私の履歴書

澤村 通雄

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第25章 あー、憧れのインド。

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あー、憧れのインド。


2日後、次の目的地インドへ、EさんとNさんと3人で向かった。
飛行機はエアインディア、凄いオンボロで、本当にこれで遠いインドまで行けるのか心配になったが、貧乏旅行者たちは、こういう格安航空機で旅をするのだという。
スチュワーデスもインド人の女性で、なんとも無愛想であった。
8時間も飛行機に揺られ、やっとのことでボンベイ(現ムンバイ)空港に着いた。
機外に出ると夜だった為か、案外涼しかった。
空港を出ると、何人もの人が群がってきた。
「ババ、バクシーシ!(お金をくれ)」
こう言いながら、沢山の物乞い達が腕を引っ張ってくる。
中には、片腕や両足が無い者までもいる。
Eさんによると、インドでは身体に障害があったほうが同情されるので、わざと腕や足を切る物乞い達が多いという。
ボクはカルチャーショックを受けた。
皆んな、必死で生きているんだと。
EさんとNさんは、手ぎわえよくタクシーを拾い、ボクの手を引っ張って中へ入った。
すごい旧式の車である。
Eさんが言った。「ダダステーション!」(プーナ行きの列車の駅だ)
運転手は何度もキーを回し、ようやくの思いでエンジンがかかり、ボンベイの闇の中をタクシーは発進しだした。

途中、タクシーはスラム街の中を通った。
Nさんは、「いつ来てもすごい匂いだね。S君、スラムなんて初めてでしょう?」
下水や生ゴミの匂いだ。
こんな所で旅行者が外に出たら、身ぐるみ剥がされ、命の保証はないのだという。
ボクは初めて異国の地に足を踏み入れた緊張感を覚えた。
 
タクシーが、ダダステーションに着いた。
駅の構内に入ると、何人もの浮浪者達が生活していた。
歯を磨いている人や、糞をする人までいる。
杖を持ち、上半身裸の人もいる。
髪の毛はボサボサのドレッドヘアだ。
サドゥーという、修行僧なのだそうだ。
杖以外、一切何も持たず托鉢で生活しているらしい。
乞食みたいなものらしい。

汽車に乗り込むと、和尚の街(プーナ)までは、6時間ぐらいあるらしい。
硬い直角の木の座席に、3人は腰掛け。
途中、物売りのサモサ(芋の揚げ物)を食べ、眠りについた。
と、いっても座り心地が悪く眠れなかった。

うとうと、してきた頃に朝になった。
汽車から眺める田舎の風景が綺麗である。
ボクの脳裏にはベートーベンの田園が流れていた。
眠そうに座っているEさんが、「もうすぐ和尚の街、プーナだ、、、。」とボソッとボクに語りかけた。

いよいよである。
20世紀最大の人、今は亡き和尚が居た場所はもうすぐである。
和尚の亡くなった今でも、コミューンとして活動を続けているらしい。

20世紀のブッダか。キリストか。と、ボクは歴史の教科書で習った偉大な人物達と同じように、悟った人がこの現代に本当に存在したのかと、改めてワクワクしてきた。
この旅はボクにとって、人生の中でもっとも貴重な体験をさせてくれるような予感がした。
色々な思いが心の中を駆け巡っているうちに、汽車はいよいよプーナステーションに着いた。

駅を出ると、沢山のオートリキシャー(インドの三輪タクシー)が待ち受けていた。
ここインドでは、リキシャーなどはメーターはついているが、料金は事前交渉の事が多い。
旅慣れしているEさんは、リキシャーの運転手と値段交渉し、かなりの安い料金で、和尚のコミューン(アシュラム)へ行く事になった。
ボクら3人を乗せ、朝のプーナの街を、けたたましい勢いでリキシャーは走りだした、、、。

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