上 下
43 / 173
1st season 第二章

043 ダンライザへの旅

しおりを挟む
王国歴332年6月、D級パーティーとなったロックハウスはダンライザへと向かっていた。
Cクラスとなったカイン一人であれば、もはや徒歩の方が早いのだが、ひとつ上がってもEクラスのシリアが居るため、スタンピードの報奨金で馬を一頭

「ねぇ、これ、ちょっといいわね。お姫様プレイ?みたいな?」

出発にあたり「新婚旅行になるかもしれませんね」とからかううラティアに、公衆の面前でディープキスを敢行したカインは、何があっても必ず帰るから、絶対不安にならないよう言い含めた。
ダンライザは装備補充の為に寄るだけで、一番の目的は王都の神殿である。
ホルジス神が粗品をくれるから王都の神殿まで来るように言っていたことを思い出したのだ。
既に一年以上経っており、もしか怒っていたらどうしようと、慌てて出発することになった。
尚、カインとラティアのダダ甘な世界に「うぇ~っ!」となっていたシリアだったが、カインの抱っこで人生初の馬に乗せてもらい、やたらとテンションが高い。

「ダンライザまで8日だった?」
「ああ、10日ほど師匠のところでお世話になって、王都までが14~15日ってとこかな」

エルダーサの街からダンライザ鉱山が360km、そこから王都までが610km、王都からエルダーサが720kmと、それなりの旅路であるため、移動日数だけでも40日ほどを要する。

「で、アンタがホルジス様と面識あるってマジな話なわけ?」
「うん。全力でマジ」
「どこで知り合ったのよ?」
「試練の洞窟。なんかあそこ、いろいろ曰く付きで、監視対象なんだって。んで俺が入ったから様子見に来たら転生者だからって話しかけられた」
「はぁーっ?あんた稀人まれびとなの?」
「あれっ?言ってなかったか?」
「はーつーみーみーでーすーっ!」
「ま、厳密には稀人じゃなくて、前世の、向こうの世界の記憶が戻った普通の人」
「それは普通の人じゃないからっ!」

その日一日、シリアはカインを質問攻めにし、荒野のど真ん中にを出現させ、二人で作った謎シチューを夕食にとった。

~~~~~

「ねぇ、アタシら、ちょっとマズくない?」
「何がだ?最高のバディだと思うが?」

今、俺とシリアは一枚の毛布にくるまっている。
夜になって岩の戸締まりをし、別のに寝に行こうとしたらシリアに提案されたのだ「どんな感じか、たまには一緒に寝てみよう」と・・・。

「だからよ。アンタがアタシのこと大好きなのは知ってるけど、アタシもそれなりにアリなのわかってんでしょ?」
「・・・」
「でもね、なんていうかバディのポジションに馴染みすぎて、アンタ相手にアンアン言うとか、こっ恥ずかしすぎて正直死ねるわ」
「酷くね?」
「アンタはどうなのよ?」
「つーかおまえホントづけづけ来るよな?」
「いいから答えなさいよ」
「恥ずかしながら、今もってる」
「んなことわかってるわよ。アンタの大好きなオシリに当たってるし。そうじゃなくて、アタシに見られながらエロい顔できんのかって聞いてんのっ!」
「・・・確かに軽く死ねるな」
「マズイっしょ?」
「マズイ・・・な?」
「どうすんのよコレ・・・」
「・・・ちょっとそこまで考えてなかった」
「はぁーもぅいいわ。寝ましょ。どうにもムラムラ収まらなかったら襲ってみてもいいわよ。流れで行けそうなら乗っかるし、無理そうだったら全力で笑ってやるから」
「おまっ!無茶言うなよ」
「ふっ、いい気味ね、たまにはアンタが悶々もんもんもだえなさいってーの。案外いいわね、このポジション」

~~~~~

旅の間中シリアは絶好調だった。
そして今、無事ダンライザに付き、ナルドの元を訪れたカインの手には三枚の白金貨2億円×3が握られていた。

「いやいやいやいや、なんすかコレ、ナルドさん?」
「ん?オマエの取り分だ。きっちり売値の1割」
「だから何のっ!?」
カイナルド滑車式複合弓に決まってんだろ?いやな、本業じゃないからどうでもいいやって白金貨一枚2億円吹っかけたらな、それなりに売れるんだわコレが」
「いやなんでそれが俺に入るんスカ?」
「いや、言っただろ?売れたらアイデア量ちゃんと払うって?」
「だからって白金貨三枚は多すぎですよっ!」
「気にすんなっ!俺はその10倍、いや9倍か?きっちり貰ってんだからよ」
「あー、そう言われると貰っていい気がしてきた。ホントに貰っちゃいますよ?」
「おう、で、そっちは嫁さんか?ちちは無ーが、べっぴんじゃねーか?」
「ハジメマシテ~、そして嫁じゃありませ~ん、ついでに死ねっ!」

ナルドとシリアは、いきなり打ち解けていた。

「はぁ~、まぁいいわ、アンタ、そのお金はパーティ資金に入れたりしないでよ?さすがに白金貨とか貰っちゃったらラティアさん街道まっしぐらだわ」
「で、何しに来たんだ?」
「いや、ボルトの補充と、あと鉄製の盾を何種類かつくりたくて」
「ちょっと、アタシにも零式の引きが軽いの作ってくれるんでしょ?」
「そんな感じです」
「おう、あるもん好きに使っていいぞ」
「で、カイナルドってここにあるの?白金貨一枚2億円もするってどんな代物?」
「あーコレだ」
「何よコレ、零式の持つとこ取っただけじゃない!」
「まぁ、そうだな」
「カインが作ったアンチマテリアルだったか?アレなら10枚いけんじゃねーか?」
「・・・・・だめね、アタシ、もう完全に借金奴隷だわ」

カインが作った盾は大小二種類。
ただただ分厚い鋼鉄のタワーシールドと、これまで使ったことの無い、これまた無骨なバックラー円形小盾をそれぞれ二枚ずつ。
飾り気はまったくないが、ナルドが金の使い道に困って買い漁った、魔法耐性を帯びた謎金属を混ぜ込んだ、性能不明の謎盾である。
シリアとバディを組むようになって、再びタンクとしての立ち回りを考え始めたのだ。
シリア専用に2本制作した一回り小さないしゆみは、シリア基準でリロード再装填4秒、オーク想定の実効射程が40mという物になり、弐式複合弩にしきふくごうどと名付けられた。
零式弐式兼用のボルトは暇を持て余したノルドが5,000本用意してくれた。

10日間の予定滞在期間はあっという間に過ぎ、二人は王都へと旅立つのだった。
しおりを挟む
感想 240

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

処理中です...