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私の履歴書
デイジーの咲く頃
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昔ある処に
髪の長い静かな女性(ひと)がいた
その女性は、子犬を連れていた
いつも、緑色の木々が青々と茂る季節に
その女性は、公園のベンチの前で立っていた
季節が移り変わっても、その女性はそこに立っていた
誰かを待っているのか
いつも、子犬と一緒に立っていた
その子犬は、泣きもせずに
飼い主であろう、その女性から
離れなかった
ある日、梅雨の季節が近づいてきただろうか
小雨の降る中、その女性は子犬と
いつもの公園に立っていた
傘を持っていた私は
雨に濡れている、その女性に
そっと、傘を渡した
「ありがとう」
私の顔を見つめ、その女性はニコリと笑った
「誰かを待っているのですか?」
「ええ」
私は、その女性に誰を待っているのかまでは、聞かなかった
そこまで詳しく聞くと、嫌な顔をされるのではないかと、詮索したからだ
「ワンちゃん、かわいいですね
名前は何て言うのですか?」
「私の名前?」その女性は言った
「いや、その...」
犬の名前を聞いたつもりが、その女性の名前を聞いたと思われ
厚かまし男だな、と思われたのではないかと、私は顔が赤くなった
しばらく沈黙が続き
「じゃあ...傘はあげますんで」
私はそう言って、小雨の中家路に向かって走った
それから、何日か経ったであろうか
私は、あの女性の居た、公園のベンチに行ってみた
しかし、あの女性も子犬も見当たらない
私は、それから気になって何日も何日も
あの公園に行った
何年か経った頃
ちょうど、春から雨季に入る頃だろうか
公園のベンチの裏に、デイジーという花が咲きみだれる頃
花々の脇に、そっと一本の傘が置いてあった
私は、いつもあの女性の事を思いだす
そう、デイジーという花を見るたびに...
fin
髪の長い静かな女性(ひと)がいた
その女性は、子犬を連れていた
いつも、緑色の木々が青々と茂る季節に
その女性は、公園のベンチの前で立っていた
季節が移り変わっても、その女性はそこに立っていた
誰かを待っているのか
いつも、子犬と一緒に立っていた
その子犬は、泣きもせずに
飼い主であろう、その女性から
離れなかった
ある日、梅雨の季節が近づいてきただろうか
小雨の降る中、その女性は子犬と
いつもの公園に立っていた
傘を持っていた私は
雨に濡れている、その女性に
そっと、傘を渡した
「ありがとう」
私の顔を見つめ、その女性はニコリと笑った
「誰かを待っているのですか?」
「ええ」
私は、その女性に誰を待っているのかまでは、聞かなかった
そこまで詳しく聞くと、嫌な顔をされるのではないかと、詮索したからだ
「ワンちゃん、かわいいですね
名前は何て言うのですか?」
「私の名前?」その女性は言った
「いや、その...」
犬の名前を聞いたつもりが、その女性の名前を聞いたと思われ
厚かまし男だな、と思われたのではないかと、私は顔が赤くなった
しばらく沈黙が続き
「じゃあ...傘はあげますんで」
私はそう言って、小雨の中家路に向かって走った
それから、何日か経ったであろうか
私は、あの女性の居た、公園のベンチに行ってみた
しかし、あの女性も子犬も見当たらない
私は、それから気になって何日も何日も
あの公園に行った
何年か経った頃
ちょうど、春から雨季に入る頃だろうか
公園のベンチの裏に、デイジーという花が咲きみだれる頃
花々の脇に、そっと一本の傘が置いてあった
私は、いつもあの女性の事を思いだす
そう、デイジーという花を見るたびに...
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