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1章
第10.5話 元魔王、恋文をもらう(後編)
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「キャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
いきなり耳元に悲鳴が聞こえた。
振り返ると、立っていたのは我の母マリルだった。
「母上! どうしてここに?」
さすがの我も驚く。
誰かがマリルに化けているかと思ったが、我の審美眼は早々騙せぬ。
姿形はもちろんのこと、どこか垢抜けた雰囲気は、我が母マリルそのものだ。
「どうしてここにって……。ルヴルちゃん、失礼しちゃうわね。子どもが通ってる学校に親が来ちゃ悪いのかしら」
「そ、そういうことでは……」
「もう? そもそもルヴルちゃんが、あんな大金をいきなり寄越すから悪いんじゃない」
「あ――――」
なるほど。
あの大金の件か。
大金というのは、ゴッズバルトからもらったお金のことである。
初めは学院に寄進しようと思って、お金を学院長の下へ持っていった。
生憎と留守だったので、副学院長に渡そうとしたのだが、副学院長は心底我のことを恐れているらしい。
何故なら、魔導器からもたらされた「邪悪」という言葉を、我とともに目の前で聞いていたのが、副学院長だったからだ。
以来、我を悪魔かはたまた魔王かと恐れているのである。
まあ、後者はあっているのだが……。
そこまで恐れられながら、我が学院に入学できたのは、奇跡だろう。
噂ではある学院長の後押しがあったそうだが、我も、マリルも詳しいことは知らない。
まさかゴッズバルトと思ったが、真相は闇の中だ。
我は聖クランソニア学院に入学させてくれた学院長にお礼する意味で、学院に寄進するつもりで持っていったのだが、突き返されてしまった。
さらに――――。
『貴様、学院を乗っ取るつもりか!!』
喚かれる始末である。
結局我は断念せざるえず、我も特に金を使う予定はないことから、マリルたちに渡したというわけだ。
一応事情も書いておいたのだが、昨日の今日でまさかマリルが学院に乗り込んでくるとは思わなかった。
おそらく寮の部屋を繋いだ魔術のトンネルを使いやってきたのだろう。
「私から学院長に寄進を頼もうと思って説得に来たのよ。私の言うことなら聞いてくれるかもしれないでしょ。それよりも、それなに?」
マリルは半ば興奮しながら、我が握ったままの手紙を指差す。
「下駄箱の中に入っていたのです」
「下駄箱! まあ、ロマンチック!!」
ちなみにマリルは修道院にいた事がある。
修道院とは、神官や聖女のサポートあるいは身の回りを世話する修道士や修道女を養成する教育機関だ。
故に、こうした宗教系の教育機関のことには詳しい。
聖クランソニア学院を薦めてくれたのも、我の背中を押してくれたのも、マリルである。
「ロマンチック?」
「それきっとラブレターね」
「ら、ラブレター?」
「そっか。ルヴルちゃんにはわからないわよね。まだ5歳なんだし。あのね。ラブレターというのは、好きな男友達に送るものなのよ」
ラブレター。
好き……。
様々なフレーズが、マリルの口から紡ぎ出される。
だが、我がもっとも注目したのは――――。
男友達!!
すなわち友達!
「つ、つまりマリル! これは我と友達になりたいと交際を申し込んでいるということか」
「ま、ルヴルちゃん、落ち着いて。昔の言葉に戻ってるわよ」
おっと危ない。
ターザムに叱られる。
「こほん。うん。まあ、有り体にいえばそういうことね。その男の子は、ルヴルちゃんと仲良くなりたいのよ」
仲良く……。
ああ。なんと心地よい響きだ。
まさか友達として交際したいという手紙だったとは。
我はてっきり果たし状だと思っていたのだが……。
危ない危ない。
マリルの忠言がなければ、相手を打ち倒す所だったぞ。
放課後か。
今すぐ会いに行きたいが、今は指示に従おう。
だが、待ちきれぬ。
我が力で今すぐにでも夜に変えてやろうか、ぬはははははは!!
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
差出人の正体は、次回……。
注意 : タイトル変更いたしました。
いきなり耳元に悲鳴が聞こえた。
振り返ると、立っていたのは我の母マリルだった。
「母上! どうしてここに?」
さすがの我も驚く。
誰かがマリルに化けているかと思ったが、我の審美眼は早々騙せぬ。
姿形はもちろんのこと、どこか垢抜けた雰囲気は、我が母マリルそのものだ。
「どうしてここにって……。ルヴルちゃん、失礼しちゃうわね。子どもが通ってる学校に親が来ちゃ悪いのかしら」
「そ、そういうことでは……」
「もう? そもそもルヴルちゃんが、あんな大金をいきなり寄越すから悪いんじゃない」
「あ――――」
なるほど。
あの大金の件か。
大金というのは、ゴッズバルトからもらったお金のことである。
初めは学院に寄進しようと思って、お金を学院長の下へ持っていった。
生憎と留守だったので、副学院長に渡そうとしたのだが、副学院長は心底我のことを恐れているらしい。
何故なら、魔導器からもたらされた「邪悪」という言葉を、我とともに目の前で聞いていたのが、副学院長だったからだ。
以来、我を悪魔かはたまた魔王かと恐れているのである。
まあ、後者はあっているのだが……。
そこまで恐れられながら、我が学院に入学できたのは、奇跡だろう。
噂ではある学院長の後押しがあったそうだが、我も、マリルも詳しいことは知らない。
まさかゴッズバルトと思ったが、真相は闇の中だ。
我は聖クランソニア学院に入学させてくれた学院長にお礼する意味で、学院に寄進するつもりで持っていったのだが、突き返されてしまった。
さらに――――。
『貴様、学院を乗っ取るつもりか!!』
喚かれる始末である。
結局我は断念せざるえず、我も特に金を使う予定はないことから、マリルたちに渡したというわけだ。
一応事情も書いておいたのだが、昨日の今日でまさかマリルが学院に乗り込んでくるとは思わなかった。
おそらく寮の部屋を繋いだ魔術のトンネルを使いやってきたのだろう。
「私から学院長に寄進を頼もうと思って説得に来たのよ。私の言うことなら聞いてくれるかもしれないでしょ。それよりも、それなに?」
マリルは半ば興奮しながら、我が握ったままの手紙を指差す。
「下駄箱の中に入っていたのです」
「下駄箱! まあ、ロマンチック!!」
ちなみにマリルは修道院にいた事がある。
修道院とは、神官や聖女のサポートあるいは身の回りを世話する修道士や修道女を養成する教育機関だ。
故に、こうした宗教系の教育機関のことには詳しい。
聖クランソニア学院を薦めてくれたのも、我の背中を押してくれたのも、マリルである。
「ロマンチック?」
「それきっとラブレターね」
「ら、ラブレター?」
「そっか。ルヴルちゃんにはわからないわよね。まだ5歳なんだし。あのね。ラブレターというのは、好きな男友達に送るものなのよ」
ラブレター。
好き……。
様々なフレーズが、マリルの口から紡ぎ出される。
だが、我がもっとも注目したのは――――。
男友達!!
すなわち友達!
「つ、つまりマリル! これは我と友達になりたいと交際を申し込んでいるということか」
「ま、ルヴルちゃん、落ち着いて。昔の言葉に戻ってるわよ」
おっと危ない。
ターザムに叱られる。
「こほん。うん。まあ、有り体にいえばそういうことね。その男の子は、ルヴルちゃんと仲良くなりたいのよ」
仲良く……。
ああ。なんと心地よい響きだ。
まさか友達として交際したいという手紙だったとは。
我はてっきり果たし状だと思っていたのだが……。
危ない危ない。
マリルの忠言がなければ、相手を打ち倒す所だったぞ。
放課後か。
今すぐ会いに行きたいが、今は指示に従おう。
だが、待ちきれぬ。
我が力で今すぐにでも夜に変えてやろうか、ぬはははははは!!
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
差出人の正体は、次回……。
注意 : タイトル変更いたしました。
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