私の履歴書

澤村 通雄

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桜の樹の下で その2

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ボクはスポーツテストで歴代記録更新を密かに狙っていた。得意だった1500メートル走を周りは進めたが、100メートル走を狙った。50メートル走しか走った事がなかったので100メートルでのタイムは未知数でボク自身も興味があった。ちなみに
50メートルの記録は6秒1だったので、100メートルで11秒台をだすのが目標だった。その舞台は時間は進み、中3の時に勝負だった。スターターは吉田先生。他の組にあの入学式で一緒に写真を撮った小学生時代の親友、テニス部のキャプテン。ゴールのストップウォッチ役はテニス部の部員。役者は揃った。過去の歴代記録は12秒9だった。ボクは自信があった。100メートルを全力で走るのは人生初だがスタートダッシュして12秒を切るのをイメージした。第1組、いきなりボクの出番だ。吉田先生のゴールラインからの「ヨーイ。」と言う声から3秒後、ピストルと同時にスタートダッシュした。バンバンッ!あまりに好スタートすぎて周りの選手から飛び抜けてスタートしたためフライングを取られた。吉田先生はニヤニヤしてボクを指差した。ボクは吉田先生のそういうイジワルな所を知っている。3年生でハンドボール部のキャプテンになったボクに吉田先生は厳しかった。中学3年間で練習に顔を出したのは数回で、試合の時しかハンドボール部に関わらなかった。吉田先生は、水泳部にべったりだった。どうせ女子の水着目当てなんだろう。ボクはそう思っていた。吉田の野郎!3年になるまでボクともう1人しかいなかった3年部員。先輩が引退してから続々と入部してきた腰抜け部員ばかりの寄せ集めメンバーだった。連中をまとめるのもルールを教えるのもボクに押しつけやがったくせに。次にスタートをミスったら失格になるらしい。吉田先生は、ゴールラインでまだニヤニヤしてボクを見ている。よほど2年の時の担任時代のボクへの印象が悪かったのか。しょうがない、スタートダッシュは変更して皆が走り出してから遅れてスタートしよう。作戦変更だ。ボクはアドレナリンが満ち溢れていた。「ヨーイ。」バンッ!!皆がスタートしたのをワンテンポ遅れて走りだした。他の選手を一気に抜き独走でゴールした。タイムキーパーのテニス部の子に記録を確認すると12秒7と言われた。思ったより記録は悪いが一応歴代記録更新であった。次の組にテニス部のキャプテン。一位でゴールした。後日3年のクラスで結果の発表があった。偶然にもテニス部のキャプテンとは同じクラス。担任はボクが密かに思いをよせていた英語の女教師。○○君が12秒6で歴代記録ん更新しました。ボクは記録更新だったけど、残念でした。ボクは絶対にテニス部の陰謀にはめられたと確信した。だってタイムキーパーはテニス部の子だったから。吉田先生の悪魔の笑みが脳裏をよぎった。今でも忘れられない青春の1ページであった。
3年生も終わる頃、野球部の番長とハンドボール部のキャプテンのボクが、野球部とハンドボール部の顧問にグランドに呼び出された、中学生活の最後に番長とボクで勝負をつけろと言われた。ケンカか?ボクは腕がうずいたが100メートルで勝負しろと言われた。数々の因縁を残したコイツとはいずれ勝負をつけなければと思っていた。小学5年で大阪から転校してきたボクには、当時からガキ大将だったコイツの影がチラついていた。小5の転校初日にボクはケンカを売ったが、コイツは逃げ回っていた。6年で分校にコイツが行ったあともサッカー部の練習試合で遠征でコイツを探しても、コイツはブッチして現れなかった。これも中学生活の集大成だとボクは思った。ゴールラインに吉田先生と野球部の顧問、2人ともストップウォッチを手に握って待機している。スタートした。ラインも引いていないグランドで番長はボクの袖を引っ張った。コイツはいつも汚い手を使う。ボクはギアチェンジして番長を抜いた。番長も必死で並んでくる。2人の中学生がプライドをかけて全力で走った。ゴールは同じか。ボクは短距離選手がやる胸を突き出した。吉田先生にタイムを聞くと、サッとストップウォッチをリセットされた。野球部の顧問も記録を言わない。多分公式記録ではないからか。今だにタイムは謎のままである。
「同着!!」これで中学生活は終わった。
卒業式が終わり、身長190センチ以上の親友と職員室へ向かった。親友には3年からハンドボール部のキーパーをやってもらった。職員室に入ると野球部の番長グループが顧問を囲んで啜り泣いていた。野球部も色々あったからなぁ。ボクは親友と語りながら、どうする吉田、最後にお礼まいりでもするか?と話したが肝心な時に吉田先生はおらん。「プッ。帰るか。」親友と後ろ髪をひかれながら校舎を出て門に向かうと「おーい!大久保、平澤!」後ろからおっさんの声が。
親友と同時に振り返ると。「冗談は顔だけにしろよ!」吉田先生の最後の贈る言葉だった。「おまえもな、吉田!!」胸に込み上げるなにかを抑えて、ボクと親友は、声を張り上げて叫んだ。
親友と校門を出ていつもの一本道にでると桜の花びらが降り注いでいた。3年の担任だった女の先生が待っていて。握手した。「卒業おめでとう。」ボクは、ハグしたい気持ちを抑え一礼した。ハンドボール部の一年後輩の次のキャプテンと副キャプテンも待っててくれて「お世話になりました。」と、どうしようもなかった不良の後輩だったが、ちゃんと挨拶してくれた。後輩の女の子達にボタンをせがまれ[神風特攻]の裏ボタンを付けて
あげた。帰り道にある親友の家にいつものように寄ると。テニス部のキャプテンが惚れていた女子テニス部の子がボクを呼び出した。「ごめん、後輩の子たちにボタン全部あげちゃったんだ。」と言うと、深く一礼して帰っていった。
「罪な男だな、オマエは。」親友は言った。
いつもの花札大会で親友との3年間の中学生活を労った。夜に家に帰り、1人になるとビートルズのレコードに針を落とした。
ポールマッカートニーがレットイットビーと連呼していた。[すべてをなすがままに]和訳を眺め、ポロポロと涙が出た。
最後にもらった卒業写真の裏に、レットイットビー すべてをなすがままに と書き、中学生活にピリオドを打った。

    end

p.s.
   1年生の時の3年の先輩みたいに、ボク
 はなれたかな?
 そしてボクの保護観察はいつ溶けるの
 だろう、、。

 桜の散りはじめた、ある春の頃だった
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