I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第三章

146 シリア暗殺計画(9)

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遺体をIBに収納した俺は、ひとまず神殿に戻った。

「・・・どう伝えればいいのか・・・ガザル村の荘園は焼き落とされてた・・・そして・・・遺体の損傷が酷くて特定できないが、俺達の家族が・・・一人殺された・・・たぶん・・・ライザかアベルだ・・・」

「「「「「なっ!」」」」」

「すまない・・・俺もまだ整理できてないんだ・・・でも、遺体は見ないほうがほいい・・・ユリアが戦った形跡があった・・・敵兵の死体も、少なくとも500はあったと思う」

「主様っ!さがさなきゃっ!」

「ホンジュラス王国は情報が少ない・・・地理、情勢、なんでもいい、みんなはここで情報を集めてほしい。俺は現地で情報を探す」

「私達も行きますっ!」

「ダメだっ!・・・たのむ・・・敵が何なのか・・・どれほど強いのか、まだわからないんだ・・・手分けして探してたら・・・また誰かが襲われるかもしれない」

「・・・わかりました」

「こまめに戻るから・・・みんな、絶対に一人にならないでくれ。それじゃ、行ってくる」

「「「「「お気をつけて」」」」」



~~~~~



誰かが死んだ・・・誰かって何?
まるで悪い夢でも見てるみたい・・・。
あんなカイン様・・・久しぶりに見たわ。

この七年、ずっと魔物を相手にして、誰も欠けることなく来れたのに・・・。
アリスにどう伝えたらいいのか・・・ううん、あの子ももう13歳・・・ちゃんと伝えなきゃいけないわ。
でも・・・お願い・・・どうか無事で居て・・・



~~~~~



「ほぅ・・・ホンジュラスで混乱があったと?」
「はい、ペルシラ陛下。事態の収束まで、会議は延期させて頂きたく、お知らせに上がった次第」

「ふむ・・・承知した。して、猊下は?」
「はい。現地で直接処理にあたっております・・・また一つ、国が消えるやも知れません・・・」

「ふむ・・・しかしわからぬ男だ・・・聖職者のようであり、商人のようであり・・・にも関わらず、誰よりも多くを殺し、誰よりも多くを生かしている・・・貴殿とも稀有な縁と聞くしな?」
「ええ・・・本当にわからない・・・それでいてわかりやすい・・・そんなお方です」



~~~~~



ガザル村から少し離れた林の中に転移した俺は、街道を南下して最初の街へ。
エルダーサと似たような街。
Aランクの冒険者ギルドカードを提示し、傭兵が多く出入りしなかった尋ねる。

当たりだ。
ここ最近傭兵が増えていて、昨日は門の閉まる直前に、50人近く戻ってきたという。
こんな遠くの国でさえ、Aランクの効力は絶大。
重要な任務中の為、言いふらさぬよう門兵に言い含める。

情報収集には・・・この服は向かないな・・・。
物陰に入ると同時に、戦闘服から平服に
宿の場所は門兵から聞き出し済みだ。

「あー、オヤジさん、朝飯をくれ。酒も頼む」

古びた食堂の一角に腰をおろし、聞き耳を立てる。
傭兵らしきグループが二組、冒険者が四人と二人。

食事が喉を通るとは思えないが、朝から一人、んで見せれば・・・

「おう、ニイちゃん、朝っぱらから随分なご身分じゃねーか?」

うん、ガラの悪い傭兵に絡まれる。

「いやぁ~、閉門に間に合わなくて、空きっ腹抱えて門の外で転がってたんすよ~、旦那もいっしょにいかがっすか?オヤジさんっ!こっちの旦那にも酒を頼むっ!」
「おっ?なんだ、気前がいいじゃねーか?」

「やっぱほら、ひとり酒はつまんないじゃないっすか?よかったら、お仲間のみなさんもいかがっすか?」
「ニイちゃん、俺達もご相伴にあずかっていいのかい?」
「もちろん。家おんだされて放浪の旅って奴をやってんすけど、金だけはちゃんとくすねてきたんで、おやっさんっ!酒を頼むっ!つまみもなっ!・・・男なら、やっぱ剣に生きるとか、憧れますよねぇ?」

「おう、まぁな?」

「俺も憧れてんすけどねー、腕っぷしの方はからっきしで・・・旦那がたは戦争とか行ったことあるっすか?」

「へっ、おれたちゃー毎日が戦争みてぇなもんよ」
「おうよ。昨日だっておめぇ?バケモノ相手に大立ち回りよ!信じられっか?千人の兵隊が半分も殺られたんだぜ?まぁ、俺達くらいになると、そんな修羅場でもこうして勝ち残んだけどな?」

こみ上げる殺意をぐっと抑える。
騒ぎを起こせば情報が消えるかもしれない。
今はみんなを見つけるのが最優先。

「うへぇ~、もしかして北の戦場っすか?俺、昨日通ったんすけど、もう、死体だらけでおっかなくて、マジちびりそうっしたよ?」

「うわっはっはっ、ニイちゃん、だらしねぇな?」

「いやぁ~、面目ないっ!いったい何があると、あんな事になるんすかね?」

「あー・・・」

たった四人の女を、千人で襲ったんだ、いくら傭兵でも言い淀むか・・・。

「ありゃ魔族だな。うん、間違いねぇ」
「おっ、おう。バケモノ退治って聞いてたが、まさか魔族とはな?」
「うっへぇ~魔族っすか?」

「おう。村に潜伏してる魔族の討伐に向かったのよ?二体は逃がしたが、残りの一体に500人はやられちまった。信じられっか?五百だぞ?」

ユリアだ・・・ユリアがたった一人で・・・だが、少なくとも二人は逃げ出せた?

「その魔族はどうなったすか?まだウロついてるっすか?」
「いや、凄腕の弓使いが仕留めたみてぇだぞ」

ユリア・・・いや、まだだ、この目で確認するまでは信じない!・・・ユリアだって、俺が死んだと思い込んで、それで生き別れになったんだ!

「うへぇ~、その、魔族の死体って見れたりするっすか?俺、魔族って見たことないんすよ!」
「どうだろなぁ?雇い主が殺られちまってっから、そのまんまあそこに落ちてんじゃねーか?」

「そうっすかー、残念っす・・・でも、逃げた魔族って、捕まって無いんすよね?もしまた戻ってきたら・・・」
「あー、そうだなー。俺たちゃかったるくて一晩泊まったが、仕事が終わってほとんどの連中が帰っちまってっから、こんな街、ひとたまりもねーんじゃねーか?」

「おっかねぇー・・・その魔族ってどっちに逃げたっすか?同じ方向には行きたくねぇっす!」
「あー、北だな?まっ、あっちには近づかねぇ方がいいかもしんねぇ」

「あざーす。さっ、旦那がた、もっとガンガンやっちゃって下さいっす!」

すぐにも飛び出したい気持ちをぐっとこらえて、雇い主が誰だったのか、どんな人間が集められたのか、根掘り葉掘り聞き出した。



~~~~~



あるじ様っ!奥様がっ!奥様とライザが戻りました!無事ですっ!」
「ほんとかっ!」

町の外に携帯転移門を隠し、聖都に戻ると吉報が届いていた。

「こちらですっ!」

部屋に飛び込む。
ほんの2日しか経っていないのに、もう何年も生き別れていたような気がする。

「シリア・・・ライザ・・・良かった・・・ほんとに良かった・・・」
「あんた・・・アベルさんが・・・ユリアも・・・あたしが狙われたの・・・なのに・・・なのに・・・」

腕の中で嗚咽を漏らすシリア・・・華奢な身体がカタカタと震えている・・・俺の、大切な女たち・・・。

「よく生き残ってくれた・・・それだけでいい・・・よしっ、幾つか情報がある、聞いてくれ・・・いや、その前に何があったのか、教えてくれ!」

再び戦場跡に戻った俺は、全ての死体を回収してきた。
氷の階段も、傭兵たちのむくろも、何もかも全てだ。
もしもユリアが死んでしまっているなら、遺体があったはず、だが無かった。
きっと生きてる。
生きてどこかで傷を癒そうとしているはずだ。

「うん、俺が聞いた話と概ね一緒だ。ターゲットはシリアだった。人族至上主義の一団が千人の傭兵を雇っていたらしい。そしてその半分は、ユリアが一人で倒したそうだ。最後は射抜かれて死んだと聞いたが、教えられた戦場にユリアの遺体は無かった。だから、生きていると思う」

「アンタっ!お願いっ!ユリアを探させてっ!」
「「「主様っ!」」」

傭兵たちが嘘をついているとは思えなかった。
大規模な罠はもう無いはずだ・・・考えられるのは2パターン。
ユリアが自力で逃げているか、何者かに拐われたか・・・いずれにしても一昼夜、後者なら50km圏内のハズ・・・いや、シリアのように高レベルのものが連れ去っていれば300kmも有りうる・・・どうする?

「わかった・・・但し、二時間待ってくれ。ガザル村を中心に、転移門の包囲陣を敷く。みんなが動くのはその後だ。ヤザンっ!」
「はっ!」
「動かせる暗部を全部集めろ。他の国が手薄になっても構わん。全てだっ!」
「はっ!」
「全員に言って聞かせろ!邪魔するものは殺していい!戦争になっても構わん!何が何でもユリアを取り戻すっ!いいなっ?」
「「「「「はっ!」」」」」


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