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うなじ濡れる時
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しおりを挟む「良いね♪ このリラックスチェア♡」
「そうそう、露天風呂からの景色が裸にならなくても楽しめるんだよこうやって♪」
食事の後片付けとお布団の支度をしてもらっている間、私達は露天風呂からの景色を楽しんでいた。
「今夜は月が出てないから星がよく見えるね」
「そうだね……こんなにたくさんの星を眺めるのって贅沢だよね」
露天風呂の横にあった木製リラックスチェアに座ると満天の星空を眺める事が出来て、それもこの部屋の売りらしい。
手を繋ぎながらリラックスチェアに体を預け上を見上げれば満天の星空が私達を楽しませてくれるし……
ふと、左側を向くと、眼鏡を掛けたかっこいい彼の浴衣姿が見えてドキッとする。
「視線を感じるんだけど♡ なぁに?」
りょーくんは私の熱い視線を見逃さず、すぐにこちらへ向き直りクスクス笑った。
「だってかっこいいんだもん、りょーくんが」
「あーちゃんだって可愛いよ♡」
りょーくんは私にすぐ言い返し、繋いでいる私の手をキュッと握る。
彼の大きくて温かい手がキュッと私の手を握るのと同時に、私の胸もキュンとなってまた恥ずかしくなった。
「そういえばりょーくんはっ……さっきここの露天風呂に入ったんだよね?」
この恥ずかしさを紛らわそうと、私達の側で湯気を立てながらかけ流されてるお湯の音に合わせた話題に変えてみると
「まあね一人で寂しく入ったよ。
本当は部屋に入ってすぐあーちゃんと露天風呂楽しみたかったのに逃げちゃったからさ」
と、今度はりょーくんがそっぽ向きだした。
「ごめんねりょーくん。だけどあの時は急に恥ずかしくなってきちゃったんだもん……仕方ない行動だったっていうか」
私がりょーくんの方に顔を向けても、りょーくんは向こうを向いたままだ。
「ほぼ毎日一緒に風呂入ってるのに。今更恥ずかしがる事なくない?」
「温泉宿って雰囲気あるし、まさかお部屋に露天風呂が付いてるなんて思ってもみなかったから」
確かにあの時は自分でも不思議な感覚だった。
(温泉の色は少し乳白色で、入っても肌が少し湯の色に隠れていくからそんなに恥ずかしくはないはずなんだけど……でも)
「あーちゃんが大浴場の方へ逃げたから、俺本当に寂しかったな~一人で入る露天風呂は夕焼けが目に沁みたなぁ~」
「りょーくんごめん。すねないで」
私は繋いでる手を揺らし、りょーくんの顔を私の方に向かせようとしてみた。
「本当に寂しかったんだから。一人で入りながら、『あーちゃんと一緒に入るはずだったのに』って」
本当に拗ねてるらしく、揺らすくらいじゃりょーくんの機嫌は治らなさそうだ。
「それなら私も一緒に入るよ? 露天風呂」
りょーくんに振り向いてほしくて、そんな事を口にしてみたら
「え?! それホント??」
その直後ギュンって私の方を振り向いてきたからちょっと面白かった。
「うん」
「あーちゃん、一緒に入ってくれる?」
その時の表情も口ぶりもお子ちゃまみたいでちょっと笑っちゃう。
「勿論だよ! でもその代わり私もりょーくんも酔いが覚めたらねっ!
酔っ払ったまんまだと体に良くないわけだし」
さっきまでずっと大人っぽいって感じていたけれど、りょーくんにも私みたいな子どもっぽい無邪気な面が残っていたんだと知れて嬉しいし、笑いも込み上げてくる。
「仲居さんは支度済んで部屋に居ないっぽいし酔いもだいぶ冷めてきたから大丈夫ッ! さっきだってベロベロに酔ってた訳じゃないし、今すぐにでも俺は平気!!」
りょーくんは今すぐ露天風呂に入る気満々。
「あーちゃんは? 気分悪くない? 酔っ払い過ぎてなさそうに見えるからさぁ……一緒にもう、入れるんじゃない?」
こっちを真っ直ぐに見つめて、甘えてきて。
かっこいいけど、凄く可愛いとも感じた。
「もー仕方ないなぁ……じゃあ、入ろっか♪ 一緒に」
星を見ながら夜風にだいぶ当たったから頭はさっきよりもスッキリしているし、りょーくんの言う通り部屋に戻ってみるともう仲居さんの姿は無く、代わりにお布団が2組仲良く並べられていた。
「お布団、仲良くくっついてるね♡」
「うん……私達と一緒だね♡ 仲良くくっついてる♡」
その様子を見て、お互いに照れ笑いして……
「露天風呂でも仲良くくっつこうね♡」
「うん♡」
キスをしてぎゅーっと抱き合って、気持ちを高め合った。
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