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【番外編】バスはロマン(亮輔side)
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「ああ……なんかね、藤井くんっていつも真澄のそばにくっついて真澄の言うことを聞いてるイメージするでしょ?でも、そうじゃない時もあるっていう話でね……」
「うん」
(もう動揺しない……絶対に。十中八九風呂の話になるんだから)
そう決心するものの、強く意識しすぎて簡単な相槌しか声に出せない。
「藤井くんの家じゃないところで休憩とか……するでしょ?」
「うん」
(うわぁ……ホテルの話をするあーちゃん、顔赤らめてて可愛い。
けど、話の内容が風呂の話に100%固まっちまったなぁ……)
彼女の可愛らしい表情に癒されるも、体の芯みたいな部分がキュッと引き締まる思いも同時に感じる。
「そしたら藤井くん、真澄にいつも土下座するんだって『一緒にお風呂入りたい』って。泣きついたりもするんだって」
「へぇ」
(あああ~~きたきたきたきた……風呂の話きちゃったよ……)
「真澄は毎回断るんだけど、この前は特に藤井くんの態度がおかしかったから真澄がブチ切れて喧嘩になっちゃったみたい」
「そうか……そりゃなんか、大変だな」
(あー……俺、目が泳いでるかもしれない。マジで情けない)
「男の人ってさ、やっぱり彼女と一緒にお風呂入りたいもんなんだよねぇ? 真澄はそれが本当にイヤみたいで『一緒に入るなんていやらしい! 変態!!』って藤井くんに言い放ったんだって」
あーちゃんの決定的な一言に、俺は頭をガックリと下げ
(あああ……そっかぁ。やっぱり矢野はあーちゃんにそんな話をしたのか。
あーちゃんは矢野の影響を受けて「だからりょーくんともうお風呂入らない」って俺に言っちゃうのかなぁ……)
ネガティブな思考は、うなだれた俺の脳を侵食していく。
(変態か……変態か変態じゃないかって訊かれたら確かに俺は変態だよ。あーちゃんも半ば諦め状態でそんな俺と付き合ってるんだと思う)
ネガティブに侵食されていく中で、それでも力を振り絞る。
(でも……でも、それでも俺はあーちゃんとの風呂の時間を大事にしたいんだよ!)
「俺はすげー大事にしたい!!」
もうこうなったらヤケだ。
あーちゃんに今後の入浴を断られるくらいならいっそ変態な俺の想いをここで大いにブチまけてしまった方がいい……と、そう思った。
「え?!」
俺が急に声を大きくして喋り出したもんだから余計にあーちゃんはビックリしている。
「矢野がそんなに嫌がるなら藤井も強制はしないんだろうけどさ、でも一回くらいは一緒に風呂入ってあげてもいいんじゃないかなぁ!
矢野は恥ずかしいかもしれないけど、付き合ってる彼女の全身をじっくり見たいのって悪いことじゃなくてストレートな愛情からくるもんだと思うし!」
顔や耳を熱くしながらも視線はあーちゃんの顔に向けて力説してみる。
「そりゃあ矢野の気持ち次第だからさ、強制は俺もしない方がいいと思うけど。
でも俺とあーちゃんは違うだろ? 一緒に入って1年以上経ってるし、あいつらみたいに気軽にどっか行けないし大学の授業コマも違うからすれ違いの時間も結構あって……それなのにあーちゃんまで拒否りだしたら会話の時間が減るだろ?
風呂の中で別にエロいことしてるわけじゃないし俺達はその……大好きな人と一緒に風呂入ることに意義があると思ってる……から」
そこまで言った後、俺は「はあああぁ」と大きく溜め息をつく。
(そうだよ、最初からちゃんとこう言えば良かったんだ。
あーちゃんからその話を持ちかけられる前に……ウジウジしてないで、こうやってちゃんと俺から諭してやれば良かったんじゃん。
風呂の時間も大事だよって、俺にとって必要な時間だよって。
そしたら矢野に言われていやらしいイメージをつけられた印象を少しでも拭えるはずだから)
あーちゃんは俺の話をジッと聞いてくれていたみたいで、俺の溜め息のタイミングで「うん」と頷く。
「だからね、私も真澄に似たようなことを話したの。『一緒にお風呂入るって言ってもエッチな事するわけじゃないし、お風呂の中でする会話も結構楽しいよ』って」
「へ?」
頷きの直後に語られた内容に俺の頭の中は真っ白になった。
「……え?」
マジであーちゃんの意図が分からず、「え?」とだけ声に出すと
「私もりょーくんとのお風呂の時間が大好きだから、『結構いいもんだよ』って言ってあげたの」
そう、彼女は可愛い顔で微笑んだ。
(マジで!? マジであーちゃんもそう思っていてくれてたのか?)
「……矢野に言われてあーちゃんまで嫌がったのかと思った」
ポツリと言い返す俺にあーちゃんは笑いながら
「だってもう1年以上も一緒にお風呂入ってるじゃん。嫌だったらちゃんと断ってるよー」
彼女はケラケラと笑い返してワインを口にする。
(そっか……あーちゃん、矢野に感化されたわけじゃなかったのか……)
要は俺の妄想が過ぎただけの話だったのだが、それだけでめちゃくちゃホッとして俺はグラスの中身を一気飲みする。
「このワイン美味いね」
ヘヘッと笑いながらグラスを持ち上げるとあーちゃんはめちゃくちゃ笑っていた。
「うん」
(もう動揺しない……絶対に。十中八九風呂の話になるんだから)
そう決心するものの、強く意識しすぎて簡単な相槌しか声に出せない。
「藤井くんの家じゃないところで休憩とか……するでしょ?」
「うん」
(うわぁ……ホテルの話をするあーちゃん、顔赤らめてて可愛い。
けど、話の内容が風呂の話に100%固まっちまったなぁ……)
彼女の可愛らしい表情に癒されるも、体の芯みたいな部分がキュッと引き締まる思いも同時に感じる。
「そしたら藤井くん、真澄にいつも土下座するんだって『一緒にお風呂入りたい』って。泣きついたりもするんだって」
「へぇ」
(あああ~~きたきたきたきた……風呂の話きちゃったよ……)
「真澄は毎回断るんだけど、この前は特に藤井くんの態度がおかしかったから真澄がブチ切れて喧嘩になっちゃったみたい」
「そうか……そりゃなんか、大変だな」
(あー……俺、目が泳いでるかもしれない。マジで情けない)
「男の人ってさ、やっぱり彼女と一緒にお風呂入りたいもんなんだよねぇ? 真澄はそれが本当にイヤみたいで『一緒に入るなんていやらしい! 変態!!』って藤井くんに言い放ったんだって」
あーちゃんの決定的な一言に、俺は頭をガックリと下げ
(あああ……そっかぁ。やっぱり矢野はあーちゃんにそんな話をしたのか。
あーちゃんは矢野の影響を受けて「だからりょーくんともうお風呂入らない」って俺に言っちゃうのかなぁ……)
ネガティブな思考は、うなだれた俺の脳を侵食していく。
(変態か……変態か変態じゃないかって訊かれたら確かに俺は変態だよ。あーちゃんも半ば諦め状態でそんな俺と付き合ってるんだと思う)
ネガティブに侵食されていく中で、それでも力を振り絞る。
(でも……でも、それでも俺はあーちゃんとの風呂の時間を大事にしたいんだよ!)
「俺はすげー大事にしたい!!」
もうこうなったらヤケだ。
あーちゃんに今後の入浴を断られるくらいならいっそ変態な俺の想いをここで大いにブチまけてしまった方がいい……と、そう思った。
「え?!」
俺が急に声を大きくして喋り出したもんだから余計にあーちゃんはビックリしている。
「矢野がそんなに嫌がるなら藤井も強制はしないんだろうけどさ、でも一回くらいは一緒に風呂入ってあげてもいいんじゃないかなぁ!
矢野は恥ずかしいかもしれないけど、付き合ってる彼女の全身をじっくり見たいのって悪いことじゃなくてストレートな愛情からくるもんだと思うし!」
顔や耳を熱くしながらも視線はあーちゃんの顔に向けて力説してみる。
「そりゃあ矢野の気持ち次第だからさ、強制は俺もしない方がいいと思うけど。
でも俺とあーちゃんは違うだろ? 一緒に入って1年以上経ってるし、あいつらみたいに気軽にどっか行けないし大学の授業コマも違うからすれ違いの時間も結構あって……それなのにあーちゃんまで拒否りだしたら会話の時間が減るだろ?
風呂の中で別にエロいことしてるわけじゃないし俺達はその……大好きな人と一緒に風呂入ることに意義があると思ってる……から」
そこまで言った後、俺は「はあああぁ」と大きく溜め息をつく。
(そうだよ、最初からちゃんとこう言えば良かったんだ。
あーちゃんからその話を持ちかけられる前に……ウジウジしてないで、こうやってちゃんと俺から諭してやれば良かったんじゃん。
風呂の時間も大事だよって、俺にとって必要な時間だよって。
そしたら矢野に言われていやらしいイメージをつけられた印象を少しでも拭えるはずだから)
あーちゃんは俺の話をジッと聞いてくれていたみたいで、俺の溜め息のタイミングで「うん」と頷く。
「だからね、私も真澄に似たようなことを話したの。『一緒にお風呂入るって言ってもエッチな事するわけじゃないし、お風呂の中でする会話も結構楽しいよ』って」
「へ?」
頷きの直後に語られた内容に俺の頭の中は真っ白になった。
「……え?」
マジであーちゃんの意図が分からず、「え?」とだけ声に出すと
「私もりょーくんとのお風呂の時間が大好きだから、『結構いいもんだよ』って言ってあげたの」
そう、彼女は可愛い顔で微笑んだ。
(マジで!? マジであーちゃんもそう思っていてくれてたのか?)
「……矢野に言われてあーちゃんまで嫌がったのかと思った」
ポツリと言い返す俺にあーちゃんは笑いながら
「だってもう1年以上も一緒にお風呂入ってるじゃん。嫌だったらちゃんと断ってるよー」
彼女はケラケラと笑い返してワインを口にする。
(そっか……あーちゃん、矢野に感化されたわけじゃなかったのか……)
要は俺の妄想が過ぎただけの話だったのだが、それだけでめちゃくちゃホッとして俺はグラスの中身を一気飲みする。
「このワイン美味いね」
ヘヘッと笑いながらグラスを持ち上げるとあーちゃんはめちゃくちゃ笑っていた。
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