I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

文字の大きさ
上 下
170 / 173
2nd season 第四章

166 暗中模索

しおりを挟む
「アンタ、言ってることとやってることが全然逆よね?」
「ふっ、わが妻よ、理想と現実は違うのだよ!」

市場はまさに宝の山だった。
あちらの世界で見たことあるっぽい物から、二つの人生で初めて見るものまで。
日本のものとは微妙に違うが、米と醤油は爆買いした。
こういうのはアレだ、食べ続ければ慣れるもんだ。

「主様っ!酒もっ!酒も買ってくれっ!見たこと無いのがいっぱいあるぞ!」
「おう、買え買え!今日は無礼講じゃ!」

ドンッ!

「おうニイチャン!どこに目ぇつけてやがんだっ!」

なんだかお約束っぽいのに捕まった。
だが米を手に入れた俺に死角は無いっ!
キャストオフ マイフーーーードッ

バサリッ

「ひっ!?」

ふむ、悪は逃げ去って行った。

「アンタのそれ、こっちの人から見たら随分アレな感じみたいね?」
「ああ。超絶技巧防御術を超える、じつに宗教家らしい、平和的ソリューション解決策を手に入れたようだ」

それにしても魔族というのは随分と雑多な種族が入り乱れてるもんだ。
向こうの大陸で出会ったら問答無用で攻撃しちゃいそうな異形も居れば、傍目には人族と区別がつかない奴もいる。

「主様、実は魔王だったんじゃ・・・」
「まぁ、殺害件数的には資格があるかもな」

人族と魔族には決定的な違いがある。
魔石の有無だ。
おそらくモンスターと同じで、魔族を殺せばレベルが上がる気がする。
魔族にもレベルやギフトがあるのかはわかっていない。

「よし、今日はこの辺にして宿に戻ろう。色々相談もしたいしな」
「「「「「はーい」」」」」

宿へ戻る道すがら、雑踏の声に耳を傾ける。
どこにでもあるつまらない会話、そこからこの大陸を学ばねばならない。

「ほんと魔族って、想像と全然違いましたねー」
「ああ。だが油断するのはもう少し事情がわかってからだな。まだ何があるか予想もつかない」

宿へ着くと既に夕の刻。
両替もした事だし、とりあえず五日分くらい部屋を借りておこう。

「あー、オヤジさん。両替して来たんだが・・・今は忙しそうだな?」
「わりぃな。明日にしてくれるか?」
「構わんよ。あと五日ほど泊まりたいから、明日まとめて払おう」

「宿にいると、なんだか昔が懐かしくなりますね」
「そうだなー。白兎亭も今じゃ大企業みたいだな」

階段を上がり、それぞれの部屋に別れる。
が、数瞬の後には全員が聖都神殿に集まっていた。

「はいっ、それでは『第一回、魔族って思ったより良い人っぽいけど、マジどうやって洗脳すんの会議~』拍手~」

ぱちぱちぱちぱち

「はいっ、これ迄の会議と大きく違うところが一つあるぞー、なんだかわかるかー?」

「えっ、何かしら?」
「うーん、あっ!主様っ!おれっちわかったぞ!」
「はい、ライザ、言ってみたまえ」
「ズバリっ!眉毛が無いっ!」

「・・・フレッド。嫁の躾は夫の役目だ」
「ははは、部下の躾は上司の役目でもあるぞ?」

「ふぅ・・・みんなわかんないみたいだな?正解は、俺が答えを持ってない初めての会議って事だ。『コツコツやろう』以外に何も浮かばんっ!」

「ねぇ?向こうにも神殿ってあるんじゃないの?こっちのときみたくプレイオス様に降臨お願いしたら?」

「仮にプレイオス様が降臨されたとしても、今回は難しいだろうな。何しろ俺達に、魔族を率いる力が無い」

「「「あー・・・」」」

「そもそも私達って、魔族とやりあって勝てるんですか?」

「ニェリーザの言ったとおりの強さなら、少なくとも平均的な魔族を三人がかかりくらいならいけると思う。ユリアは逆に三人くらいなら殺れるんじゃないか?俺だと10人とかそんな感じか?」

「うーん、十人殺れるくらいじゃ魔王にはなれないわわね?」
「そうだな。っていうかなりたくないぞ」

「うーん、ねぇ?そろそろあたしらにも教えてくれていんじゃないの?アンタがなんでこんな必死に神理教の布教してんのか?」

・・・ふむ。確かに、最初は隠す事にしてたけど、むしろ皆の方が大丈夫なのかもしれないな、追加要件は悩むところだけど、こっちはそもそも隠す理由が無い。
ちょっとこっ恥ずかしいだけだ。

「あー、そうだな。コレを知った時、俺、めちゃくちゃショックで、だから皆には言わない事にしてたんだが、俺達も随分図太くなった。だからもういいな?」

「まぁ、この中で一番メンタル弱いのって、主様ですからね?」

「うん。自覚はある。で、俺が必死になり始めた理由なんだが、前の教皇に呼びだされた時、ホルジス様が軍団連れてきたろ?覚えてるよな?」

銀色の天使軍団?」

「そう、アレ。多分こんだけ強くなった俺達が全員でかかっても、一体倒す事も無理だろ?アレは?」

「そうですねー。そもそもなんて考えが浮かぶ相手じゃ無かったです」

「軍団があるって事は相手が想定されてる。つまり、アレと化け物が存在するわけだ。俺達の敵側に」

「「「「あっ・・・」」」」

「そんなんどう考えても無理だろ?ホルジス様達が負ければ、俺達に成すすべは無い。だから俺達に出来ることと言えば、神力というエネルギーを提供しまくるしかない」

「どんな、敵なの?」

「それはわからん。だが、頭の中を覗けるホルジス様が否定しない。しかも400年ぶりに降臨するくらいだ、それなりに焦った方がいいんだと思う」

「やっと合点がいったわ」

「しかも俺が新大陸に行くのも歓迎された。つまり、それが必要だって事なわけだ」

「結構プレッシャーですね?」

「まぁ、義務じゃ無いが、俺達しか動いてないんだ。しくじれば、世界が終わるかもしれない・・・と、実はもう一つ、こっちは後からだが、理由が出来た」

「・・・アベルさん・・・ね?」

「ああ・・・そのな?アベルの魂は、転生の輪に戻さず、ホルジス様に保管して貰ってる。肉体は滅んだから、生き返らせるのは無理だ。でも、神界全体が満場一致で『あいつら頑張ったから何か褒美をやろう』ってくらいの結果が出せれば、何かしら出来る事があると思うんだ。大勢殺してきた俺が、自分だけ一人の死に執着するなんて虫のいい話だが、俺は我を通す」

「それで・・・あんまり落ち込んで無かったんですね」
「主様の性格だったら、もう立ち直れなくなるのが自然だもんね」
「なんで教えてくれなかったのですか?」

「あー、まぁ、確信があるわけじゃないし・・・なんていうか、ちょっと言い出しにくかった。こっ恥ずかしいし」

「バカね?」

「そっかー。たいちょーのこと、諦めてなかったかー」
「まぁ、ベタな手だが、例えば誰かの子に、アベルの魂を入れて貰うくらいの願いなら、実績次第で頼めそうだろ?理を曲げるわけじゃないし?」

「そうですよっ!新大陸制覇、ちょっとやる気出てきました!」

「よしっ、じゃ、すぐに解決策は見つからないだろうが、根気よくアイデア出してくぞー」

予想通り、コツコツ情報集め以外の結論は出なかった。
だが、皆と目的を共有した事で、グッとゴールが近づいた気がした。

しおりを挟む
感想 240

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...