I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第二章

124 開戦

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昇る朝日を背後に背負い、俺達は西門の前、岩階段の上に立っている。
南北と東の門の前には同様の黒い岩階段。
ヴァルダークさん、ニェリーザさん、フレッドと冒険者たちをそれぞれ配置した。

敵には聖剣がある、しかも直前まで一般人を装い潜伏していた。
ならば攻城兵器は無く、ザックの聖剣で門ごとかんぬきを叩き切るつもりだろう。
エクスカリバー聖剣なら岩をも切り裂くことが出来る。
だが、それはあくまでも物理の力だ。
よりも長い物を両断するような不思議アイテムじゃ無い。
10mの岩階段を事なら出来ても、通れるようにするにはそれなりの時間がかかるだろう。

もっとも、奴らを外城門まで辿り着かせるつもりはない。
外城門の上に群がる群衆へ俺は振り返る。

「聞けっ!聖都の民よっ!神理の信徒よっ!約束通りこの首、自らの足で運ぶとしよう!」

ざわざわっ ざわざわっ

「勿論行くのは俺一人だ。大切な兵を、我が臣下を、この程度の事で消耗させるわけにはいかぬ!」

ガヤガヤガヤガヤッ ガヤガヤガヤガヤッ

「聞けっ!・・・いや、聞かなくて良い・・・ただ、見るがいい。神理に仇なすものがいかに下されるかを、その目にただ焼き付けるが良いっ!」

バサッ

再び民衆に背を向ける・・・うむ、キマった!

「カイン様、ご武運を・・・ちゅっ」

ラティアがほっぺにちゅーしてくれた。
うん、エロくない、エロくない分グッと来るぜ!

エマが、ライザが、ミランにスージー、そしてリシェルとアベル、皆それぞれ言葉をくれる。
ユリアはぐっと口を結んだままだ。
そんな必要は無いのに、また責任を感じてるのだろう。

「ユリア、愛してるよ。アリス、気をつけるんだぞ?」

「アンタ・・・調子に乗って転ばないでよ?」

じっとまっすぐ、言葉とは裏腹に涙を溜めた瞳で見つめるシリア、俺はその尻を抱き寄せ・・・モミモミモミモミ・・・。

「アンタ・・・マジで余裕ね?」
「うむ・・・一度大観衆の眼前でセクハラしてみたかった・・・今日なら怒られないっ!」
「・・・はぁ・・・これで死んだら目もあてらんないわ」
「ふはははははっ、俺は死なんっ!帰ったらマイクロビキニが待っているっ!ふはははははははっ!」

わけのわからない妄言を吐きながらブロックを飛び降り、西の大軍へ向けスタスタと歩き出す。
走ったらマズい。
砂煙があがれば敵襲と思い、身構えられてしまう。

敵兵の数は1万2千。
理想で言えば百十列縦隊の正方形。
それなら一辺は77メートル。
俺の持つ最大質量、100m×100m×10mの大岩盤一枚でケリがつく・・・まっ、そんなにうまい話は無いよな。
大軍を見せつけて聖都にプレッシャーを与えたいんだろ。
兵の群れは少なく見積もっても幅500m。
出合い頭に殺れるのはいいとこ千人だ。
まぁ、その千人にが入ってればそれでいい。
あとはいつものように、ガムシャラにやるだけだ!

数分歩いたところで問題に気が付いた。
外城門からミズーラ軍の布陣まではおおよそ3km。
そして常人っぽい歩き方は時速6km/h、早足でごまかせるのがせいぜい8km/h。
つまり・・・会敵まで20分もかかるわけで・・・なんていうか間抜けなひととき・・・どうしよう?

いや、一応命とかかかってる話だし?間抜けとか気にしてる場合じゃないんだけど・・・観客の皆さん、帰っちゃわない?
うっわー、どんどんアドレナリンが引いてく、もっとテンション上げてかないと無理っしょ?
あんないっぱい居るんだよ?
まともな頭じゃ突っ込めないって・・・よし、こんな時は脳内ハードディスクのお宝映像を再生しよう。

やっぱベストショットはユリアのだよね?
あれは衝撃だった・・・もういきなりチンコ勃ってきたし。
いやでも、新婚初夜のシリアも良かった。恥じらいマックス!みたいな?
うん、やっぱ俺の中でもツートップはこの二人だよね。
だが他がオマケかと言えばそんな事は断じてない。

アベルのダイナマイトボディーにガッツンガッツンぶっ込むのもテンション上がるし、ラティアのお姉さん目線で優しく尽くしてくれるのとかもたまんない。
そしてエマの拘束プレイも絶対外せないよね?すっげぇタギルし、お互い人には絶対見せらんない表情かおんなっちゃってるし。

おっ?なんだあっと言う間じゃん!
やっぱ先頭はザックさんなわけだ、要塞フォートレス勢揃い・・・じゃないな?メルさんが居ない?・・・まっ、どうでもいいか。

あー、憂いのイケメン顔だよ。
アレ、絶対言うね?

『カイン君・・・残念だ』

もうね?
フツメンに負ける可能性とか微塵も意識してないのがムカつく。
俺達が必死に身を削って努力して、ちょっとずつちょっとずつ距離詰めた女の子、なんの努力もせずにパクっとイってポイよっ?
モテる事を自慢すらしない。
それが普通で、恵まれてるとすら思ってないから。

いや俺だってわかってるよ?
そんなん言っても仕方ない事だし、どっちかって言ったらそれでもOKで股開いちゃう女の方を責めるべきだし?
でもね?こっちだって仕方ないじゃん?必死に生きてんの!俺達っ!マジ食い散らかすのやめてくれる!?

・・・やばい、今は完全にブーメランだった。
うん、反省。もっといい人になろう・・・んで、とりあえず社会のために、目の前のイケメンは抹殺しとこう。

彼我の距離40m。
武器も持たずに手ぶらで歩いてきた最高権力者。
驚きの声、嘲笑、ヤジ・・・いろんな声が聞こえる。

そしてこれ以上近づいたらアイツは絶対言う。
いかにも物憂げな顔でキザったらしく。

だが、言わせないっ!

眼の前に突如現れた10mの大岩。
裏側を俺が人外スペックで駆け上がってるなど想像もしないだろう。
そして飛ぶっ!
高くっ!遠くっ!あのスカした顔の真上まで!

25万トンの大岩盤。
それを取り出す直前に目が合った。
おごりも憐れみも無い、ただただ驚き。
鳩が豆鉄砲喰らったようなマヌケヅラで、イケメンは死ねっ!

ブチブチブチブチブチブチブチブチッ ズッ ズーンッ!

うん、やっぱ嫉妬してたわ、俺。

口上も無ければときの声も無い。
戦闘が始まったと理解するには常識が邪魔をするのだろう。
静寂の中、ザックの墓標となった100mの石舞台を俺は走る。
端まで10m。
接地直前の靴底から石階段を出現させ、トップスピードで駆け上がる。

地上20mからの跳躍。
ムーンサルトで逆さまに廻りながら、10mブロックをバラ撒いてゆく。

ブチッブチブチッ ブチブチブチブチッ

「弓隊っ!ってぇーーーーーっ!」

我に還った指揮官が怒声をあげ、数千の矢が降り注ぐ。

トンッ

足元の10mブロックを収納し、自由落下で接地直前に3mのミニハウス岩屋に籠もる。
標的を失った数千の矢が、背後に居た兵たちの命を奪ってゆく。

ぎゃあぁあっぁぁぁ!
痛っってぇぇえっぇ!
助けてくれぇぇぇぇぇ!

「ゆっ!弓はダメだ!長槍隊っ!すり潰せっ!」

大軍同士の戦いでは、指揮官を失ったほうが圧倒的に不利となる。
だが、この状況においては、指揮が機能してくれていたほうがありがたい。
統制の取れた攻撃ほど、俺の卑怯さとは相性がいい。

岩屋を収納して再び階段を駆け上がる。
蓋をしてしまえば槍では何も出来ない。

ブチブチッ ブチブチッ

人間のひき肉が、俺のブロックを赤く染める。
そう・・・黒いブロックの正体は、こびり付いたモンスターの血肉だ。
元は全て同じ灰色。
それが染まった分だけ、俺は人間を辞めている。

「魔法部隊っ!何とかしろっ!」

虎の子の魔法部隊のお出ましだ。
射程が短い分、フレンドリーファイヤー同士討ちになりにくい。

だが、当然それも対策済み。
九つのブロックを敷き詰めて、その上に二段、三段と積んでゆく。
四段目に上がれば、俺に届く魔法は無い。

ブチブチッ ブチブチッ

高給取りの魔法兵達が成すすべもなく肉塊となる。
ここまで全て想定通り。
削ったのは二割だが、弓兵を封じて、魔法部隊を潰せたのはデカいだろう。

っていうか勝ったくさくね?
勿論昨日のシミュレーションで、を撃ち破る策も幾つか発案されてるが、この土壇場で冷静には考えらないでしょ?


~~~~~


「今の所、順調ね?」
「主殿らしい、戦うものの矜持を端からへし折っていく戦術だな」
「やられた方は溜まったもんじゃないよねー・・・戦争しに来たはずが、遭遇するのは鉱山事故よ?」
「落ちてくる岩に向かって『突撃ぃ~』とか言っちゃってるのかな?」
「しかし・・・これは民衆に見せてよかったのか?むしろ逆効果のような・・・」
「そこ、微妙よね?どう見ても英雄の戦い方じゃないわ」
「主様、生粋のフツメンですからねー」


~~~~~


「をい、をい、なんだこの喜劇は?」
「これはちょっと想定外でしたね~どうします?」
「はぁ~、貰った金、もう使っちまったんだよなぁ~。なんとかしねぇと皇帝様にブッコロされんだろ・・・」

土魔法・・・じゃぁねぇよな?
いくらなんでもマナ魔力が持たねぇだろ。ポーション飲んでる風でもねぇし・・・しかも岩に見たことねぇ字が書いてある・・・神殿に伝わる秘術・・・そういう奴なのか?

「で、どうすんだい?」
「っせぇなぁ、今考えてんだよっ!」

あの高さじゃ魔法は届かねぇ。
近寄りゃ岩が落ちてくる。
弓で狙いや逃げられて同士討ち・・・ん?

「をい、ルカっ、ちょとあいつ、こっから射てみろ」
「え~、あたしぃ~?この矢、高いから嫌なんだけどぉ~」
「っせぇ!元はと言えばてめぇがカイナルドで借金作ったせいでこんな仕事やってんじゃねぇか!黙ってやれやっ!」
「は~いっ」

目測500m、ルカの腕なら外しっこねぇ。
さて、次は何見せてくれるよ、教皇さんよ?

すぅ~~~っ バシュッ! ・・・ ズガッ!

「おっ!?やっぱ当たんじゃねーか!・・・おしっ、シュワルベ、とりあえずあの指揮官ぶっ殺してこい」
「え~、また俺っすかぁ?」
「いいから行けってんだよっ!とっととって来いやっ!」
「へ~い」

どうってこたぁね。
お行儀よくやってっから対処されんだ。
不意討ちすりゃぁこの数だ、捌き切れるわけがねぇ。
じわじわ削って地面におとしゃぁ、あとはどうにでもできんだろ。
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