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1st season 第二章
043 ダンライザへの旅
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王国歴332年6月、D級パーティーとなったロックハウスはダンライザへと向かっていた。
Cクラスとなったカイン一人であれば、もはや徒歩の方が早いのだが、ひとつ上がってもEクラスのシリアが居るため、スタンピードの報奨金で馬を一頭買った。
「ねぇ、これ、ちょっといいわね。お姫様プレイ?みたいな?」
出発にあたり「新婚旅行になるかもしれませんね」と誂うラティアに、公衆の面前でディープキスを敢行したカインは、何があっても必ず帰るから、絶対不安にならないよう言い含めた。
ダンライザは装備補充の為に寄るだけで、一番の目的は王都の神殿である。
ホルジス神が粗品をくれるから王都の神殿まで来るように言っていたことを思い出したのだ。
既に一年以上経っており、もしか怒っていたらどうしようと、慌てて出発することになった。
尚、カインとラティアのダダ甘な世界に「うぇ~っ!」となっていたシリアだったが、カインの抱っこで人生初の馬に乗せてもらい、やたらとテンションが高い。
「ダンライザまで8日だった?」
「ああ、10日ほど師匠のところでお世話になって、王都までが14~15日ってとこかな」
エルダーサの街からダンライザ鉱山が360km、そこから王都までが610km、王都からエルダーサが720kmと、それなりの旅路であるため、移動日数だけでも40日ほどを要する。
「で、アンタがホルジス様と面識あるってマジな話なわけ?」
「うん。全力でマジ」
「どこで知り合ったのよ?」
「試練の洞窟。なんかあそこ、いろいろ曰く付きで、監視対象なんだって。んで俺が入ったから様子見に来たら転生者だからって話しかけられた」
「はぁーっ?あんた稀人なの?」
「あれっ?言ってなかったか?」
「はーつーみーみーでーすーっ!」
「ま、厳密には稀人じゃなくて、前世の、向こうの世界の記憶が戻った普通の人」
「それは普通の人じゃないからっ!」
その日一日、シリアはカインを質問攻めにし、荒野のど真ん中にロックハウスを出現させ、二人で作った謎シチューを夕食にとった。
~~~~~
「ねぇ、アタシら、ちょっとマズくない?」
「何がだ?最高のバディだと思うが?」
今、俺とシリアは一枚の毛布に包まっている。
夜になって岩の戸締まりをし、別の穴に寝に行こうとしたらシリアに提案されたのだ「どんな感じか、たまには一緒に寝てみよう」と・・・。
「だからよ。アンタがアタシのこと大好きなのは知ってるけど、アタシもそれなりにアリなのわかってんでしょ?」
「・・・」
「でもね、なんていうかバディのポジションに馴染みすぎて、アンタ相手にアンアン言うとか、こっ恥ずかしすぎて正直死ねるわ」
「酷くね?」
「アンタはどうなのよ?」
「つーかおまえホントづけづけ来るよな?」
「いいから答えなさいよ」
「恥ずかしながら、今も勃ってる」
「んなことわかってるわよ。アンタの大好きなオシリに当たってるし。そうじゃなくて、アタシに見られながらエロい顔できんのかって聞いてんのっ!」
「・・・確かに軽く死ねるな」
「マズイっしょ?」
「マズイ・・・な?」
「どうすんのよコレ・・・」
「・・・ちょっとそこまで考えてなかった」
「はぁーもぅいいわ。寝ましょ。どうにもムラムラ収まらなかったら襲ってみてもいいわよ。流れで行けそうなら乗っかるし、無理そうだったら全力で笑ってやるから」
「おまっ!無茶言うなよ」
「ふっ、いい気味ね、たまにはアンタが悶々と悶なさいってーの。案外いいわね、このポジション」
~~~~~
旅の間中シリアは絶好調だった。
そして今、無事ダンライザに付き、ナルドの元を訪れたカインの手には三枚の白金貨が握られていた。
「いやいやいやいや、なんすかコレ、ナルドさん?」
「ん?オマエの取り分だ。きっちり売値の1割」
「だから何のっ!?」
「カイナルドに決まってんだろ?いやな、本業じゃないからどうでもいいやって白金貨一枚吹っかけたらな、それなりに売れるんだわコレが」
「いやなんでそれが俺に入るんスカ?」
「いや、言っただろ?売れたらアイデア量ちゃんと払うって?」
「だからって白金貨三枚は多すぎですよっ!」
「気にすんなっ!俺はその10倍、いや9倍か?きっちり貰ってんだからよ」
「あー、そう言われると貰っていい気がしてきた。ホントに貰っちゃいますよ?」
「おう、で、そっちは嫁さんか?乳は無ーが、べっぴんじゃねーか?」
「ハジメマシテ~、そして嫁じゃありませ~ん、ついでに死ねっ!」
ナルドとシリアは、いきなり打ち解けていた。
「はぁ~、まぁいいわ、アンタ、そのお金はパーティ資金に入れたりしないでよ?さすがに白金貨とか貰っちゃったらラティアさん街道まっしぐらだわ」
「で、何しに来たんだ?」
「いや、ボルトの補充と、あと鉄製の盾を何種類かつくりたくて」
「ちょっと、アタシにも零式の引きが軽いの作ってくれるんでしょ?」
「そんな感じです」
「おう、あるもん好きに使っていいぞ」
「で、カイナルドってここにあるの?白金貨一枚もするってどんな代物?」
「あーコレだ」
「何よコレ、零式の持つとこ取っただけじゃない!」
「まぁ、そうだな」
「カインが作ったアンチマテリアルだったか?アレなら10枚いけんじゃねーか?」
「・・・・・だめね、アタシ、もう完全に借金奴隷だわ」
カインが作った盾は大小二種類。
ただただ分厚い鋼鉄のタワーシールドと、これまで使ったことの無い、これまた無骨なバックラーをそれぞれ二枚ずつ。
飾り気はまったくないが、ナルドが金の使い道に困って買い漁った、魔法耐性を帯びた謎金属を混ぜ込んだ、性能不明の謎盾である。
シリアとバディを組むようになって、再びタンクとしての立ち回りを考え始めたのだ。
シリア専用に2本制作した一回り小さな弩は、シリア基準でリロード4秒、オーク想定の実効射程が40mという物になり、弐式複合弩と名付けられた。
零式弐式兼用のボルトは暇を持て余したノルドが5,000本用意してくれた。
10日間の予定滞在期間はあっという間に過ぎ、二人は王都へと旅立つのだった。
Cクラスとなったカイン一人であれば、もはや徒歩の方が早いのだが、ひとつ上がってもEクラスのシリアが居るため、スタンピードの報奨金で馬を一頭買った。
「ねぇ、これ、ちょっといいわね。お姫様プレイ?みたいな?」
出発にあたり「新婚旅行になるかもしれませんね」と誂うラティアに、公衆の面前でディープキスを敢行したカインは、何があっても必ず帰るから、絶対不安にならないよう言い含めた。
ダンライザは装備補充の為に寄るだけで、一番の目的は王都の神殿である。
ホルジス神が粗品をくれるから王都の神殿まで来るように言っていたことを思い出したのだ。
既に一年以上経っており、もしか怒っていたらどうしようと、慌てて出発することになった。
尚、カインとラティアのダダ甘な世界に「うぇ~っ!」となっていたシリアだったが、カインの抱っこで人生初の馬に乗せてもらい、やたらとテンションが高い。
「ダンライザまで8日だった?」
「ああ、10日ほど師匠のところでお世話になって、王都までが14~15日ってとこかな」
エルダーサの街からダンライザ鉱山が360km、そこから王都までが610km、王都からエルダーサが720kmと、それなりの旅路であるため、移動日数だけでも40日ほどを要する。
「で、アンタがホルジス様と面識あるってマジな話なわけ?」
「うん。全力でマジ」
「どこで知り合ったのよ?」
「試練の洞窟。なんかあそこ、いろいろ曰く付きで、監視対象なんだって。んで俺が入ったから様子見に来たら転生者だからって話しかけられた」
「はぁーっ?あんた稀人なの?」
「あれっ?言ってなかったか?」
「はーつーみーみーでーすーっ!」
「ま、厳密には稀人じゃなくて、前世の、向こうの世界の記憶が戻った普通の人」
「それは普通の人じゃないからっ!」
その日一日、シリアはカインを質問攻めにし、荒野のど真ん中にロックハウスを出現させ、二人で作った謎シチューを夕食にとった。
~~~~~
「ねぇ、アタシら、ちょっとマズくない?」
「何がだ?最高のバディだと思うが?」
今、俺とシリアは一枚の毛布に包まっている。
夜になって岩の戸締まりをし、別の穴に寝に行こうとしたらシリアに提案されたのだ「どんな感じか、たまには一緒に寝てみよう」と・・・。
「だからよ。アンタがアタシのこと大好きなのは知ってるけど、アタシもそれなりにアリなのわかってんでしょ?」
「・・・」
「でもね、なんていうかバディのポジションに馴染みすぎて、アンタ相手にアンアン言うとか、こっ恥ずかしすぎて正直死ねるわ」
「酷くね?」
「アンタはどうなのよ?」
「つーかおまえホントづけづけ来るよな?」
「いいから答えなさいよ」
「恥ずかしながら、今も勃ってる」
「んなことわかってるわよ。アンタの大好きなオシリに当たってるし。そうじゃなくて、アタシに見られながらエロい顔できんのかって聞いてんのっ!」
「・・・確かに軽く死ねるな」
「マズイっしょ?」
「マズイ・・・な?」
「どうすんのよコレ・・・」
「・・・ちょっとそこまで考えてなかった」
「はぁーもぅいいわ。寝ましょ。どうにもムラムラ収まらなかったら襲ってみてもいいわよ。流れで行けそうなら乗っかるし、無理そうだったら全力で笑ってやるから」
「おまっ!無茶言うなよ」
「ふっ、いい気味ね、たまにはアンタが悶々と悶なさいってーの。案外いいわね、このポジション」
~~~~~
旅の間中シリアは絶好調だった。
そして今、無事ダンライザに付き、ナルドの元を訪れたカインの手には三枚の白金貨が握られていた。
「いやいやいやいや、なんすかコレ、ナルドさん?」
「ん?オマエの取り分だ。きっちり売値の1割」
「だから何のっ!?」
「カイナルドに決まってんだろ?いやな、本業じゃないからどうでもいいやって白金貨一枚吹っかけたらな、それなりに売れるんだわコレが」
「いやなんでそれが俺に入るんスカ?」
「いや、言っただろ?売れたらアイデア量ちゃんと払うって?」
「だからって白金貨三枚は多すぎですよっ!」
「気にすんなっ!俺はその10倍、いや9倍か?きっちり貰ってんだからよ」
「あー、そう言われると貰っていい気がしてきた。ホントに貰っちゃいますよ?」
「おう、で、そっちは嫁さんか?乳は無ーが、べっぴんじゃねーか?」
「ハジメマシテ~、そして嫁じゃありませ~ん、ついでに死ねっ!」
ナルドとシリアは、いきなり打ち解けていた。
「はぁ~、まぁいいわ、アンタ、そのお金はパーティ資金に入れたりしないでよ?さすがに白金貨とか貰っちゃったらラティアさん街道まっしぐらだわ」
「で、何しに来たんだ?」
「いや、ボルトの補充と、あと鉄製の盾を何種類かつくりたくて」
「ちょっと、アタシにも零式の引きが軽いの作ってくれるんでしょ?」
「そんな感じです」
「おう、あるもん好きに使っていいぞ」
「で、カイナルドってここにあるの?白金貨一枚もするってどんな代物?」
「あーコレだ」
「何よコレ、零式の持つとこ取っただけじゃない!」
「まぁ、そうだな」
「カインが作ったアンチマテリアルだったか?アレなら10枚いけんじゃねーか?」
「・・・・・だめね、アタシ、もう完全に借金奴隷だわ」
カインが作った盾は大小二種類。
ただただ分厚い鋼鉄のタワーシールドと、これまで使ったことの無い、これまた無骨なバックラーをそれぞれ二枚ずつ。
飾り気はまったくないが、ナルドが金の使い道に困って買い漁った、魔法耐性を帯びた謎金属を混ぜ込んだ、性能不明の謎盾である。
シリアとバディを組むようになって、再びタンクとしての立ち回りを考え始めたのだ。
シリア専用に2本制作した一回り小さな弩は、シリア基準でリロード4秒、オーク想定の実効射程が40mという物になり、弐式複合弩と名付けられた。
零式弐式兼用のボルトは暇を持て余したノルドが5,000本用意してくれた。
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