私の履歴書

澤村 通雄

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第26章 和尚の街プーナ。

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和尚の街プーナ

アシュラムに近づくにつれ、西洋人達の姿が、よく見かけられた。
ここプーナには、世界中の人達が和尚のいたアシュラムに訪れるのだそうだ。
インドの悟りをひらいた人というと、何処かの山奥でひっそりと生活していたのかと思っていたが、和尚の存在は世界ではあまりにも有名で、今では毎年何万人もの人達が世界各国から訪れているのだそうだ。
多くの人達は母国で働き、お金が貯まったらプーナに滞在する。
ビザが切れる前に国へ帰り、またお金を貯めて来る。
という事の繰り返しの生活をしているらしい。
用は半分は自分の国、半分はインドというような生活をしている人が非常に多いらしい。
もちろん地元のインド人達も沢山いる。
EさんとNさんも、そういう生活をしている一人なのだ。

プーナステーションから約30分ほどボク達を乗せ走ってきたリキシャーは、ようやくアシュラムのゲートの前に着いた。
大きな門の前に、二人の番人の姿が見える。
西洋人とインド人のようだ。
その門を出入りする人々が、その門番に何かを見せている。
ゲートパスのようだ。
Eさんの話によれば、隣にある大きな総合病院で、エイズチェックを受けた後、陰性の者だけがアシュラムに入る資格を得られるらしい。
ボク達は早速、隣の総合病院へエイズの検査に行った。
タイでの一夜の事があったので、かなり不安だったが結果は陰性で、クリアした。
世界を放浪している旅行者などには、このエイズチェックで陰性の結果を得ることがかなりの冒険になるのだという。

そしてアシュラムのゲートの横にある、インフォメーションで、エイズチェックの診断書を提示して、写真を撮りゲートパスを貰い、そこに貼った。
次は宿だ。
EさんとNさんは、ここアシュラムの近くにアパートを借りているらしい。
ボクは一緒に住んでいいか聞いたが、駄目だった。
しょうがなく、インフォメーションで空いている宿がないか聞いてみると、アシュラムからリキシャーで10分ぐらいの所に、ホテルカピラという宿があるという。
一日50ルピー(200円)だそうだ。
とりあえず宿はそこにする事に決め、ボクはリキシャーに乗りEさん達と別れた。
Eさんによると、ここからは自分の旅だから自分の力でやれ、という事だった。
ボクはこんな所で放ったらかしにされて、後はどうしろというんだと思ったが、ホテルに荷物を置きアシュラムの中へ入れば、日本人も沢山いたみたいだし、何とかなるだろうと思う事にした。

リキシャーを走らせホテルに着き、フロントで慣れない英語で手続きを済ました後、建物の奥にある小さな小屋に案内された。
ここなら、一晩50ルピーだと言う。
中を見ると、3畳ぐらいの広さで机と椅子、そしてシングルベットが一つ置いてあるだけの、質素な部屋だった。
しかし、丁度ベットの横の辺りの壁に、小さな落書きがしてあった。
旅行者の一人が描いたのであろう。
広い海にヤシの木、得体の知れない鳥と、一輪のハスの花が描いてあった。
その絵を見てボクは、無性にこの部屋を気にいってしまった。
宿の人に、ここに決める事を告げた。
そしてドアの鍵をもらい、荷物を置きベットに横になった。
日本を出て4日である。
今回の旅は最初から1か月半と決めて出てきたが、まだ4日である。
というか、日本を出て初体験とムエタイを観たぐらいである。
ドラッグはおろか、瞑想もしていない。
一体、ドラッグと瞑想、どちらを先にするか決めてもいない。
ふと、横を見るとさっきのラクガキがある。
とりあえずボクは、そのラクガキを手帳に写した。
こんなしなびた部屋だけに描かれているだけでは勿体ないと、思ったからだ。
ボクはいつか、この絵を世に出すつもりで、写した。

さあ、宿も決まり寝る場所も確保したので、またアシュラムに戻ることにした。
リキシャーでホテルに来る道のりを覚えていたので、今度は歩いて行く事にした。
荷物は置いてきたので、身軽である。

昼中のインドの街はひときわ騒がしい。
沢山の道ゆく人々。
自転車に乗って何処かへ行く者。
荷物に野菜を乗せ何処かへ向かう者。
激しい勢いで走り過ぎて行くリキシャーの数々。
道の真ん中で牛が寝ている。
のら牛だろうか。
その、のら牛を避けながら沢山の人々が道を行ききしている。
インドでは、牛は神様の使いだそうだ。
神聖な生き物で、食べたりしてはいけないのだそうだ。

みんな何処へ行くのだろう、、、。
そしてボクは、これから何処へ行こうと
しているのだろう。
そんな不思議な気持ちにさせられる何かが、ここインドにはある。
遥か遠い日本という国から来た、ボクの心に人間の原点を感じる何かが、ここにはあった。
舗装されてない道のりを、ゆったりと歩きながらボクは思った、、、。
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