私の履歴書

澤村 通雄

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私の履歴書

野犬

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ボクは、インドの山奥を彷徨っていた。
辺りは真っ暗だが、月の光と満天の星空が、獣道を照らしてくれた。

その時、一匹の野犬が寄ってきた。
誰かに飼われているのか、野生の犬なのかは、定かではなかった。

もし、噛まれでもしたら、狂犬病で命を落とす可能性もある。

その犬は、ボクに近づいてきたが、敵対心を持っているのが、ヒシヒシと感じられた。

遠い国での、昔の出来事であった。

ボクの首元を睨みつけ、ヨダレをたらしながら唸りはじめた。

逃げようにも、完全に、ロックされている。

次第に、2匹3匹と他にも野犬が増えてきた。
気づいたら、20~30匹の犬達に行く手を阻まれた。

もう、ボクもこれで終わりか...


誰も知らない遠い国、インドで両親も知りも知り得ない、この場所で息絶えるのか。

ボクは、死を覚悟した。

その時、遠くからバイクの地響きが聞こえてきた。

犬達の群れを蹴散らすように、バイクがエンジンを吹かしたまま、ボクの横に止まった。


運転しているのは、知りもしない西洋人だった。

顔も名前も国籍も分からない西洋人に、後ろに乗れ。と手招きされた。

そのバイクの後ろに、ボクは跳び乗った。

「サンクス。」

腕にはタトゥー。ほのかに西洋人の体からは、香水の匂いと、嗅ぎ慣れない体臭がした。

犬の群れから無事脱出できたボクは、クリスチャンでもないのに、神の存在を感じた。

途中で、西洋人が「マネー!!」と、ナイフをチラつかせ、お金を要求してきた。
ボクは、「ハブ ア ガン!」と言って人差し指を西洋人の身体に押し付けた。

慌てて、飛び降りるとそのまま、西洋人が乗ったバイクは、夜の闇に消えていった。


目の前に、民家の灯りがある。

ボクは、その民家に入っていった。

地元のインド人の民家は、とてもアットホームで、食事と寝床を提供してくれた。

食事もノドに通らず、ワラの寝床でも一睡もできなかった。

朝、その家族のお母さんに、100ルピー札を渡した。

なかなか、受け取ってくれなかったが、食卓にそっと置いた。

その家族の幼い子供と、ボクシングの真似事をして遊び、ボクは太陽の登った灼熱のインドの山奥を後にした。


そんな、インドでの20歳の頃のエピソードのひとつである。


ps

後日、帰国後姉の3人の小さな子供に、おじさんは、昔インドの山奥で、迷子になったんだよ。と話をすると、手を叩いて喜んで目をキラキラと輝かした。
今では、その子供達も、30歳を過ぎる歳なっているが、子供の頃に変なおじさんが親戚に居たという、記憶ぐらいのボクの存在だろうか、、、。

       fin
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