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1st season 第二章
030 別離
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アベルとの二人きりはその夜だけで、俺は再び彼女らのおもちゃにされた。
いや『俺達は』かな。
アベルに入れている時は、それはもうみんなの言葉責めがすごくて、真っ赤になりながらも必死に甘えるアベルが愛おしくて、その膣に、俺の匂いをたくさん染み込ませた。
僅か数日の放蕩が終わり、様々な感情を押し殺した彼女と、大好きになった姉たちが去っていった。
これはきっと、してはいけないことだと思いながら、白い石のついた革のネックレスをアベルに贈った。
ユリアの時とは違う、黒く蠢くもののない、透明な喪失感が俺に残った。
~~~~~
「依頼を出したいんだけど」
「初めてですね、カインさんがご依頼なんて」
俺はギルドで依頼を出した。
【求ム、土魔法使い】
依頼内容:石のブロック作り。
・戦闘なし
・初回日当制:銀貨2枚
・次回以降応相談
「・・・変わった、ご依頼ですね?この形式ですと、初回分のみギルド依頼となって、手数料が銅貨2枚別途となります」
「えぇ、まぁ。はい、銀貨2枚と銅貨2枚」
「それでは受領者が決まり次第お知らせしますね」
「よろしくおねがいします」
「おうなんだ、カイン、そっちに並んでるってこたぁ依頼すんのか?」
『素行が悪いが人は良い、名も知らぬ男』が話しかけてきた。
「ああ、まぁな」
「どれ、見せてみろ・・・ふーん、俺が受けるよ」
「えっ、あんた魔法使えんの?」
「わりぃかよ?ガテン系に土魔法はおかしかねーだろ?」
「そうだな」
「アレ、ゴンザさんがこのまま受領ということで宜しいですか?」
「おう、あっちでこまけぇこと相談すんべ」
(ふむ・・・ゴンザって言うのか)
カインは二年目にしてようやっと男の名を知った。
二年もこうして生活していられるって事は、仕事は案外真面目なのかも知れない。
「で、どんなブロックが欲しいんだ?」
「そうだな、3m×3m×3mの真四角だと、一日に何個くらい作れる?」
「でけぇなおい。街中じゃ10個がいいとこだ。岩場なら・・・30はいけるかな?」
「2m×2m×2mだと増えるか?」
「正確じゃねーが、1.5倍くらいか?」
「あと、直径20cmの穴を一つ開けたらどのくらい減る?」
「その程度なら1割も減らねぇな」
「よし、じゃあ、大枠は考えておくから、都合のいい日に岩場に向かって、マナが尽きる手前まで作ってもらうって事でいいか?」
「構わねぇが、持って帰れねぇぞ?」
「それはこっちに任せてくれていい」
「じゃ、早速、明日晴れたらやっちまうか?」
「おう、話が早くて助かる」
~~~~~
翌日、ゴンザと南の岩場にやってきた。
「それじゃ作るぞ~、ロック!!!」
一辺が2mの立方体が現れた。
岸田の記憶が甦るまではなんとも思わなかったが、この世界の魔法は謎が多い。
ストーンウォールで作り出した石壁は、触っても叩いても石であるように思えるのに、実態は魔法的な何かで、強く押しても倒れることがない。
そしてその魔法力を上回る力で、それが物理でも魔法であってもなのだが、衝撃を与えると砕け散る。
割れるのではない、砕けて消えるのだ。
術者が解除しようとしてもかき消える。
しかしロックで作られた石は本物の石になる。
叩けば割れるし、押せば倒れる。
岩場では効率があがるというから、そのあたりの石成分(?)をかき集めて生成するのかと思ったが、周囲の岩が減った気配は無い。
土魔法に限らず、水魔法も火魔法も同様に水場や火元では効率があがる。
もしやプラシーボ?
単に岩が多いと岩のイメージがまとまりやすくてマナ効率があがるだけなんじゃないか?
うん、リアルな物質を触媒と捉えれば質量保存の法則は成り立つな・・・マナが不可視のエネルギー体だと仮定すればの話だけど。
「とりあえず今のを作れるだけ頼む」
「うぃよ~」
最初は色んなサイズや矢狭間の穴をあけたものを用意しようと考えてたけど、やめた。
まずは規格統一されたブロックでどんな運用が出来るか検証し、その上で詳細仕様を煮詰めるべきだ。
「おーい、これで打ち止めだ~、つかどうすんだ?コレ?」
「こうする」
手を触れて片っ端から収納していく。
ゴンザ、なかなかやるな?48個のブロックが手に入った。
「で、こうやって使う」
ゴンザとの間にひとつ取り出す。
「・・・」
くくくっ、驚いてる驚いてる。
「わかった?」
(コクコクコクコク)
「因みにマナポーション飲んで続けられる?ポーションはこっち持ちで」
「まぁ別に今日は暇だから構わねぇよ?」
「よし、マナが回復した所で、全力でいったらどれくらいのサイズが作れそう?」
「いや、そんなん試したことねぇからわかんねぇぞ?作っても使いみち無いしな」
「えっ、城壁工事とか呼ばれないの?」
「知んねーうよ。俺が生まれた時にはもう城壁あったっつーの」
なるほど。
「じゃ、今回復した分、全部使い切る勢いで可能な限りでかいのを真四角でやってみよう。これまでに見たことも無い、城壁よりも高い大岩を想像して、それをゴンザが作るんだ!」
「おぅっ!なんだ、ちょっと楽しくなって来やがった・・・すぅ~~~っ、ロック」
「「・・・・・」」
「でかっ!」
「まじ、土魔法すごくね!?」
一辺が10mはあろう巨大人工岩が誕生した。
「いやぁ~ゴンザ、まじ尊敬した。すげーよ、あんた!」
「おう。俺も土魔法なんて貧乏くじだと思ってたけど、なんか感動したぜ」
その後もう一本ポーションを渡し、更に51個の2mブロックと、4m×4m×1mの板を一枚手に入れた。
限界に挑戦したおかげか、ゴンザの生産力がちょっとアップしていた。
いや『俺達は』かな。
アベルに入れている時は、それはもうみんなの言葉責めがすごくて、真っ赤になりながらも必死に甘えるアベルが愛おしくて、その膣に、俺の匂いをたくさん染み込ませた。
僅か数日の放蕩が終わり、様々な感情を押し殺した彼女と、大好きになった姉たちが去っていった。
これはきっと、してはいけないことだと思いながら、白い石のついた革のネックレスをアベルに贈った。
ユリアの時とは違う、黒く蠢くもののない、透明な喪失感が俺に残った。
~~~~~
「依頼を出したいんだけど」
「初めてですね、カインさんがご依頼なんて」
俺はギルドで依頼を出した。
【求ム、土魔法使い】
依頼内容:石のブロック作り。
・戦闘なし
・初回日当制:銀貨2枚
・次回以降応相談
「・・・変わった、ご依頼ですね?この形式ですと、初回分のみギルド依頼となって、手数料が銅貨2枚別途となります」
「えぇ、まぁ。はい、銀貨2枚と銅貨2枚」
「それでは受領者が決まり次第お知らせしますね」
「よろしくおねがいします」
「おうなんだ、カイン、そっちに並んでるってこたぁ依頼すんのか?」
『素行が悪いが人は良い、名も知らぬ男』が話しかけてきた。
「ああ、まぁな」
「どれ、見せてみろ・・・ふーん、俺が受けるよ」
「えっ、あんた魔法使えんの?」
「わりぃかよ?ガテン系に土魔法はおかしかねーだろ?」
「そうだな」
「アレ、ゴンザさんがこのまま受領ということで宜しいですか?」
「おう、あっちでこまけぇこと相談すんべ」
(ふむ・・・ゴンザって言うのか)
カインは二年目にしてようやっと男の名を知った。
二年もこうして生活していられるって事は、仕事は案外真面目なのかも知れない。
「で、どんなブロックが欲しいんだ?」
「そうだな、3m×3m×3mの真四角だと、一日に何個くらい作れる?」
「でけぇなおい。街中じゃ10個がいいとこだ。岩場なら・・・30はいけるかな?」
「2m×2m×2mだと増えるか?」
「正確じゃねーが、1.5倍くらいか?」
「あと、直径20cmの穴を一つ開けたらどのくらい減る?」
「その程度なら1割も減らねぇな」
「よし、じゃあ、大枠は考えておくから、都合のいい日に岩場に向かって、マナが尽きる手前まで作ってもらうって事でいいか?」
「構わねぇが、持って帰れねぇぞ?」
「それはこっちに任せてくれていい」
「じゃ、早速、明日晴れたらやっちまうか?」
「おう、話が早くて助かる」
~~~~~
翌日、ゴンザと南の岩場にやってきた。
「それじゃ作るぞ~、ロック!!!」
一辺が2mの立方体が現れた。
岸田の記憶が甦るまではなんとも思わなかったが、この世界の魔法は謎が多い。
ストーンウォールで作り出した石壁は、触っても叩いても石であるように思えるのに、実態は魔法的な何かで、強く押しても倒れることがない。
そしてその魔法力を上回る力で、それが物理でも魔法であってもなのだが、衝撃を与えると砕け散る。
割れるのではない、砕けて消えるのだ。
術者が解除しようとしてもかき消える。
しかしロックで作られた石は本物の石になる。
叩けば割れるし、押せば倒れる。
岩場では効率があがるというから、そのあたりの石成分(?)をかき集めて生成するのかと思ったが、周囲の岩が減った気配は無い。
土魔法に限らず、水魔法も火魔法も同様に水場や火元では効率があがる。
もしやプラシーボ?
単に岩が多いと岩のイメージがまとまりやすくてマナ効率があがるだけなんじゃないか?
うん、リアルな物質を触媒と捉えれば質量保存の法則は成り立つな・・・マナが不可視のエネルギー体だと仮定すればの話だけど。
「とりあえず今のを作れるだけ頼む」
「うぃよ~」
最初は色んなサイズや矢狭間の穴をあけたものを用意しようと考えてたけど、やめた。
まずは規格統一されたブロックでどんな運用が出来るか検証し、その上で詳細仕様を煮詰めるべきだ。
「おーい、これで打ち止めだ~、つかどうすんだ?コレ?」
「こうする」
手を触れて片っ端から収納していく。
ゴンザ、なかなかやるな?48個のブロックが手に入った。
「で、こうやって使う」
ゴンザとの間にひとつ取り出す。
「・・・」
くくくっ、驚いてる驚いてる。
「わかった?」
(コクコクコクコク)
「因みにマナポーション飲んで続けられる?ポーションはこっち持ちで」
「まぁ別に今日は暇だから構わねぇよ?」
「よし、マナが回復した所で、全力でいったらどれくらいのサイズが作れそう?」
「いや、そんなん試したことねぇからわかんねぇぞ?作っても使いみち無いしな」
「えっ、城壁工事とか呼ばれないの?」
「知んねーうよ。俺が生まれた時にはもう城壁あったっつーの」
なるほど。
「じゃ、今回復した分、全部使い切る勢いで可能な限りでかいのを真四角でやってみよう。これまでに見たことも無い、城壁よりも高い大岩を想像して、それをゴンザが作るんだ!」
「おぅっ!なんだ、ちょっと楽しくなって来やがった・・・すぅ~~~っ、ロック」
「「・・・・・」」
「でかっ!」
「まじ、土魔法すごくね!?」
一辺が10mはあろう巨大人工岩が誕生した。
「いやぁ~ゴンザ、まじ尊敬した。すげーよ、あんた!」
「おう。俺も土魔法なんて貧乏くじだと思ってたけど、なんか感動したぜ」
その後もう一本ポーションを渡し、更に51個の2mブロックと、4m×4m×1mの板を一枚手に入れた。
限界に挑戦したおかげか、ゴンザの生産力がちょっとアップしていた。
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