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23 ニュー・ルールの巻

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「ケンタ・・・わたしを撮って欲しい」

腰が抜けて、身動きの取れないリコが発した言葉の意味が、俺には理解出来なかった。

「ん?」

「あのね?今のわたしを、ケンタに撮って欲しいの・・・その・・・ケンタに・・・大人の女にしてもらった記念写真・・・すんごい卑猥なやつ」

本気ほんき?」

「日野さんの、持ってるくせに、わたしのを持ってないのはズルい」

あー、そういう話か。

「ほんとにいいのか?」
「うん・・・お願い」
「じゃ、スマホ取ってくる」

ベッドの上に立ち膝でスマホを構える。
液晶に映し出される、幼馴染の裸体。
幼少の姿を記憶しているだけに、背徳感がとてつもない。

まだどこか視点の定まりきらないリコは、気だるそうに脚を開くと、自らの膣に手を添えて、穴の中を開いてみせた。
明らかに事後。
ドロリとした精液が押し出され、少女が既に汚された存在である事を赤裸々に語る。
言い逃れのできないその瞬間を切り出し、映像として固定する。

カシャッ

「撮ったよ」
「うん・・・ずっとケンタが、もっていてね?」
「もちろん、リコと一緒に墓に入るときも持ってくよ」
「むしもわたしがまた裏切ったら、それ、バラ撒いて。罰だから」

ほんの少し、リコへの苛立ちが湧き上がる。

「これは俺の。リコの初めてを貰った、大切な記念。たとえこの先何がおきようと、他のやつになんか見せてたまるか。それともリコはまた裏切るつもりなの?」
「ちがうの・・・山崎くんの話、聞いて欲しい。ちゃんと理解して、守って欲しい」

「・・・聞くよ」

「わたし、ああいう人、ホントに嫌いだった。馴れ馴れしくて、礼儀知らずで、厚かましくて、ズカズカと土足で踏み込んでくる下品な人種。こっちが何を言っても、真剣に聞いたりしない。だってあの人達は、女の言葉なんかに興味ないもの。性的な話題を投げかけつづけて、麻痺させて、入り込んで、隙を見せたらカラダを貪られ、すぐに飽きて捨てられる。最低の人種。わたし、ちゃんとわかってた。警戒してた。でも、日野さんへの嫉妬で、スキが出来た・・・」

「・・・」

「あの男はその隙を見逃さなかった。急に紳士的な態度に切り替え、親身になるふりをして、どんどん入り込んできた。もちろん私が悪い。強い意志で拒絶し続けるべき。でも、わたしの心はわたしの意志を無視して、勝手に恋を始めたの」

「だから責任が無いって言うの?」

「ちがう。責任はわたしにある。言い逃れできない。でも、わたし、初めて知ったの。恋は意志では制御できない・・・あいつらはクズ。でも、女の心を操る天才。それはあいつら主催のゲーム。負ければ無理やり好きにさせられる。実際に操られてしまった、わたしは一度そのゲームに負けた。怖いの。また誰かに負けて、好きにさせられて、ケンタに愛想をつかされて、その男にも捨てられて・・・それでも、またいつか新しい恋をして、そしてまた終わりがきて・・・そんな風に生きたくない」

「でも、恋ってそういうもんだろ?」

「そう・・・でもそんなの嫌。吐き気がする!なんで?なんで世界は恋愛が正義みたいになってるの?だってわたし、騙されたんだよ?無理やり好きにささられたんだよ?もしもそれでカラダを汚されたら、そんなのレイプじゃん!だから絶対嫌!だからお願い。わたしにそんな事させないで。わたしをわたしから守って!わたしはケンタがいい!一生ケンタと居たい!もしもその時のわたしが違うことを言っても、ケンタを罵っても、縛って、閉じ込めて、わたしが今夜の気持ちを思い出すまで、徹底的にわたしを犯して!わたし、さっきので確信したの。さっきみたいのをケンタにされたら、絶対思い出す。また、嫌な思いをさせちゃうけど、傷つけちゃうけど、それでもわたしを、見捨てないで?お願い・・・」

リコが苦しんでいたのはわかる。
でもそれは単純な罪悪感だと思ってた。
そうか・・・確かにそうだ、好きになりたい相手と、好きになってしまう相手が同じとは限らないし、好きにさせられてしまうなんて概念、今の今まで無かった。
だが、現実に存在する現象だ。

「うん。ちゃんと理解した。さっきは冗談みたいに言ったけど、真剣に誓う。この先の人生、リコに言い寄る男が現れたら、その時のリコに嫌がられても、所有者として遠慮なく邪魔する。もしもそれでもリコが恋して、それこそカラダの関係をそいつと持ってしまっても、絶対にリコを見放さない。攫って、閉じ込めて、今夜の気持ちを思い出すまで、徹底的に快楽を与える。俺がリコを手放す条件は唯一つ。リコがタトゥーを消した時。消すのって、一年くらいかかるんだろ?それだけの時間考えて、それでも俺から離れる事を選んだなら、それが俺とリコの終わり。それ以外に終わりは無い。それでいいか?」

「はい。ありがとう」

「もうひとつ、覚えておいて。そんなこと絶対にあってほしくないけど、もしもリコがレイプされたり、誰かと浮気してしまったり、そしてその時の写真や動画で脅されて、無理やり何かさせられそうな時、決して俺に秘密にしないで。絶対に見捨てない。リコにそのタトゥーがある限り、リコは俺の所有物。勝手に判断する権利は無い。必ず俺を巻き込んで。絶対に俺がぶち壊してやる。何もかも失っても問題ない。リコさえ残るなら俺は幸せ。リコが今夜確信したように、俺も今夜確信した。約束できる?」

「はい・・・嬉しい・・・すごく嬉しい」

「これからはもっと話しあおう。遠慮したらダメなんだな。今したいみたいに、ちゃんと話そう」

「うん・・・約束・・・えへへへへっ。コレだけ恥ずかしいとこ見られちゃったんだから、今更取り繕ったり、遠慮しても手遅れだよね」

「だな?うん。セックスって凄い」

「凄いね」



##### 2days after #####



「陽子さん、何から何までありがとう。母親の凄さ、思い知らされる三日間だったよ」

「ふふふ。その様子だと、うまくいったのね?」

「ああ。なんていうかさ、俺、自分の事、普通の大人より大人だと思ってた。頭もいいし、知識もある。でもまだまだクソガキだったって思い知った」

「ううん、ケンタは間違ってないよ」

「いや、間違ってんだ。人は矛盾した存在。その矛盾ごと抱きしめられなかったら、誰かと一緒には生きられない。なのにリコのたった一つの面、それだけで頭に血が昇って、癇癪おこして、何もかも叩き壊して、不幸な主人公に浸るクソガキだった」

「でも、悪かったのはわたし・・・」

「違うな。悪かったのはリコの極々一部。リコという存在の全てじゃない。子供が何か悪いことをした。俺はそのひとつの悪事で、子供を断罪し、有ろう事か切り捨てた親。最低だ。二度としない」

「健太くん・・・やっぱ童貞捨てると、一皮むけるのね?」

「陽子さんのお膳立てが大きいな。ただヤッただけじゃこんなに変わんないよ。子供を持ってみないとわかんない事って、きっとあるじゃん?俺の中でリコの存在が『自分の子供』みたいに大きくなって、その片鱗を垣間見た・・・そんな感じ」

「ふふふ、理子、あなた幸せものね?」

「うんっ!」



五人で囲む、10日ぶりの食卓。

「そうだ、あんた達に新しいルールを課さないとね」

「えっ、なんで?」

「放っておいたらあんた、毎晩、理子を連れ込んで、爛れた生活になるの目に見えてんじゃない」

「ふふふ、そうね?ダメとは言わないけど、あなた達の先は長い。一気に食べすぎて、飽きちゃったら困るでしょ?バリエーション増やしても限界はあるしね?」

「そうだ!健太のくせに生意気だ!理子はまだまだ嫁にやらんぞっ!」

「あなたは黙ってなさい! ・・・ もう、理子?そんなこの世の終わりみたいな顔しないの!陽子がピルも用意してんでしょ?スルなとは言わない。そうね ・・・ うん、健太の部屋に泊まるのだけ禁止。ヤるだけやったら帰りなさい。でも全然ダメってのも可愛そうだから、週に一日、土曜の夜だけは泊まってもいいわ」

「あとは今回みたいにこじれちゃったときとか、誕生日やクリスマスみたいな、イベントの時は良いことにしようかな?」

「ヤるだけヤッたら帰れとか、うちの母がクズ男すぎる件」

「でも、母さん達の言うとおりかも・・・なんかルールがないと、わたし、歯止め効かないタイプだと思う・・・将来に楽しみも残しときたいし」

「よし決定。破ったら小遣い減額、連帯責任!」

「「はーい(ういー)」」

「で、陽子はもう聞いたの?」

「ん?何を?」

「コイツラがどんなエロいことしてきたかよ」

「「ぶふぉっ」」

「聞く気かよっ!?」

「当然じゃない?母さんだって協力してんのよ?ネズミーランドのチケット代、誰が調したと思ってんの?」

「うん、嘘はいってない。だが釈然としない」

「で、どうだったの理子?コイツ、がっついてブチ壊したりしなかった?」

「うっ・・・めちゃくちゃ素敵な初体験だった・・・ちゃんと大人女子にしてもらったし・・・それ以上も・・・」

「『それ以上』んとこ詳しくっ!」

「いやいやいやいや 家族の食卓の話題じゃないしっ!」

「ちっ まぁいいわ。食べたら陽子んちで女子会だから!あんたらで片付けやっといてよ?」

「「ういー」」

「あっ、朝までに何枚か書類用意しとくから、三人とも、朝出る前に署名捺印頼むわ」

「はぁ?何の書類よ」

「リコの限定的保護者として俺を指名する旨の委任状とかかな」

「そんなん何にすんのよ?」

「学校で使う」

「だから何でよ?」

「いくら進学校で校則緩いとは言え、こんなタトゥー入れて何も無いわけないだろ?俺が片付けとくから権限寄越せってこと。陽子さんの署名だけでもいいんだけど、組織黙らせるには弁護士の肩書は有効だし。そんなわけで俺は書類仕事があるから、後片付けは親父に任せた」

「ずりーぞ!」

「ん親父?俺の代わりに教師とお茶しに行きたかったのか?別に俺は後片付けでも構わんぞ?」

「はぁ・・・今日のところは健太は免除してやる。あなた、いいわよね?」



うむ。
我が家でも、安定のカースト最下位はオヤジだ。
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