上 下
111 / 240
花から求められる犬と、主人との約束

8

しおりを挟む



「気持ち良さそうに寝てる……」

 時刻は何時だろうか?
 あれから個装を3つ破いてしまったから、外はもう白み始めているのかもしれない。

「あつ……」

 ひたいに滲む汗を右腕で拭い、その場に散らばったものを拾いあげる。

「甘い味がするローションかぁ……」

 僕は細身のボトルを掴むなり潤滑ローションの特長を呟いてみせたけれど、直後にキュッと唇をつぐんで

(「花ちゃんの蜜の方が甘いよ」って、言えたらいいのに……)

 パチンと、ボトルの蓋を閉めて収納場所へと片付けた。

 別にそれを口に出してしまっても良いのかもしれない。けれど、それは「ローションは不要だよ」「だから花ちゃんの蜜を僕のにつけて最後までしてしまおう」と示すロジックになっているようで少し怖かったんだ。

(僕はタイチという名の犬だ。花ちゃんの蜜を胃の中に入れられたとしても、それ以上の融合を望んじゃいけない。
 ……僕達はこの先もボトルの中身にお世話になるんだから)

 僕は心の中だけで決意すると、まだ味の残る指をペロリと舐める。

「甘い……美味しい」

 僕は女体から迸る液の味や性質をしか知らない。

(やっぱり……ユリさん達もこんなにネットリとして美味しく、いつまでも飲んでいられそうなくらい甘くて芳醇な香りを放っているのかな?)

 僕は不謹慎にもケースケくん達先輩セラピストはどう感じているのかが気になってしまった。

(毛が一本もない美しい肌の中に隠れているご主人様の女芯や蜜壺も、ケースケくんが愛を込めてじゅるじゅると吸い尽くせるくらい甘美なのかな?)

 その問いは20歳を迎えたリョウにとってとても重要な意味を成すのだろうけれど……

「……」

(……いや、きっと違う。この甘さは花ちゃんにしか持ち得ていない、特別な味なんだ)

 僕は思考をそこで停止させる事にした。
 結論はまだ出したくなかった。

(僕はずっとずっと花ちゃんを手に入れたくて、タイチという方法でありながらこの味を楽しめているんだ……幸せになれているんだ)

 規則正しい寝息を立てて眠っている花ちゃんを見つめていたら、「今はそれでいいんじゃないか」と思った。

「僕も夢の中へ行こうかなぁ……おやすみ、花ちゃん」

 僕は愛らしい花ちゃんの背中を包むように抱き締めて、眠る彼女を追いかけようと目を閉じた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

【完結】彼女が18になった

チャフ
恋愛
《作品説明》 12歳差の男女カップルの話です。30歳と18歳という年齢設定ですが、合法的にイチャラブさせたいと考えています。 《あらすじ》  俺は30歳になり、彼女は18歳になった。 「誕生日か……。」  また一雨降りそうな薄暗い雲を見やりながら、改めて7月13日という奇跡的な日付に感謝をする。  誕生日、加えて干支まで一緒になってしまった夏実を女と意識したのはいつだったか覚えてはいない。  けれども俺は可愛い夏実を手放したくはないのだ。  何故なら俺は、「みなとくんのお嫁さんになりたい」と10年もの間思い続けている夏実の事を、世界中の誰よりも『可愛い』と日々思っているのだから……。 ☆登場人物紹介☆ ・広瀬 湊人(ひろせ みなと)30歳。会社員。2年前から付き合っている夏実とは幼馴染で赤ん坊の頃から知っている。 ・薗田 夏実(そのだ なつみ)18歳。高校3年生。幼少期から湊人の事が大好きで「みなとくんのお嫁さんになりたい」と8歳の頃から夢見ていた。16歳の誕生日から湊人と付き合っている。 ※本作は第一稿を2019年に書いている為、時流も2019年に合わせたものとなっております。ヒロインは18歳ですが本作では「未成年」としています。 ※主人公の湊人は煙草の煙が体質に合わないので症状を軽減させる為に不織布マスクを外出時にしている設定です。 「風邪でもないのに不織布マスクをしている少し変わった主人公を描いたつもり」がこのような時代となり作者自身非常に驚いております。 マスク中年の男性主人公ではありますが、ゆる〜くほんわかと読んで下さると有り難いです。 ※話タイトルの記号(★)について…… 濃厚な性描写がある話には★記号をつけています。 ※この作品はエブリスタでも公開しております。

【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される

Lynx🐈‍⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。 律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。 ✱♡はHシーンです。 ✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。 ✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

処理中です...