【完結】雨上がりは、珈琲の香り②

チャフ

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【番外編】包み隠さず

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 翌朝いつもより早く家を出る私を、りょーくんは玄関先で見送ってくれた。

「イブもクリスマス当日も仕事でごめんね」

 りょーくんに抱きつきながらそう言う私に

「ごめんなんて言ったらダメだよ」

 と、優しく頭を撫でてくれる。

「休憩時間になったら帰ってくるからね」
「無理しなくて平気だよ。夕飯も俺がなんか買ってくるから」
「ううぅ……」

 りょーくんの優しさに胸の奥がキュウウウゥッと締め付けられた。

「その代わり、質問していい? どうして昨夜はあんなに可愛いランジェリーを用意してくれたの? クリスマスだから?」

 りょーくんは私の頭を撫でながら耳元であのランジェリーを用意した理由を訊いてきた。

「それは……」
「うん、どうして?」

 クリスマスデートの夜だったというのも理由に含まれるけど、そもそもの理由は真澄からの「亮輔くんはストレスを抱えている」の発言だった事を思い出す。

「真澄から……りょーくんがこのところストレス抱えてるって聞いたから。
 だから少しでもりょーくんに喜んでもらおうって、ストレスの緩和になればいいなぁって、思って……」
「!!」

 掻い摘んでそう答えると、思い当たる節があるのかバッと私を体から離した。

「私ね、りょーくんや真澄達と違って就活しないから知らない事も気が付かない事も多くて……その上りょーくんの悩みを聞いてあげる事すら出来ないし、せめて昨夜は喜んでほしくて」

 彼の目を見ながら言葉を続ける私の口を、チュッと、りょーくんの柔らかい唇で中断させる。

「心配かけてごめんねあーちゃん。おかげで癒されたよ」

 りょーくんはそう言ってやわらかく微笑んだ。
 
「癒されたって、ホント?」

 その微笑みがちょっと信じられなくて首を傾げても

「ホントホント。エッチで可愛いあーちゃんにめちゃくちゃ癒されたよ……っていうか、普段からあーちゃんには癒されてるし」

 本当の事を言ってるのか、 それとも強がりなのか、微笑みの表情を崩そうとしない。

「そう? 普段から、私はりょーくんを癒せてる?」
「いつも癒されてるし、毎日が幸せだよ♡ ほらほらもう時間だから急いであーちゃん! 俺が引き止めたなんてお姉さんに知られたら怒られるだろうから!」

 微笑み顔で私の肩をポンポンと叩いて急がせようとまでしてきた。

「じゃあ行ってきます」

 ドアノブに手を掛ける私の背中から

「行ってらっしゃい、また夜にね」

 とりょーくんの声が聞こえて……バタンと扉が閉まった。



「りょーくん、嘘ついてないよね?」

 エントランスを出てからも私の頭はモヤモヤしてて、自転車に乗る前にりょーくんへメッセージを送った。

[話す時間がない時は、メッセージでも何でもいいから私に送ってね。
 りょーくんの不安な気持ちを少しでも軽くしてあげたいから]
[だから、私にしてほしい事や出来る事があったら何でも言ってね!]

 ちょっと重いかなぁとも思うけど、今の私に出来る事って本当にそれしかない。


「よしっ! クリスマスイブも、クリスマスも、精一杯お仕事頑張らなくちゃ!」

 まずは今日明日のクリスマスを乗り切る事からだ!と、冷たい空気を思い切り吸い込んでペダルに足を掛けたのだった。







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