魔王様のお掃除奮闘記

鈴花

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50. 協力者

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 アスタロトが売ったブツでかなりの利益が出たらしく、ここ最近のベルゼは機嫌がいい。
 味を占めたベルゼは、アスタロトを商売係に任命したらしく、アスタロトは今日もまた、人間界にせっせと出稼ぎに行っている。
 悪魔側としては利益が出ることは喜ばしいことだが、人間の俺からして見るとなんとも複雑な気分だ。
 特に平和主義者の日本人にとっては。

 急用とやらでうきうきと外出して行ったベルゼの代わりに、謁見中はベルちゃんが着いててくれたんだが、どこから話を聞いたのか相談者の数がいつもの倍に……
 いや、気持ちは分かるけどね。
 ベルちゃん美人だし。
 美人、だけど……姿を目撃した身からしたら、なぁ。複雑だ。

 顔が引き攣るのを抑えてベルちゃんに結婚しないのかと聞いたら、「サタン様なら喜んで」って言われてしまったし。
 そんなこと勝手に決めたら今度こそサタンに殺されるから、それはもう必死に首を横に降っておいた。

「……ふぅ」

 いつもより謁見者が多かったことで遅れた昼食を食べ、部屋に戻った俺は一息ついた。
 ベルちゃんも午後からは用事があるとかで、守ってくれる人がいない俺は、くれぐれも城から出ないようにとベルゼに厳しく言われていた。
 出来るだけ部屋にいて、出来るだけ部屋には人を入れない様に、とも。
 ベルゼの過保護ぶりには若干引くが、実際何かあったときに困るのは目に見えているし、言われた通り大人しくしておくに限る。

「なんだかなぁ……」

 本来なら一番力があるはずの魔王が守られている現況に、なんとも言えない虚しさを感じ――かけて、勢いよく首を振った。
 いや俺人間だし。
 力の使い方とか分かんないし。

「どうなされました?」
「ん……いや、紅茶のおかわり貰ってもいいか? あと何か甘い物も」
「はい! すぐに」

 ラーナが用意してくれたシフォンケーキを一口。美味い。
 それにしても、毎日こんなにお菓子食べても太らないとか、この身体羨ましいんだが。
 人間と代謝が違うのか?
 なんて暇をどうでもいいことを考えて潰していると控え目なノックの音が聞こえた。

 一度こちらに視線を向けて、ラーナが対応に向かう。

「あっ、あの……サタン様にご報告したいことがございまして――」
「サタン様は今、お休みになられています」
「わ、あああっ――ちょっと待って!」

 ベルゼの言い付け通り、断りを口にするラーナを慌てて止める。
 ドアの隙間から見えたサラの手には本が握られていて――これはもしかするともしかするぞ!?

「入って話を聞かせてくれ!!」
「サタン様っ!!? ベルゼブブ様の言い付けはどうなさるのです!?」
「彼女には少し頼み事をしていて――ラーナ、頼むっ!!」
「私は……っ、――せめてっ、せめてお話を聞かせてはいただけませんか……?」
「……ええっと…………」

 今にも泣き出しそうなラーナに心が痛む。
 ううぅっ、泣かれるとどうしたらいいか分からなくなる。
 やっぱり言わないってのが一番なんだろうけど、でも……

「あの……サタン様? 私も賛成です」
「サラ!?」
「やはり私達だけでは無理なことも多いので、信用のある協力者は必要です」

 確かに、ラーナは今までも俺が記憶喪失だという秘密を守ってくれているし、信用はある。けど……

「…………分かった。ラーナを信じる」

 疑心暗鬼になるより、目の前のラーナを信じよう。
 声が漏れないように秘密の部屋に移動した俺達は、これまでのことをラーナに説明することにした。
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