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【番外編】包み隠さず
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しおりを挟む「さっき飲んだグリューワイン、結構美味しかったね」
クリスマスデートも終わり、電車を降りた私達はマンションまで歩いていた。
「うん♪ スパイス入りの赤ワインなんてどんな味なんだろうと思ってたけど美味しくて身体もまだポカポカするよ♡」
「ポカポカなのはワイン飲みすぎたからでしょ」
「違うよぉスパイスの効果だもん」
デートはお昼前から始まって、お互いの欲しいものをクリスマスプレゼントとして買ってあげたり、ランチの後に映画を観たりゲーセンでちょっと遊んだり。
夕方からはクリスマスマーケットでグリューワインやドイツ料理を食べるまではかなり健全なデートだったと思う。
でも、帰りの電車から私の胸はドキドキしていた。
(ワインや料理を楽しんでお腹いっぱいになったら外デートは終わりでしょ?
帰ったら……部屋の中に入ったら……りょーくんとのラブラブな時間が待っているわけで……。
2人でいつものようにお風呂入って、りょーくんにバレないようにこっそりアレを身につけてってしなきゃいけないし)
りょーくんは終始ニコニコで私に接してくれてるのに私は夜の事で頭がいっぱいで「グリューワイン、美味しいしあったまるから」とか、何だかんだ理由をつけて何杯もお代わりしてしまった。
緊張をアルコールで誤魔化して飲み過ぎるっていう話をよく聞くけれど、今の私がまさにそれだ。
「あーちゃん大丈夫?」
ふいに足元がふらついて頭がりょーくんの体をトンっと突いてしまったので、心配なのか優しい腕が私の腰を支えてくれた。
「うん! 大丈夫!! へーきへーき!!」
「本当に? ちゃんと歩ける?」
強がってみたけど、りょーくんは心配の表情を崩さない。
「大丈夫だよ! りょーくんに荷物たくさん持ってもらっちゃってるしこれでおんぶとかしてもらったらりょーくんの体がもたないし」
首をブンブン横に振りながらそう言ったら
「ぶっ!! おんぶって!! 可愛い♡」
と、りょーくんが噴き出した。
(うわわ……私、変な事言っちゃった!)
「ごめんりょーくん! 変な事言っちゃった!!」
あわあわする私にりょーくんはケラケラ笑いながら
「いや、別にやろうと思えば出来るけど?」
と言うので私はまた首をブンブン横に振ってお断りした。
「本当に平気だから。ちゃんと歩けるし、その後も……大丈夫だし」
冷気に覆われながら歩いてるのに、自分の発言のせいで顔が熱い。
そんな私の表情をりょーくんは覗き込むようにしばらくジーっと見て……
「大丈夫ならいいんだけど」
ポツリと呟き、私の腰に回していた腕の力をキュッと強くした。
帰り道はりょーくんに支えられていた私だけど、りょーくんと一緒にシャワーを浴びて色々洗い流している内に酔いが覚めていき
「俺、飲み足りないから先に出て昨日買ったやつ開けるけどあーちゃんはどうする?」
りょーくんからそんな事を提案された。
「あ、私はいいや」
「そう? じゃ、リビングでちょっと飲んでくる」
たしかに昨日の夜、美味しいって評判らしいロゼワインを買ったという話を聞かされていた。
(りょーくんは私と違ってグリューワインを二杯だけしか飲まなかったから、そのワインを飲むのを密かに楽しみにしていたんだろうなぁ)
「うん、いってらっしゃい」
バスルームからりょーくんにヒラヒラ手を振って見送り、扉が閉まる。
……。
…………。
「よしっ! こっちはこっちでぐちゃぐちゃになってた頭の中をスッキリ整理しなくちゃ!」
りょーくんにバレないようにアレを着るミッションを遂行させることにした。
「うわぁ……完全にヤバくない?」
自分の部屋に入りアレを身に付けて姿見の前に立ってみたら、ネットショップの画像とは似ても似つかない自分の姿に悲しくなる。
「これって正解? 私なんかが着ちゃダメなヤツだったんじゃない??」
(身に付ける方法は事前にネットで調べたし、サイズもバッチリ合っていたはずなんだけど本当に私ってスタイル悪いんだなぁ……)
「この姿でりょーくんの前に現れたら、彼は何て表情をするんだろう?喜んでくれるのかな?
それともさっきのおんぶ発言の時みたいに噴き出しながら笑っちゃうかな? ……いやいや、りょーくんに限って笑い飛ばしはしないだろうけど」
自分の姿を見つめるているうちに「いっそのこと脱いでしまって全部無かった事にしてしまおうか」という考えが浮かんで
「……いやいやそんなの真澄にバレたらめちゃくちゃ怒られそうだしぃ」
直後、真澄の顔が浮かんで思い直す。
「……あーちゃーん?」
姿見の前でブツブツ呟き頭を駆け巡らせていると、廊下からりょーくんが私を呼ぶ声が聞こえた。
(ヤバい! りょーくんが私を探してるじゃん!)
「今すぐ行くからっ。寝室で待ってて!」
部屋のドアを少しだけ開け、りょーくんがちょうど背を向けたタイミングを見計らってそう呼びかける。
「え? そっちの部屋に居るの?」
私の声に反応してこっちを振り返ってきたのでドアをピッチリと閉め
「すぐに私も寝室行くからりょーくん先に待ってて!」
もう一度言って彼がその場を離れるまでドアに耳をつけ、しばらくジッとしていた。
りょーくんは私に言われた通り、私の部屋のそばを離れて寝室へ入ったらしい。
「ふぅ」
廊下を通って寝室のドアを開ける音まで確認できた私は安堵の息を漏らした。
「そうだ……唇くらいは塗っとこうかな」
自分のこの姿が残念なのはすっぴんの所為もあっただろうと思い、赤みの強いルージュを姿見の前で塗り塗りした後で部屋のドアを開ける。
(うん! りょーくんに見られてないっ! 廊下は私1人だぁ)
意を決して廊下に足を踏み入れ、寝室の前で深呼吸する。
「よしっ」
(りょーくんにお披露目だ!)
コンコンと軽くノックをして、私は寝室を開けてりょーくんの前に現れた。
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