の声がかかる。
鬨の声が上がり、ついにFクラスとBクラスがぶつかり合った。
特に早かったのは、ルマンドだ。
ありったけの身体強化系の魔術を浴び、さらに自己強化系の魔術も唱える。
力が満ちると、ルマンドは飛び出した。
ほう……。なかなか速い。
舌を巻くという程ではないが、あの年齢であそこまで出来れば、非凡と言われるのも頷ける。
身体強化魔術と一口で言っても、実は奥が深い。
力が強くなっても反応速度やタイミングは、自分で取らなければならない。
柔な鍛え方なら、身体はすぐにすり減ってしまう。
だが、ルマンドにそんな危険性はない。
しなやかに鍛え上げられていた。
「食らえ!!」
ルマンドは一瞬にして距離を詰める。
持っている細身の剣が鞭のようにしなると、一斉に襲いかかってきたFクラスの聖騎士たちを薙いだ。
その斬撃は凄まじいに尽きる。
一瞬にしてFクラスの聖騎士の防具を切り裂いた。
血煙が舞い、いきなり模擬試合は朱に染まる。
「ぎゃあああああああああ!」
「キャアアアアアアアアア!」
「いてぇえ!!」
Fクラスの聖騎士たちから悲鳴が上がる。
聞くだけで胸がざわつく同クラスの聖騎士の悲鳴。
だが、ルマンドは愉快げに笑った。
「ははははははは! どうだ! 私の斬撃は!! Fクラスの防護魔術など……」
確かにFクラスの聖騎士達には、防護魔術がかかっていた。
その効果の上からダメージを通したルマンドの才は、さすがと言わざる得ないだろう。
だが、そんなことぐらいで調子に乗ってもらっては困る。
大笑するルマンドに襲いかかったのは、Fクラスの聖騎士だった。
慌ててルマンドは防御を選択する。
振り下ろされた剣を弾き、一旦後方に下がって様子を見た。
「なに……? お前達、さっき斬られて――」
しかし、どう見てもFクラスの聖騎士に傷はない。
それどころか溌剌としていた。
「どうしましたか、ルマンドさん? 何を狼狽えているんです?」
我は不敵な笑みを浮かべる。
※ 後編へと続く
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