ブレイン エラー

澤村 通雄

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私の履歴書

第10章 プーナとゴア

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そして日本を発った19歳の私は、ここインドにいる。
インドの第一印象、ガヤガヤしている。
人が多い、自動車やオートリキシャーのクラクションの音。
物売りや物乞いが集まってくる。

私がそんなにお金持ちに見えるのか。
確かに、日本人であるだけで私はお金持ちなのだ。
インドにある程度滞在すると、わかることだ。
インドには、日本人というだけでお金を持っている人種、人のいい人種なのだ。
旅慣れしている日本人も沢山いる。そういう人間と、観光目的で来ている短期滞在者は、すぐに見分けるのだろう。
初めてインドに来た私は、カモ中のカモである。
幸いにも、日本で知り合った露天商のおじさんと、トランジットで立ち寄ったタイで落ち合ったので、インドには一人で来たわけではなかった。

そのおじさんは、何十年も前から、毎年インドに住んでいる、旅の達人であり、冒頭で紹介した、オショーの弟子でもあるのだ。

なんだかんだで、オショーのアシュラムで生活し、すぐに飽きたのでヒッピーの聖地でもある、インドのゴアというところに一人で移動した。

おじさんは、危ないし汚いからやめておけ、と言われたが自分のなかではここからが旅の本番、プーナにはおじさんの付き合いで行っただけで、本来はビーチが目当てだったのだ。

早速、ゴアまでの深夜バスのチケットを買い、ここからが一人旅のスリリングな人生の幕開けであった。

一晩バスに揺られ、朝早くゴアの街マプサに着いた。

マプサ!マプサ!というバスの乗務員の声で、一晩緊張とジェットコースター並みのスリリングなバスの運転で眠れなかった私は、小さなリュックを片手にバスを降りた。
さあ、ビーチにはどうやって行くのだろう、と思っていると、アンジュナ!アンジュナ!とバイクが沢山止まっている現地の若者らしき集団が声を掛けてきた。
料金は最初に交渉制だと聞いていたので、何人かに話をして一番安いバイクに乗ることにした。
かっこいいバイクだった。排気量は500ccぐらいか、他のバイクもデザインは違うが同じ車種らしい。
エンフィールドというイギリス生まれでインドの工場で作られるバイクだそうだ。
単気筒のエンジン音が腹に響く。
1時間ほど山道をゆったり走ると、すこし開けたところでバイクは止まった。
アンジュナ。運転手がそう言ったのでお金を払い、私はバイクを降りた。
レストランの前だ。
とりあえず入ってみた。
席に着くと、どう見てもオカマちゃんである店員さんが、腰をクネクネさせながらメニューを持ってきた。
朝だったので、トーストとフライドエッグを頼むと、私にウインクして小指を立てた手で店員はメニューをさげた。
海外ではよくあることなんだな。
私は妙に納得して自分に言いきかせた。
早くビーチに出たかった私は、そそくさと食事を済ませ、レストランを出た。
海の潮風を感じ、微かに聞こえる波の音の方へ私は歩いて行った。
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