I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第一章

094 旧交もしくは一期一会(後編)

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「あー、まとめるとだ。イケメン童貞を酔わせて手篭めにしたが、ヤり逃げに失敗したのでうまい逃げ道を考えて欲しいと、そういう事だな?」

「おっ・・・おう」

「ライザ、ひっどーい」
「貴様という奴は・・・」
「女の方が『やり逃げ』ってあんのねっ?はじめて聞いたわっ!」

『第一回、ライザやり逃げ失敗対策会議』は想定外の事態に迷走していた。

「あの、旦那様・・・ヤキモチとか、やかないんですか?」
「あー、まったく無いとは言えないな。でもアベル以外の五人・・・まぁ、エマはちょっと微妙な立ち位置だから四人か?この四人とは、絆はあるけど、恋人関係かと言われれば、お互いになんか違うって感じだろ?」
「まぁそうね。アンタって、相手の想いに反応しちゃうイキモノだから、相手が依存して来なかったらアンタも依存しないし」

「・・・・・・・・すげーな?その通りだ。言われてはじめて自覚した」
「お姉ちゃんはその『ちょっと微妙な立ち位置』っていうとこに興味あるかな?かなかな?」
「いや、それはちょっと、おいといて、ライザをどうするか考えないと。相手のある話だし?」

「ライザさん。ライザさんはどうなのですか?アルフレッド様の想いに応える気持ちはまったく無いのですか?」
「いや、その・・・な?おれっちが男に言い寄られるなんて、全然想定してなかったから何が何やらパニクってて・・・それにほら、向こうは初恋みたいなもんだから、すぐに醒めそうな・・・気がする・・・」
「おや?おやおや?これはライザ、じつは満更でもないかな?」
「いやっ、ちげーて。無理だって。向こうは歳下で昨日まで童貞だぜ?おれっちみたいなのが一緒になっていい相手じゃねーって!」

この世界でもある程度『処女性』というものは尊ばれている。
未だかつて誰にも許していない女に許される。
自分だけが特別・・・確かにそれは男の求めて止まぬところ。
動物としての本能。
メスが複数のを受けては群れの秩序が混乱する。
服を着て、言葉を話すようになっても、未だ人はから解き放たれてはいない。

「ダメねっ・・・」
「だろっ?」
「ちがうわっ!いい、ライザさん?あっちは『ライザさんがいい』って言ってんの。いろんな経験があってライザさんにぶっ込みたいって言ってんのよ?処女だろうがビッチだろうが関係ないわっ!大事なのは唯一ただひとつ、ライザさんがあの人『専用』になりたいかどうかだけだわっ!」

「・・・うん、我妻ながら実に歯に衣着せぬ核心をついたご意見。ライザ、そこんとこどうなの?」
「正直、女として求められてすげー嬉しい。舞い上がってる。でも・・・おれっちの居場所はココだから。隊長が居て、主様が居て、みんなが居なかったらしっくり来ねぇ・・・ぼっちで残んのは嫌だ」
「もぅ・・・ライザってば」

「うん・・・なぁ、主様、もう一日、ここに留まってもいいか?」
「ああ、いいぞ」
「うしっ、ポーションくれっ!アイツの想いがカラッカラになるまで搾り取ってくるぜ!それで明日にはオサラバだ」
「まっ、野生の獣は檻の中では生きられないかな?」



~~~~~



「カイン・・・知らぬこととはいえ重ね重ねすまん・・・」

「あ、いや、こっちこそなんか迷惑かけて悪い。ライザとは・・・説明し難いんだがそういうんじゃないんだ。うん、そもそも俺の存在の前に、ライザ達は6人の家族なんだ。で、家長のアベルが俺を選んだから、みんな一緒にいる。でもみんなも時には温もりが欲しいんだ。フレッドも女を知った今ならわかるだろ?だからライザ達と俺の間には確かに信頼関係や絆があるけど、恋愛では無いんだ。もしも彼女たちに愛する人が出来たら、俺達は・・・俺はちゃんと祝福できるし、もしもその相手がフレッドだったら、勝手な言い分だけど俺は嬉しい・・・でも、選択権は俺にあるんじゃない、彼女たちにあるんだよ」

「・・・・・・そうか・・・全部とは言えないがわかる気がする」

「なんだかなー。なぁ?勢いで友誼を結ぼうとか言っちまったけど、俺達、ホントの友達になれそうじゃね?」

「そうだな。正直、私も友と呼べる者はハインツくらいのものだった・・・これからは一人増えるな」



~~~~~



「ごめんな?おれっちこんなだから、やっぱフレッドのとこに留まることはできねぇ」
「・・・そうか・・・」
「でもな?女として求められてめっちゃくちゃ嬉しいんだ。すげー舞い上がってる。それに・・・たぶんちょっと惚れてる」
「ならばっ!」
「それでも、おれっちの居場所はここじゃねぇ。あいつらがいねぇと生きられんねんだ・・・おれっちだってこんな気持ち、忘れたくねぇ・・・だから・・・だから・・・」

ゴトリ

ライザは袋いっぱいのポーション瓶を取り出した。

「覚悟しな!一欠片ひとかけらの未練も残んね~くらい、カラッカラになるまで搾り取ってやんぜ!」
「・・・え?」
「問答無用っ!」



~~~~~



「フレッド、世話になったな」
「いや、カイン、こっちこそ、なんだかこの二日で何年分も成長出来た気がするよ」
「その顔なら、ライザとは、ちゃんとケリがついたみたいだな」
「いや、ついていないぞ?」
「「「え"?」」」

「ライザがここに留まれないなら、私がついていけば良いだけのこと」
「「「えええええ!?」」」
「ちょっ!フレッド、おまえ、昨夜ゆうべは全然そんなこと言ってなかったじゃねーか!」
「ああライザ、さっき気づいたのだ。我ながらこんな事に気づかないとはな?恋は盲目とはよく言ったものだ、ふはははははははっ」

「・・・どうなんだ?これ?」
「どうにもなりませんよ、ロックハウス猊下。お前たちっ!フレッド様を拘束せよっ!」

何やら慣れた手付きでグラハム家の使用人達がアルフレッドを縛り上げる。

「なっ!ハインツ!何をする!やめさせよっ!」
「ささっ、この遅れてきた色ボケは放っておいて、先をお急ぎください」
「えっと・・・じゃ、またな?フレッド?仕事はしっかりやれよ?」
「ライザっ!連れて行ってくれ!ハインツっ!離せっ!離すのだ~~~っ!」

「・・・じゃあな、フレッド、イイ男になれよ」

むちゅぅっ

「入国お願いします。騎士カイン・ロックハウスと家人達です」

(ライザぁぁぁぁっ! らーいーざーーーーーっ!)

「あの、いいんですか?向こうで王国の指揮官が叫んでますけど?」
「あー、あれはその、色ボケなんで、気にしないでください。使用人の方々のご苦労が伺えますね」
「はぁ・・・ま、いいか。どうぞ、ようこそ聖教国へ・・・ちなみにどなたがライザさんかお尋ねしても?」

ボッ(赤面

「こいつです」
「ほほぅ・・・指揮官殿は強い女性がお好みなのですねぇ」

(ライザぁぁぁ! 私は、私は諦めないぞーっ!)

「ライザ、諦めないって言ってんぞ?」
「もう・・・ゆるしてくれ・・・すっげー恥ずかしい・・・」
「ほほぅ、ライザもついに恥じらいを覚えたか」
「うっせぇっ!行くぞ!とっとと行くぞ!」

こうしてロックハウス家の面々は、無事、聖教国へ入国したのだった。
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