250 / 251
【最終章その後のお話】春の門出と夜桜見物
★3
しおりを挟む近くのコンビニでビールやチューハイ、おつまみを買って花見客で賑わう中に入っていく。
「どの木の下も埋まっちゃってるね」
「時間的に夜桜見物のピークだから仕方ないよなぁ……あっ、向こうの木が空いてる!」
りょーくんの向く方に私も目線を上げると、奥の方の木の下がちょうど空いていた。
「ちょっと遠いかな? 結構歩く事になりそうだけど、足は平気?」
りょーくんは目線を私の顔より下にしながらそう訊いてくるので私もまた彼が気にする私の下の方を向いて「あっ」と声を出した。
「そっかぁ……私、婚姻届を提出するだけとはいえラフな格好はまずいと思ってちょっぴりお洒落してきたんだよね」
「今日は入籍記念日になるし綺麗な服装やパンプスだからあーちゃんが痛い思いしてほしくないなって……」
普段は身に付けないような白のフリルブラウスにシックな色のフレアスカート、足はいつもよりヒールの高いパンプス。特にパンプスは履き慣れていないからりょーくんはそれを気にしてくれたんだと思った私は
「全然平気だよ!! 大事な入籍記念日だからこそ、この最高な夜桜をりょーくんと満喫したいんだもん!!」
と笑顔で即答した。
100円ショップで購入したというアルミレジャーシートはクッション性があって機能的ではあるものの、食べ物飲み物を並べて座るにはギリギリくらいの大きさで……
「ちょっと小さかったかな?」
「でも柄が可愛くて好き♪」
「そうだよね♡ 可愛いよね♡」
「あとね、りょーくんがこれを選んで買ってきてくれたからもっと好きって思っちゃう♡」
「えっ?」
「それも、入籍日の良い思い出になるでしょ?」
「ふふ……そうだね、あーちゃんの言う通りだ♡」
りょーくんと言い合い笑いながら、両手に缶や串モノのおつまみを持って横並びでくっつくように座る。
「じゃあ、乾杯っ♪」
「乾杯♪」
一見狭苦しいように座って無理矢理缶を突き合わせている私達は、それでも幸せだとでも言うように笑いながら乾杯をしてアルコールを喉に流し込む。
「ぷはーっ! ……気持ちいい♡」
ビールをゴクゴク飲んでは幸せそうな表情をするりょーくんを、私は彼の新しいヘアスタイルや剥き出しになった耳含めてぼんやりと眺めた。
「どうしたの? あーちゃん。俺の頭、そんなに変?」
昨日美容室から帰ってきたりょーくんのヘアスタイルの変化に私はものすごく驚いたから、今でも違和感持っていると私の心を予想したんだろう。
「変じゃない! かっこいいし素敵だし、すごくドキドキしてるよ! 今まで出会ってきたりょーくんのヘアスタイルはどれも大好きだけど、今のりょーくんも……すごく好き♡」
でも私の心はりょーくんの予想とは違う。
違和感を持つどころか、昨日からずっとドキドキしっぱなしだという事を彼の前で告白した。
りょーくんは顔を熱くしながら言った私に優しく微笑んで「ありがとう」の返事をした後で、またビールをゴクゴク飲んでほろ酔いの表情になる。
「俺も今日のあーちゃんのコーディネート、大人っぽくてすごくドキドキしてるよ。今日の為にお洒落しようって考えてこういうブラウスとかパンプスとか選んでくれるあーちゃんが可愛いくて素敵だと思うし、好き♡」
それから酔っているのにかっこよくて素敵な声で、私をキュンとさせるようなセリフをかけてくれた。
「あ、ありがと……♡」
ますます照れ臭くなる私を、りょーくんは人差し指を私の胸元に向ける。
「それにね」
「えっ?」
てっきりブラウスのフリルでも褒めるのかと思ったら、りょーくんの人差し指はフリルに吸い込まれるように私の方へ差し込んでいって
「ここのボタン、外れちゃってるよ。フリルで隠れたつもりになってるけど俺にはバッチリ見えちゃってる♪」
「やっ……」
外れたボタンの隙間に差し込まれたりょーくんの人差し指が、私の胸の谷間をスーッと撫でていく。
「あーちゃん巨乳だからボタンの付いたブラウスって普段着ないでしょ? なのに今日は着てるから絶対にここが外れると思って軽く期待してたんだ♪」
「あっ……やあぁん♡」
谷間へのソフトタッチはひと撫でだけでは飽き足らず、りょーくんの長くて太い人差し指は、谷間の縦ラインを沿うように上下へ往復したり、両胸がくっついている部分をくすぐったり、指を前後へ抜き差ししたりと様々に動いていく。
「ここぉ、外なのにぃ……だめぇ」
「俺の背中で遮られているから、谷間どころかあーちゃんの姿すら花見客に見られてないよ。ブラウスの隙間から見えるエッチな部分も、あーちゃんの赤い顔も、可愛い声も全部俺のもの……」
りょーくんの熱くギラギラとした眼差しに私の両眼は捕らわれて逸らす事が出来ない。
さっきから動かしているりょーくんの人差し指は、ついこの前の週末にやらされたエッチな動きを連想させて、私の体はますます熱くなった。
私の手からはチューハイの缶も唐揚げ串もりょーくんによって外されて両腕共に彼の背中に回される。
「倒れないように俺に捕まってて……あーちゃんの脚はスカートで隠すから」
私の背後にも道路側にも人が居ない事をりょーくんが確認すると、胡座をかいた彼の脚に乗っかるよう指示されて……
「やあっ……バレちゃうっ……っん!」
「んっ……んん……」
ライトアップされた桜の木の下で、私達は上から下まで全部くっついて繋がってしまった。
キスをしながら目を開けると、りょーくんの熱く強い眼差しが私を一時も見放さないとばかりにみつめているのが分かる。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様
【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。
真守 輪
恋愛
年下の恋人を持つ図書館司書のわたし。
地味でメンヘラなわたしに対して、高校生の恋人は顔も頭もイイが、嫉妬深くて性格と愛情表現が歪みまくっている。
ドSな彼に振り回されるわたしの日常。でも、そんな関係も長くは続かない。わたしたちの関係が、彼の学校に知られた時、わたしは断罪されるから……。
イラスト提供 千里さま

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
夜の声
神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。
読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。
小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。
柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。
そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる