I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第四章

160 隠れ里

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「と、いう訳で、あの辺りはダークエルフが奴隷紋で人間を支配している土地っぽい」
「ふーん、亜人が支配層って、随分違うわね?」

「主様!解放するんだろ!?」
「いや?たぶんしないぞ?」
「なんでだ!」

「いいかライザ?奴隷なんてこの大陸にも沢山いるだろ?人間が人間を奴隷にするのは良くて、亜人が人間を奴隷にするのはダメなのか?」

「ぐっ・・・わからんっ!」

「あー、もっと判りやすくしよう。そうだな。嫁がいる男が、他の女を抱くのは悪い事だよな?」
「当然だ!」
「つまり俺は極悪人だ。正義の味方がやって来て、シリア以外を全員連れ去っても文句は言えないよな?」
「そんな事は無いっ!」
「何故だ?だって悪いのは俺だろう?」
「この家にはこの家の事情ってもんがあんだ!よそから来た奴にどうこう言われる筋合いは・・・・・」
「まっ、そういう事だな。基本的には」

「だが隊長ならっ!」

「ああ、アベルなら助けようとしただろう・・・その場合、良くて俺達が全滅、悪ければこの大陸の人間が全て奴隷としてさらわれる事になったかもしれない。いいかライザ?あの大陸の力は、俺達より圧倒的に上だ。助ける助けないなんて選択肢はそもそも無いんだ。俺達の力じゃ、助けられない・・・まっ、あくまでも今ある情報では、ってとこだけどな」

脊髄反射で目的を見誤ったりしない。
新大陸を求めたのは大量の神力をかき集めるためだ。
ホルジス様だけじゃない、更にそのが納得するだけの揺るぎない実績が必要だ。
その実績をもって、俺のを聞いてもらう。
それが本筋だ。
ホルジス様もそれがわかっているから、ヒントをくれないんだろう。

そしてもうひとつ。
こっちはだが魔法陣の知識を、そのヒントでもいいから手に入れたい。
そう、爆撃への対抗策を、俺は魔法陣で実現しようと考えている。

ゆえに、よその大陸の事情などどうでもいい。
だが、布教に必要な事はやるつもりだ。

「当座の方針だが、新大陸にはまず、オレ一人で行く。充分に情報が集まったら、何をどう手分けするか相談しよう」
「・・・そうね。あたしやユリアが出てったら、なんか話がややこしくなりそうよね?」

「想像してた新大陸の旅とは随分と変わっちゃいそうだけど、まだ最初の一歩でしか無い。ヘマをすれば俺たちだけじゃない、この大陸全土を巻き込む大戦乱、それも勝ち目の薄い戦いになる可能性が否めない。慎重に情報を集めよう」



~~~~~



ブゥンッ

いきなり至近距離から攻撃される事態を警戒しながら、昨日の洞窟に転移する。

「ひっ!」
「ほ、ほんとうに現れたぞ!」

ふむ。一応武器は持っているが、構えては居ない。
人数は昨日よりも増えて、三十名といったところか。

「静かに!・・・御使い殿、神話は読んだ。朧気ながら意図するところはわかる。だが、一朝一夕に信じよと言われてもそれは無理だ」
「ふむ。それは理解できる。今日はできうる限り皆の質問に答えるつもりだ。言えぬことは多いが、それは許せ」

用意された椅子に腰掛ける。

「では最初の質問だ。貴方は昨日『ホルジス神の下僕』と言われたが、間違いないか?プレイオス神では無いのだな?」

プレイオス?誰だろ?まぁ隠す必要は無いな。

「ああ、ホルジス様で間違いない。プレイオスという方とは面識が無い」

ざわっ ざわざわっ

「その言い振り・・・神は?実在するのか?」
「俺が『実在する』と断言したところで信じられぬのだろう?そうだな・・・お前たちが努力するなら、ご降臨を乞う事は出来るだろう、時間はかかるがな?」

あ!『俺』とか言っちゃったよ。

ざわざわっ ざわざわざわざわっ

「ならばなぜっ!なぜ神は我らを救わない!なぜ奴らの残虐を許しているのだっ!」

うん。この質問は絶対くると思ってた。
俺はゆっくりと、場の全員を見回して告げる。

「ふむ、まだ気付いていないようだな?・・・無理もない・・・が、理解せよ。お前たちは既に救われている。神々は、今この瞬間にも、我らを救い続けている」
「そんな訳は無いっ!現に我らはこうして隠れ生き延びるを強いられているっ!」

「ふむ。勘違いしているようだな。そもそもお前たちが生きていられるのは何故だ?」
「それはっ!我らが慎重に身を隠して「違うっ!」」
「お前たちが生きていられるのは、空気があり、水があり、食す物が存在しているからだ。神の加護無くして、偶然それらが在ると思うのか?仮に神がお前たちのなるものを皆殺しにしたとして、食料が何処にも存在せず、それどころか空気も水も無く、それでもお前たちは生きていられるのか?」

「なっ・・・生きられるわけが無いだろう」

「にも関わらずお前たちは『救われていないと言い放つ』。既に身に受けているにすら感謝せぬものに、何故それ以上の救済を神が成すなどと考えられるのだ?神はお前たちの下僕では無いのだぞ?」

「・・・」
「そっ、そんなものは詭弁だっ!」

「ほう、どこがどう詭弁に聞こえたのだ?指摘してくれるなら理解出来るまで説明しよう。それこそが俺の使命だからな?」

「くっ・・・」

「ふむ・・・少しばかり意地が悪かったな、許せ。だが、神への祈りが失われて久しい。脅しでは無いのだ。今日ある水が、明日もある保証など、既に無いのだ」

「御使い殿は我らにどうせよと?」

「祈れ。今日も変わらず生ある感謝を、日々祈れ。それのみだ」

「あんたの言いたい事はわかった。それが道理である事も理解した。だが無理だ。町を追われ、家族を失い、ろくに食べる事も出来ずに山奥に隠れ住み、その生に感謝しろと言われても・・・そんな気持ちになれる訳がない」

まぁ、そうだろな。
俺だって皆が居なかったら、神に感謝なんてしないだろう。

「ふむ、お前の言う事はよくわかる。そうだな・・・いや、その前にそもそもの問題が片付いていない。俺を審査するのだったろう?まずはその話を片付けよう。お前たちが受け入れぬというなら俺は去る。ここの事は綺麗サッパリと忘れよう。お前たちに止める術が無い事は理解していよう?」

「・・・そうだったな。既に聞くまでも無いとは思うが、この者を里に招くべきでは無いと思う者はおるか?」

シーン

「と、いう訳だ、まずは御使い殿、そなたの審査は問題無い」
「そうか、ならば早速里へ案内して貰えるか?状況を知りたい。必要と判断したら、今日の糧くらいは提供しよう」

「ふむ・・・案内するとしよう」

長老達のあとについて洞窟を進む。
足元はゴツゴツとした岩場。
松明の灯りでは歩き難い事この上ない。

「結構遠いんだな」
「もうすぐだ」

洞窟の先に光が見える。
幾人かの男がその光へ駆けて行った。

「ここだ」

光の向こう。
上を見上げると切り立った崖が遥か上へと伸びている。
恐らくここはクレパスの底。
幅500m程の巨大な谷間に、彼らの里はあった。

パッと見たところで、200軒程の粗末な小屋がひしめき合ってる。
こんな谷間ではろくな作物も育たないだろう。

一行はズンズンと集落を進んでゆく。
飢えているという程じゃなさそうだが、まぁ、間違いなく豊かでは無い。

「ここが里の中心だ」

「そうか。ときに、この世界にもオークは居るのか?」
「居るが?それがどうした?」

「ふむ、取り敢えず、コレを皆に配るといい」

オークの死骸を5つほど並べる。
肉はスタンピードの度にとんでもない量がたまり続ける。
少しばかり潰れているが、食えば同じだ。

「なっ!一体どこから!?」
「昨日も見せたろ?こちらも聞きたい事がある。どこか話せる場所はあるか?」

集会所兼長老の自宅なるボロ屋に場を移し、俺は根掘り葉掘りこの大陸の事を聞き出した。
その結果・・・この大陸と関わるべきか否か、一層悩む事態となった。
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